狙われている潜水艦
「何なんですかね、いったい」
「分からん」
艦長と副長が話しあう。
「何らかの攻撃でしょうか?」
「可能性としてはありえるが。
しかし、魚雷だったらもっと破壊力があるはずだ」
それこそ一撃で潜水艦を沈めるような。
船体に穴をあけるくらいの威力はある。
しかし、今のところ、そうなってるという報告は無い。
衝撃は受けたが、船体のどこかに損傷があるわけではない。
「ただ、攻撃を受けてる可能性はある」
艦長は今の状況をそう判断した。
「一旦、この海域より離脱。
通信可能な場所まで移動する」
「了解」
何はなくとも危険な状態にある。
そう考えて艦長はこの場から移動する事にした。
司令部に通信を入れ、現状を報告する為に。
だが、それも難しいと即座に知る事となる。
移動を開始した潜水艦への攻撃は更に増えていった。
ドン、ドン、ドンと。
何度も何かがぶつかる音がする。
頑丈に作られてる潜水艦は、それでも壊れたりはしなかったが。
原因がわからないその現象は、ただただ不気味だった。
「こりゃあ…………」
「狙ってますよね、明らかに」
「ああ、この艦を狙って攻撃してきてる」
移動中に受ける衝撃。
艦長と副長は明確な意図をもっての攻撃と判断した。
「しかし、いったいどこが?
敵が戦争に踏み切ったのかもしれませんが」
「どうだろうな。
やるとしたら敵しかいないだろうが。
そこまでやる気があるのかどうか」
どうしても疑問が浮かんでくる。
攻撃を仕掛けてくる可能性があるのは敵国だ。
しかし、そうしてくる兆候はなかった。
戦争となれば、何かしら動きが出て来る。
軍隊が動き出し、戦闘配置につくものだ。
しかし、それらしい動きはなかった。
少なくとも、この潜水艦が出航した時点では。
通信が出来ない今、世界がどう動いてるかは分からないが。
だからこそ、通信が出来る所まで移動。
攻撃を受けてる事を報告し、戦争が始まったかどうかを確かめねばならない。
問題なのは、沈む事無く目的地まで移動できるかどうかだ。
船が揺れるほどの衝撃を何度も受けてる。
今はまだ大丈夫だが、これ以上続いたらどうなるか分からない。
その後も潜水艦は静かに進んでいく。
相変わらず衝撃を受け続けてるが、まだ沈む事は無い。
それでも精神的に大きな圧迫を受ける。
水面下300メートルの中なのだ。
損傷を受けたらひとたまりもない。
逃げだす事も出来ずに溺れてしまう。
それに、海面すら凍り付く北極だ。
しっかりした潜水装備がなければ、即座に凍死する。
潜水艦の乗組員は常にこのような危険の中で活動している。
重圧ははかりしれない。
攻撃を受けてるとなればなおさらだ。
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