01話 王都来訪
「…よし通れ!」
「ありがと〜」
住んでいた森から一番近くにある王国、ラミスタラ王国に来た俺は、門の前で兵士に荷物検査されたのち通行の許可を出してもらえる。
ここラミスタラ王国に来た理由は2つある。
一つ目は王都で色々な人から魔物の情報を集めるため。
二つ目は、俺みたいにクラスメイトが転生しているかを調べるため。
優先事項は魔物の情報だな。クラスメイトの現状は正直の所どうでもいい。
まぁ折角、王都に来たから美味しいもの食べるか!腹が減っては情報収集はできぬ、とよく言うしな!…あれ?戦だったけ?まぁいいか
広場について俺はそこら辺の露店を選び、できたての串焼きを数本買って、ブラブラと歩きつつ食べ始めたその時だった。
「どけっ!!」
歩いていた俺はいきなり走ってきた男に弾き飛ばされ、その衝撃で勝ったばかりの串焼きが全て地面に落としてしまった。
少し傍観してから、俺はすぐに正気に戻った。
「あの野郎…許さねぇ…!」
殺意を込めて呟き、俺は男の追跡を始めた。
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「ハァ…ハァ、ハァハァ…ま、巻いたか……」
【感知】を使って、男を探していたのが、案外あっさりと見つけた。
屋根の上を使って移動していた俺は、屋根の上に立ったまま、下を見た。
下の路地裏では、男が息を切らしていた。
どうやら男は何かの罪を犯したそうで、先程男が俺を突き飛ばした後、数人の近衛兵が走って来た。
まぁ、そんなことはどうでもいい…折角の機会だ、俺の強さを検証ついでに鉄槌を下してやる…!
俺は足音があまり出ないように屋根から降り、男にゆっくりと近寄った。
「おい、オッサン…」
俺は笑顔で男に話しかけたが、男は俺を睨んだ。
それもそうだ、当然少年が現れて、声をかけてきたら警戒するよな。
「何だクソガキ!」
「俺?そうだな………」
ふむ、この男に正直に名前を言うのも嫌だな……よし、安直すぎだがこれにするか。
「俺は魔物狩り…黒の魔物狩りだ…」
「は?」
軽く決めポーズを付けながら言った。
男は呆気を取られた顔をしているが、俺的には満足だ。
「……ガキが、調子乗ってるんじゃねぇぞ…!焼き払え!炎熱砲!!」
男は俺に向かって赤色の魔法陣を作り出し、そこから大きな炎の塊を放ってきた。
中級の火魔法か…子供相手に容赦ないよな…
そう思いながら、俺は予め作って置いた魔法陣を男に向けた。
俺の魔法陣は青色で、男の魔法陣よりも大きかった。
「お前にいいことを教えてやる…食べ物の恨みは恐ろしいことをな…!」
俺は男の火魔法が当たる直前で、上級水魔法 純水大波を発動させた。
俺が発動させたアクアウェーブは、男が放った火魔法ごと男を巻き込んで吹き飛ばした。
正直な所危なかった。
上級魔法の構築には時間がかかるため、俺は男と会話を始める前から構築を始めたのだが、それでもギリギリになってしまった。
普通なら詠唱などが必要なのだが、俺はじいちゃんに魔法はイメージと言うの事を叩きこまれた。
そのおかげで、俺は魔法が発動した時をイメージすることで、詠唱を必要とせずに魔法を使うことが出来た。
本当にじいちゃんには頭が上がらないな…
一応吹き飛んで行った男の様子を見に行くと、奥の方で白目向いて気絶していた。
「さてさて、逃げないように草魔法で拘束っと…」
俺は男を草間法で作った蔦で解きにくいように拘束し、新しい串焼きを買いに行くことにした。
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【ラミスタラ王国 王室】
ラミスタラ王国の王室で、一人の王冠を付けた男が頭を悩ましていた。
男が溜息を吐いたその時、
「国王陛下!ご報告があります!」
近衛兵団の一人があわただしく入って来た。
「……何があった…?」
頭を抱えながら座っていた国王は座りなおし、近衛兵に何があったか訊ねた。
「た、たった今…先日、城の宝物庫で盗みを働き、金品を奪っていった男が、路地裏で拘束されている所を発見されました…!」
少し息切れをしつつ、近衛兵は国王向かって跪き、国王に報告した。
「本当か!?誰が捕まえたのだ!!」
報告を聞いていた国王は驚きのあまり立ち上がった。
「も、目撃者によると…黒の魔物狩りと名乗る少年が、上級水魔法を使用し、男を倒したそうです!」
「く、黒の魔物狩りじゃと……?」
男を捕まえた者の名前を聞いた国王は、立ったまま考え始めた。
そして決断した。
「黒の魔物狩りと名乗る少年を今すぐここに連れてくるのだ!!」
「はっ!」
国王の命令を聞いた近衛兵は跪いたまま返事をし、命令通りに黒の魔物狩りを連れていくために近衛兵は動き出した。
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「ハ…ハッ…ハクション!!」
暗くなりかけていたので、俺は串焼きをさっさと買い、宿を決めてから部屋で串焼きを食べていた。
串焼きを食べている最中、俺は思いっきりくしゃみをした。
風邪かな…?それとも誰かが俺の噂してるのか…?まぁ今は串焼きを美味しく味わうことにするか。
そう思いつつ俺は串焼きを食べ続けた。
串焼きはとってもジューシーで美味しかった。
そう言えばこの宿の家主さん、暗い表情だったけど…大丈夫なのだろうか?