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暗殺者

ごめん思った以上に短かった

「くっ……!」



俺は目の前に転ぶように逃げる。

くっそ、ミスった。俺は気を抜いていない。ずっと警戒していた。それでも、それでもやられるのか―――――



「おっ、すげぇな。まだ息あんのかよ。心臓ぶっ刺したと思ったんだけどなー」


後ろから声が聞こえる。

俺は痛みで泣きそうになりながらも意地で振り向く。

そこに居たのは、全身が黒い服で覆われた痩身の男だった。



「お、お前はっ……!」


「何だあんた、俺のこと知ってんのか?それはやべぇな。予想以上にやべぇ。というかお前マジで何でまだ息してんの?どうせならネタばらしして欲しいんだけど」



おっかしーなーとでも言うように首を掻きながら男は言う。

うるっせぇながっつり致命傷だよこの野郎と言いたいのを我慢して、男を観察する。

全身の黒い服、軽薄な口調。俺の数々の防御を貫通していったナイフ。そして化け物染みた存在感の薄さ。

目の前にいる今でさえ集中してないと見失いそうになる。

そんな特徴に当てはまるのは1人しかいない。

内部監査と邪魔な奴の暗殺を担当する王国側の7人の幹部の1人。



「ジャック・ディックッ!」


「おーおーおー、マジで名前知ってたよこの野郎。まぁでも見たかんじお前死にそうだから関係ねぇか。どんなインチキしてるのか知らないが、多分活動時間を伸ばすタイプの奴だろ」



どうだ?とでも言いたそうな顔で的確に俺の状態を言い当ててきた。


その通り、これは死ぬまでの時間を十数秒長くしているだけだ。

俺は邪神殺す気で今日来たんだぞ。ガチの相討ち覚悟だ。この程度の仕掛けはしとるわ。


だがまぁそれを馬鹿正直にこいつに言う必要もない。

それよりも大事なことがある。



「お前っ!何でここにっ!」


こいつも今はターライトと戦ってるはずだ。これが聞けないと死んでも次に活かせない。



「そらおめぇ、ちゃんと警報仕掛けてたからなぁ。」



嘘だ。俺は今まで何度も侵入している。警報器の類いもちゃんと調べた。今日に限ってそんなミスを犯すはずがない。



「あーあーあー、もしかしてお前今までバレてないと思ってたの?」


「ッ!?」


「そう簡単にこの俺の目を欺けると思うなよー。いやまぁでもお前は上手かったよ。あんな初級魔法ばっかでこんな深くまでさ」


「実際俺以外気付いてないんじゃねぇかな。俺も気配感知全力でやって初めて気付いたのし。その後はまぁ面白そうだからって放置してたんだけどさ。それがさぁ、念のため警報器仕掛けてみりゃビンビン反応するもんだからもう俺急いで戻って来たよね。マジ大変だった」


「それで邪神ちゃん逃がそうとしてさぁ。流石に見過ごせねぇし、こうして殺したってわけ。お前の裏に誰か居るわけでもなさそうだしな」




冥土の土産に教えてやるよと言いながらジャックは言った。

くっそ。そうか、バレてたのか。

……いやでもそうか。俺程度がそんな上手くやれるわけねぇか。

見逃されていたのにも気付かずに、初級魔法で調子に乗って、挙げ句の果てには何も残せずこの様だ。


それでも俺は精一杯の抵抗としてジャックを睨み付けながら、呼吸を止めた。



いいさ、どうせ邪神殺す為に薬漬けの身体だったんだ。あの子を本当に救うならこんな行き当たりばったりじゃいけねぇ。

次だ。次で最後にする。

5歳からあの子を救う為に全力を尽くしてやる。

待っとけよジャック・ディック。


次は俺が殺してやる。


自分の血でここら一帯を汚しながら、俺はそう決意した。





………すぐ戻るって約束。結局破っちゃったな。

個人的には今までがプロローグみたいなかんじで、次からやっと本編と思ってます。

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