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2種類のおじさん

華麗に殺した研究員を音がしないようにそっと地面に転がしてから、さっきこいつが一生懸命めくっていた資料を確認する。


『マンドラゴラもどきの育て方』


そんな見出しが大きな文字で書かれていた。

マンドラゴラもどきとは、その名の通りマンドラゴラに非常によく似た植物だ。

だが、その危険性ゆえに本物ともどきの見分け方は有名である。

マンドラゴラがまるで娘に「お父さん加齢臭するから近寄らないで」と言われたかのような、世界に絶望した顔のおじさんであるのに対し、マンドラゴラもどきは、もはや残業代だけで生活できるほどブラックな職場で仕事に追われ、将来性もなく、もはや全てを諦め悟ったような顔をしている点だ。


これだけなら、ただ悲しく、憐れみを誘うおじさんが2種類いるだけなのだが、その危険性が大きく違う。

マンドラゴラもどきには、幻惑作用や、酩酊、気分上昇などの効果があり、有り体にいって麻薬と同じで扱いをされている。

中毒性があり、多用すると脳が壊れて廃人になるのだ。

少量ならば薬品として認めている国もあるが、この国ではがっつり法律に引っ掛かっている。



そんなものの育て方マニュアルがあるということは、どうやらここではこいつを資金源の一つにしていたようである。

……この研究員はそのマンドラゴラもどきの栽培をミスったらしい。

手の平に乗るサイズの、見た目おじさんを何十体も土の中で永眠させてしまったというならあの血走った眼になるのも分かる気がする。

しかもそれが、毎日毎日丁寧に水をやり、世話をしたものだとしたら物凄い虚無感に襲われただろう。流石に俺も同情する。



まぁそんなことは置いといて。

この部屋を全て探したが、どうやら仕掛けに関する書類はないようだ。

やはり、奥の部屋に行くしかない。

俺の予想では、この時期なので2~3人。多くても5人いないくらいだと思うがまずは索敵である。

奥の部屋に続く扉の前に立つ。


本来ならここで、相手の人数が分かるような魔法を使ったり、相手の気配を感じ取って人数を把握したりしてみたいのだが、ここで魔法を使うと相手にばれる可能性があるし、俺には扉越しに気配なんて感じ取れない。

殺意向けられたら分かると思うが。殺意に敏感にならざるを得ない人生だったもんでね。

というわけで、俺がするのはシンプルだ。

聞き耳をたてる。

扉にぴったりと耳を張り付けて聴覚に全神経を集中する。全○中の呼吸だ。



扉の向こうから聞こえるのは……寝息?

少なくともドタバタ歩いている音はしない。

寝ているか何かに集中しているか、動いてないことは確かだ。多分……1人だけかな?


今の俺ではこれ以上の情報は手に入らない。それに、あんまり時間もかけていられない。

ゆえに、俺に出来ることはただ一つ。

相手が1人という希望的観測でもった突撃だ。

どちらにしろここで退くという選択肢はない。

扉を開け、その瞬間に相手を確認、そのまま制圧する自分をイメージする。

……よし。イメージでは完璧だった。

じゃあ行くぞ!本当に行くぞ!突撃ぃぃぃ!!!



心の中だけで雄叫びをあげてこっそりと扉をあける。

中に居たのは1人だった。

物凄い隈をした白衣の男が長椅子に横になって寝ている。とても幸せそうな顔だ。

久しぶりの睡眠はそれほど心地良かったのだろうか。

よしよし、俺がそのまま永遠に寝れるようにしてやるからな。感謝しな。

そう思いながら男に忍び寄り、喉を一突き。骨まで貫通したその一撃は、即座に男の意識をこの世から消し去った。

この男も終わらない仕事に追われる現世から解放されてさぞ幸せだろう。



予想の数倍楽にいったことに驚きながらも、邪神対策で施されているであろう仕掛けに関する資料を探す。

もちろん警戒は怠らない。

流石に1人は少なくないか?トイレか何かに行ってる奴もいるかも知れない。


そうして探しているうちに、運良く見付けることができた。この部屋にもなく、新しくそれっぽい部屋を探す所から始めることも覚悟していだけに結構嬉しい。


さて、そうまでして探した仕掛けの実際の内容を見ていこう。

どうやら、邪神があの部屋を出た時点で幹部クラスの構成員に通知がいき、その上通路は隔壁封鎖、邪神が居た部屋を中心とした半円状に結界が張られるらしい。物理、魔法、両方の面からカバーするということだ。

あと、何気に幹部に連絡が行くのがヤバい。ゲームの設定通りならば、成長途中だったとはいえあのターライトが苦戦を強いられるレベルである。

俺が相手のときは言うまでもない。

一応今は、対邪神用にフル装備を整えてきているので、何人かはタイマンなら勝てるかも知れないが2人以上に1度に襲われたら即アウトである。

俺の装備は邪神メタなため、邪神に勝てるなら幹部程度勝てるだろと思われても無理なものは無理なのだ。



背筋に冷や汗をかきながらも、あの時安易に邪神を連れださなかったそのときの俺に拍手喝采を送る。

まじナイスっ!良くやった。やっぱ天才だわお前!




そんな痛い自画自賛をしたところで、俺はもう一つの資料を発見してしまった。


『No.001、通称“邪神“について』



その資料には、あの邪神と呼ばれる少女の過去が書かれていた。

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