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次にすること

書き貯めが一切ないので、投稿した奴はそこそこの頻度で改稿しています。本筋は変わらないように気を付けてますが、何か違和感があったら教えてください。



邪神を救うと決めた。


決めたが、この次である。そのまま邪神をこのおぞましくも惹かれる部屋から出すことは恐らくできないだろう。

邪神みたいな超がつく重要人物を自由に行動させるわけがない。

邪神を連れ出そうとした時点で絶対何らかの仕掛けが働くだろう。



俺は、ゲームの時の知識で邪神を殺せるだけの準備をしてきたが、邪神を助ける準備など欠片もしていない。

つまり、俺がここから邪神を安全に連れ出すには、情報も何も足りていないのだ。

だから、一旦この部屋を出て研究者どもの資料か何かを発見しなければならないのだが……



邪神がこちらを見ている。その紅い目でこちらをじーっと見ている。


俺がどうするのか観察しているのだろう。

というか、急に出てきた知らない人が「君は自由になりたいか」とか如何にもなことを言っておいて、自分を残して1人だけこの部屋から出て行こうとしたら、この邪神はどう思うだろう。



少なくとも俺はちょっともやっとする。

しかもその理由が、今更お前をこの部屋から出すための情報を手に入れるために研究者共の資料を漁るためとか言われると、こいつ本当に頼りになんのかよっていうふうに信用度は間違いなく下がる。



……どうしよう。



まぁ、どうもこうも説明だけして情報を漁りに行くしかないんだけど。流石にそれではちょっとアレなので、今後の友好のためにも多少の忖度はしよう。

というわけで、



「あっ、あー……あのさ、俺今からちょっとこの部屋出てさ、君をここから連れ出す準備をするからさ、まぁその、ちょっとあれなんだけどここで1人で待っててくれない?ほら、部屋の外とか危険だしさ?すぐ戻るから!」



…陰キャオタク特有の早口になってしまった。けど別に嘘はついてないので問題はない。無いったら無い。

邪神も小さく頷いている。


……というか、あの目はこちらに期待していないように見える。

まぁ、その気持ちはよく分かる。下手な希望はもっと大きな絶望を生むし、何よりこんな奴会ってすぐ信用しろというほうが無茶だろう。



……そんな不審者の不審な問いかけに、それでも頷くくらいにはこいつも追いこまれていたのだろうか。

俺はこの邪神が何年生きてきたのかは知らない。それでも、その人生は決して幸福に溢れたものではなかったのだろう。

その分は、出来るかどうかは分からないが俺が全力を尽くす所存である。





とりあえず、忖度として俺の大事なスライムのぬいぐるみを渡す。

こいつは今までの人生込みで300年くらいの付き合いがある。

引きこもりになっていた時は俺の話し相手になってくれたり、辛い夜には寄り添って寝てくれた大事な親友だ。そこらの奴より優先順位は高い。


俺は邪神討伐に9割くらい死ぬ気で来ていたので、最後の勇気をこいつに貰おうと思っていたのだ。

そんなこいつの柔らかなボディでどうか癒されて欲しい。

その間に俺は情報収集に励むとしよう。



スライム(俺の親友)を受け取った邪神は、表情こそ変わらなかったものの両腕で抱き締めて離さないので、恐らく喜んでもらえたのだろう。

俺も満足である。



そんなこんながあって、俺は邪神を残して部屋を出た。

一応ながら、研究者共の資料がある場所には検討がついている。

邪神の居る部屋を探し、侵入方法を見つけようとしていた際にそれっぽい部屋は見つけていた。



とりあえずまずは、俺でも使える闇の初級魔法“消音“を使う。

初級なだけあって、魔力の消費量も少ないので重用している。

この魔法はその名の通り音を消す魔法だ。といっても実際はまぁまぁ音が小さくなるくらいなのだが、まぁそこはそれ、俺もだてに人生を繰り返してない。筋力とかは持ち越せないが、魔法の技量はある程度そのままなので、魔力の操作性やら繊細さで言ったらなかなか結構なものである。

その技量でもって、ほぼ無音といえるくらいに効力を上げているのだ。


……まぁ闇の上級魔法に、消音、消臭どころか気配まで消せる“影身“という上位互換があるのだが。

俺には使えないので関係ない。




邪神の居場所を調べる過程で、ここら一帯の警備の巡回ルートも調べている。

邪神との戦闘前に余計な戦いをしたくなかったからな。

その知識でもって、俺は一切警備に会うことなく目的の部屋までたどり着いた。



部屋の中には1人だけ立って血走った眼で紙をめくっていた。恐らく奥の部屋にも何人かいるのだろうが、それにしても少ない。やはり、ターライトとの戦いで大体の奴は出ているようだ。



“消音“の魔法を維持したまま、こっそりと近づく。ここら辺は生身のスキルである。伊達に5年も邪神の居場所を探し回っていない。俺の腕が届く範囲までばれないだろう。


忙しそうに紙の束をめくる研究者1号は気付く素振りもない。そのまま背後をとって、口を左手で押さえて右手に持ったナイフを首を刺した。

このままナイフを引き抜くと血がぶしゃーってするので、刺したナイフを更に押し込み確実に殺す。

一瞬の早業。相手は声を出す隙もなく地に伏した。実際は音が立つと困るので俺がそっと地面に寝かせてあげたのだが。



……こんなときもラノベに出てくるような主人公様は相手を殺さずにナイフで脅して情報を得たり、ふん縛って放置して事が終わったあとで更正させるか、ちゃんと法の裁きを受けさせたりするのだろうが、俺にはそんな余裕はない。


殺せるときに確実に殺す。俺は相手から反撃を食らっても大丈夫だと自分を信じていない。反撃が生まれる可能性が少しでもあるなら、俺は相手を殺す。

俺は雑魚だ。一瞬でも気を抜いたらそれがすぐ死につながる。

この意識だけは忘れてはならない。



やはり、俺にはかつてラノベで見たような主人公には成れないようだ。

……どこか少しだけ、悲しくなった。

励みになるので、今後も感想やいいねをよろしくお願いします!

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