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成長(マイナス方向)

戦闘が終わった後に吐きだした俺を周囲の兵士達は心配してくれた。


「流石に貴族の坊っちゃんが急に戦場に出て死体なんて見りゃ吐くわな。恥ずかしく思わなくていいぞ、大抵の奴はそうなる。」


そういいながら俺の背中をさすり、慰めてくれた。

けど違うのだ。こういっちゃなんだが死体程度ならもう見慣れている。これまでの人生で目の前で人が死ぬことなど何度もあった。

これは、恐怖であり嫌悪だ。生きたいと思い行動するだけで数千万もの人々を死に追いやり、さらにその数倍の人々を不幸にするグレイ・ハウスダットという存在の罪深さに。



背中をさすってくれた兵士に礼をいって、俺は歩き出す。

とにかく1人になりたかった。



そうして1人で歩きながら考える。一体どうすれば良かったというのだろう。

こんな俺に一体何ができるというのか。

延々と答えが出ない問いを自問自答し、気づけば、俺は王城の前にいた。

王城といっても、今はただの瓦礫の山だが。

あれだけ綺麗な城だったのに、今はその美しさの欠片もない。

まぁこれも俺のせいだと言えるのだが。



このあと、軍の中でも無事な奴らを二つにわけ、半分は負傷者達をマルテアに連れ帰り、残りの半分はここに残って明日から一足早く瓦礫などの撤去作業に移る予定だ



したがって、ここには誰もいなかった。俺も何だかんだ言ってもたいして思うところはないので、王城の周りをぐるりと回るように歩く。

何かしながらのほうが考えがまとまるのだ。


そんななか、俺はある一冊の手帳が落ちているのを発見した。

そのくらいなら別に何の問題もないのだが、その手帳は公爵家である俺でも驚くくらいに綺麗で、どこか惹き付けられるようなものを感じた。

だから俺はその手帳を拾い、中を確認して驚いた。


この手帳、宰相のだ。


本来ならば、どんな機密事項があるかも分からないので中身を確認する前に本部へ持っていくべきだが、周囲に人がいないのもあり、興味本位で中身を見てみた。

中身は宰相の日記だった。


日記のなかには他愛ないプライベートなことから、確かに国の政策の機密事項になりそうなことまで色々書いてある。

その日にあったことを自分の所感を交えて記載していたようだ。


たいして興味もなかった俺は、パラパラと流し見して、“これ半端に機密事項っぽいのも書いてるし見なかったふりして捨てようかな“と考えていた。


日記は後半に差し掛かり、そこで俺の手は止まった。



●月●●日


今日はこの城の地下にいるアレに会う日だ。研究者どもによると、アレもそろそろ壊れかけているらしい。話すどころか動くこともほぼないそうだ。アレにはまだまだ役立ってもらわないといけないので、研究者どもにとりあえず今まで通り動くように薬を作らせていたのが完成したらしい。実際に投与しないと分からないが上手くいくようなら研究所の予算を増やしてやってもいいだろう。



●月●●日


昨日の実験は失敗だった。研究者どもが自信満々に渡してくるものだから期待したが、投与しても体から何か黒いもやみたいなのが出てくるだけで、結局直りはしなかった。研究者どもを厳しく叱責し予算も減額させたが、どうしても直らないようなら仕方ないので諦めようと思う。もったいないとは思うが。

しかし昨日の夜から少し地面が揺れている気がする。面倒なので地震とかやめてほしい。

今日の陛下のご予定は……




「これは……」


これは、いやこれが原因だろう。宰相は邪神の存在を知っていたのか?でもこれって邪神を実験対象というか何かに利用していたっぽいが。


どういうことなのか。

そもそも本当に邪神なんて存在を利用出来るのだろうか。

まじで意味がわからない。


で、何やかんやで薬ぶっ刺して暴走?するとか馬鹿じゃねぇのかとしか言いようがない。



というか邪神が壊れるって何だよ。

ヤバイ、確かにゲームでもこの国の真っ黒な部分は見たが、実際は俺が知っている以上にヤバいことをしているらしい。


というか、王都が壊滅したのこいつらのせいなのでは……?



まぁ、俺がシナリオ通りに行動していればこんなことにはならなかったんだけどね!




その後、俺は更なる情報を手に入れるため王城の瓦礫を漁りだした。

とにもかくにも情報が必要だ。

そうして、いくつか新しい情報を手に入れた。

といっても、この手帳レベルで綺麗に残っているものなどあまりなく、そのなかでも俺が求めている邪神周りの情報があるのは1個しかなかった。

どうやら邪神は、少女の姿をしているらしい。




俺はこのあとどうするか考えた。

このままこの世界で、この人生で生きていくことは俺には出来ない。無理だ。絶対に。

そもそも今回の人生は情報を集めるために捨てたようなもんなのだ。生きてるからといってこのまま生きる気はさらさらない。

俺が生きるためだけに数千万もの人々を殺し、その数倍の人々を不幸にした罪悪感に俺は耐えられない。

今ですら俺はこの罪悪感によってすぐにでも死にたい気分なのだ。

だから、また自殺する気でいる。




俺は今回の人生で色々な情報を手に入れることができた。特にこの邪神関連の情報はでかい。そこで俺は考えた。“これ、まだ制御できてる内に上手いこと邪神を殺せばうまく行きそうじゃね?“と。

実際、邪神以外でたいした影響は出ていないのだ。……まぁ俺が知らないだけの可能性も全然あるが。



とりあえず、次の目的は決まった。邪神を殺す。期限はアドミラ学園の卒業まで。


そうと決まったら早速自殺をしよう。

というわけで、本部の医療班のところで幾つか薬をかっぱらい、一気に飲む。これで疑似的な安楽死モドキが出来るのだ。

俺もこれまでの人生だてに30回近くやり直したわけではないのだ。成長している。

…あまり嬉しくない方向にだけどな。

今後ともよろしくお願いいたします

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