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決意(マイナス方向)


そして、俺はやはり5歳へ戻る。



結局、やはり俺の予想通り。自殺程度でこのループは終わらない。終わらせてなんかくれない。


けど、だけど、あの自殺には意味があった。

前回の人生の、どうしようもないほどまでの自殺願望を抑えることができた。

そして、覚悟も決まった。


俺はもう、期待しない。生きていたらいいことがあるなんて希望は持たない。こんな俺程度が何かを成せるなんて思わない。


死とは、結局のところ逃げ道なのだ。この救いのない現実から逃げる最後の手段。

唯一全ての生命に与えられている権利。

死というものは、世界で一番平等を表しているものなのだ。

()()()()()


ただ1人、俺だけは死ですら救ってくれない。



だから、だからこそ、俺は鋼鉄の意思を持って決意した。もはや手遅れだ。今更、誰が何を言おうと変わらない。


俺は、絶対に死んでやる。その覚悟が決まった。






いつも通り、5歳に戻った俺。今回の人生ですることはシンプルだ。

あの黒いもやの謎を解き明かす。

ともすれば、あれは俺の死のループに関係してる可能性も結構あるのだ。

謎のループ、謎の黒いもや、全く関係がない可能性は低いだろう。



というわけで、まずするべきことは前回のループをなぞることだ。出来る限り正確に。


あの黒いもやを見たのは前回が初めてだからだ。というか、卒業まで生き残れたのが初めてだ。最低条件として、そこまでいく必要がある。

前回はあの黒いもやに殺されたといって過言ではない。そこで、今回は外から観察する。


人間は、全く理解が及ばないことも、時間と人手をかけて解明していった。

俺もそれにのっとり、黒いもやが出てくる前に王都から退避しようということだ。


どうせ、俺が自分で調べようとしなくても、王都の壊滅なんてことが起こったのなら、生き残った貴族か、他国が絶対に調べるはずだ。俺としては、その結果さえ知れればいい。



けど、これはつまり、俺はただ黒いもやの正体を知るためだけに、王都に住む貴族や民の数千万を見捨てるということである。


それは、人として駄目なことだ。

自分のために数千万の命を見殺しにする。紛れもない悪であり大罪だ。そんなことが出来る奴はもはや人間ではない。



だから俺は人間であることを諦めた。


誰に化け物と罵られようとも、大罪人と謗りを受けようとも、嫌われようと追われようと、もはや全てどうでもいいのだから。





そして時間は卒業した次の日へ。

かつての俺なら、1度通ったルートを再現するのは難しかっただろう。

しかし、俺はもう30近い回数人生を体験しているのだ。時間にすれば、ゆうに300年を越える年月を生きているのだ。

したがって、貴族社会で必須ともいえる演技に関してはめちゃくちゃ上手くなった。知ってる奴に初めて会ったふりをするのも、わざとミスをするのも、そう簡単に誰かにバレるとは思えない。代償として、目はずっと死んでいるが。



その演技力をもって、俺はほぼ同じルートをたどった。

これに関して、ラノアがマジで面倒だった。

これまでの人生でもそうだったが、ラノアの"相手の感情が分かる"とかいうチートみたいな能力のせいで演技がバレるときがあるのだ。流石のあいつも四六時中相手の感情を見るとかいうプライバシー皆無なことはしないのでその隙をつくのだが、面倒なのにはかわりない。くそうざかった。



まぁ?結果としてはほぼ同じルートになったので俺の勝ちといっても過言じゃないけどな。

……いつから勝負になったんだっけ?



そんなこんなで、俺は王都を出る。わざわざ理由を考えるのも面倒なので、家には何も言わない。

どうせ、数日後には壊滅するし。




王都を出た俺は、西へ向かった。

カルラ王国の西には大森林が広がっている。その大森林はもはや固有の生態系があり、その近くに住む人々もそこ、「カルネルチュア大森林」で採取できるもので生計を立てている。

カルネルチュア大森林は他では見ない動植物が多く、研究のための採取依頼などがよく出されているのだ。



そこで俺も、「カルネルチュア大森林の固有植物の調査と制作中の魔導具に必要なものの採取」という名目で、カルネルチュア大森林に接する領地のなかで最も大きいウッドストック辺境伯を訪ねることにした。

移動に丸1日かかった。この国広すぎ。



ちなみに何で辺境伯などというお偉いさんを訪ねたかというと、一応俺も公爵家の次期当主という立場なので、下手に中小貴族のところに訪れると相手が困るのだ。こちらの家柄に相応しいおもてなしをするのが非常に大変なのだと。



そうして俺はウッドストック辺境伯の屋敷に到着した。ちゃんと前から連絡をしていたのでとてもスムーズだ。

とりあえず建前上、俺はここに一週間は泊まることになっている。



その日の晩ご飯の席でウッドストックご夫妻と話した。

彼らと話すのは何年も前の社交会場以来だが、当時と変わらず、威厳がありながらこちらを気遣ってくれていることが伝わってくるとてもいい人達だ。

俺みたいなゴミがこんないい人達にお世話になるのはとても申し訳ない。

ただ、これが俺がとり得る選択肢のなかで最も良かったのだ。

いつか絶対に何かでお返しをしよう。




そして俺が辺境伯の屋敷に着いて1日後、王都壊滅の知らせが届いた。

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