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和製MMT教の流行と幻想そして悪役令嬢の徒労感

 プレゼントデイ・プレゼントタイム・HA!HA!HA!HA!■


「ドーモ毛の生えた底辺作家です。アイエエエエ!」


 今回はちょっとネット社会と経済学の話。




「真実は真実だからこそ強いんだ。真実だからこそ正義なんだ。説得力あるだろう。」


『serial experiments lain』タロウくんのセリフです。ちなみにこのタロウくんが所属しているナイツ(彼は準構成員)はワイヤードを通して彼らが望んだ『事実』を『真実』として洗脳のようなことをやっていた組織です。まあナイツ自体がラスボスの手下なんですが、言ってしまえば彼らの『事実』は虚構だったわけです。


 このアニメは20年以上前の深夜アニメ初期の傑作ですが、リアルタイムで見ていたときは内容の半分も理解できませんした。ちょうどGYAOでネット放送していたので現在見ていますが実によく出来ています。時代が追い越してしまってワイヤードがワイヤレスになってたりしますけどね。


「嘘も百回言えば真実になる」


 何ていう話もありますが、ネットのデマとかトンデモ理論とかが横行してそれが拡散されることにより『真実』になって、わけのわからない状況になっています。前にやった皇女様の件も似たような状況です。苦労もせずに生きている皇女を養ってやっているんだなんて嘘っぱちでとんでもない話ですけど、一旦そういう論理が出来上がってしまうと容易には払拭できない。結果PTSDとか言う状況になってしまったのは嘆かわしい話です。しかも場所によっては皇室に敬意を持っていることの裏返しだなんて言う話も出ていますが、敬称もつけず公務も理解していない人がそんな殊勝なはずがないでしょうにと思います。


 ちなみに先述の「嘘も・・・」のくだりはナチスの宣伝相ゲッペルスのセリフだと言われていましたが、wikiでは本人のセリフではないと書かれていました。ネットがなくても『真実』は作り出せるということでしょう。当時私は生きていないので真実がどうなのかはわかりません。1192作ろう鎌倉幕府みたいな話です。今は1185みたいですけど個人的な検証なんて出来ませんから。誰かが作った「事実」を「真実」として受け入れるしかないのが人間というものなのでしょうね。


 最近の話だと「Dappi氏がTwitter上で野党批判を繰り返し、不正確な情報や誹謗中傷などが発信されていた」とニュースになっていましたがこれも似たような話です。作られた事実の押しつけが真実になるという情報の問題というやつですね。拡散する方は100回でも同じことをいいますが、訂正が入ったとしても大抵1~2回どこかの片隅に書かれるだけだからそういうことになるのでしょう。lainでいういたずら者もどこにでもいますしね。






 さて今回のお題は和製MMT教です。これは簡単に言ってしまうと


「自国通貨建ての国債はいくら発行しても破綻しないからもっと国債を発行して積極財政を行え」


 という話です。すごい話です。こんなたったの一文の中に論理矛盾がある(笑)。でこれを何の矛盾も感じずに受け入れている人がかなり多くいるようです。どっかの政調会長やなんたら新選組のタロウくんまで同調している。信者の思想は左右問わないという感じです。


 とりあえず結論から言うとこの命題が正しいとすると他国通貨建ての国債を発行する国なんてないということになります。だって破綻しないなら自国通貨建てで国債を発行してから必要な他国の通貨に交換すればいいわけですから。他国通貨建ての国債を外債なんていいますが外債を発行するだけでリスクじゃないという話です。自国の通貨はお金をすればいいですが他国の通貨を刷ったら偽札で主権侵害ですからね。もっとも結局は大量に通貨を発行すると価値が暴落して為替相場や債券相場が大変なことになるので出来ないということになります。通貨にだって受給のバランスというのは存在するのです。なので財務省が国債の発行や紙幣の発行はきちんと管理されていますよと言って歯止めをかけています。これをけしからんと言って叩いているナイツがいるわけです。


 ちなみにこの理論が幅を利かせるようになったのは霞が関埋蔵金と言われた財政投融資特別会計積立金を使い切ったあと再度政権交代が起こった後くらいです。この埋蔵金はバラマキ腹痛総理が手を付け、政権交代で相手に物資を渡したくない3人目のタロウくんが焦土戦術として使い切ってしまった金です。


 そして政権を奪還した後、利権誘導のためのカネがないので理論武装して「ばら撒いてもいいじゃない!」ということでトンデモ理論で財政規律を無視するようになりました。一度拡大した財政を縮小するのは大変なことです。既得権益になるということもありますが、他人の借金を返そうとする人間なんていないということでもあります。財政規模というのは基本的に不可逆的なのです。



 無限に通貨発行ができないというのはヘリコプターベンこと積極財政、リフレ(積極財政と通貨再拡大で物価上昇による景気回復を目指す主張)派の元FRB 議長(アメリカ版日銀総裁)ベン・バーナンキですら否定している話で、もし出来るのなら無税国家が誕生するという話はバーナンキの背理法なんていうふうに日本では呼ばれています。ちなみにヘリはデフレを解消するには、ヘリコプターから紙幣をばらまくような大胆な金融緩和策が有効という話からついたあだ名です。


 こうやってツッコミを入れると無限にとは言っていない。インフレ傾向が鮮明になったらまたは為替が暴落するような傾向があれば歳出削減するなり増税するなりすればいいなんていう反論が来ます。


 いや無理だから。というか現場を知らなすぎるとしか言いようがない話です。金を刷りすぎたから暴落したのであればこれ以上刷るわけには行かない。先程の埋蔵金はそもそも金利の変動に対応する準備金だったわけですがそれは使い果たしています。この金額が20兆円。消費税は1%で税収2兆円と言われているので10%分。これを歳出削減で賄おうとしても削るところがありません。政権交代時に事業仕分けとかやりましたが結局埋蔵金は大して出てこなかったのは記憶にあると思います。アメリカなんかで毎年のようにつなぎ予算が議会を通過せずに政府機関の閉鎖なんて言うことが起きていますが、こんなことに対応するスキームが日本にはありません。大混乱でしょうね。そもそも基軸通貨であるドルをもつアメリカですら財政規律を気にしているのに日本が気にしないで済むわけがないのです。


 話をもとに戻して増税ですがそれこそもっと無理です。ここまで大型の増税となると主に消費税になるのでしょうが、前回の消費税の増税は可決してから施行まで1年半ほどかかっています。法案作成や審議に2ヶ月程度かかることを考えると2年弱にもなります。一方で為替市場や債券市場の動きはリアルタイムです。兆候を確認してから動いて間に合うわけがないのです。


 なんでこんなに時間がかかるのかと言うと、消費税の徴収は基本的に法人が行っていますが、法人の決算は月締めで自由に選択することが出来ます。12月末締めもあれば3月の場合も10月の場合もあるわけです。明日から増税と言われたところで会計ソフトも対応していないのです。今までのデータを破棄して新ソフトで再入力なんて言われたら経理が死にます。そもそも会計ソフトの軽微な変更ですら決定してから開発になるわけです。なので基本的には1年以上前の告知が必要です。


 それ以外にもレジスターの対応や自動販売機の設定なんかの問題もあります。全国1万台の自販機を10人でやろうとかなったら数ヶ月かかるわけです。


 外にも急に税率が変わったら事業計画の根本的な見直しを迫られたりすることにもなります。事業自体は好調なのに変なタイミングで支出が出来たのでキャッシュフローの問題で資金ショートしましたとか洒落になりません。5公5民だから一所懸命に種を蒔いて収穫したら、明日から9公1民だなんて言われたら餓死です。そこからさらに連鎖倒産とかね。


 そういう事を考えるとどうしてもタイムラグが出てくるわけですが、なんちゃって机上理論の方はそういう認識がないわけです。困った話です。




 さてなんでこんな無茶苦茶な理論がまかり通っているかと言うと、政治家が責任を取りたくないからです。本来は予算の決定権は国会にあります。これが官僚のせいなら予算委員会ってなんなのということになります。でもうまく行かなかったときに責任転嫁で官僚が悪いといいたいわけです。国会議員は落選したらただの人ですが官僚は基本的には首になりませんから。


「財務省が悪い」これで全て片付ける。うまく行ったときだけ自分の手柄。「なんちゃらマスク」とか政治家が指示してやっているのにね。


 でもって悪者にするために官僚が大臣を洗脳しているのだとかいうわけです。そんな簡単に洗脳されるような大臣を国民は選ぶなよと言いたくなります。民主主義大崩壊だろという話です。


 省益を守るために洗脳しているんだなんて話もあります。では財務省の省益ってなんなのというと答えが出ない。そもそも財務省の仕事は予算案の作成と省庁間の予算の調整、国家予算の安定確保です。安定確保には国債の発行も含まれるわけですが、金利が上昇傾向になると利払い費の上昇等で困るわけです。なので積極財政には基本的に否定的。当然の話です。別に売国でも職務放棄でもありません。金庫番がゆるゆるの会社なんて倒産一直線ですよ。


 一方で積極財政論者は適当な理屈つけて金を引っ張ってきてお友達に配りたい。どうせ一定のところで財務省が止めるだろうからふっかけてやろうという状況なわけです。


 なろう風に言うと選ばれなかった世界線の話を読むことはない。ということになります。


 そしてこんな話に乗っかっているのが10万円の給付金で味をしめた層。こういう人たちが一生懸命デマを拡散しているわけです。ちなみに私は前回の給付金は家族に取り上げられたので全く実感がなくこんな事をしても将来辛くなるだけなのにという感想しかありません。




 主流派の経済学者が何故これを否定するのかという根拠がもう一つあります。経済史の初歩のところでやる話ですが、紙幣の起源は宋代の「交子」という物だという事になっています。でこの「交子」ですが濫発してインフレ起こして紙切れになったわけです。当然当時に外債なんてものはありません。最初の紙幣でインフレしているじゃんという話です。


 そもそもですが通貨というものは幻想と信用で成り立っています。通貨には貯蓄という機能もあるわけですから、当然人々は安定しているものの方を選択することになります。乱発されて見向きもされなくなった通貨などそれこそ無価値ですからね。財務省が財政規律を無視しますといえば「その幻想をぶち殺す(そげぶ)」ということになるわけです。インフレが今は起きていないから大丈夫だなんて言っても「交子」だって紙切れになる寸前までは価値があったわけです。なんと言ってもこの「交子」は期限付きでしたから。


 それが一気にパリーン(そげぶ)ですよ。パリーン(そげぶ)。結局世界的には和製MMTは相手にされていないわけです。



 和製MMT理論を売り歩く人というのは成功すれば自分が正しい。失敗したら逃げて国民を破産させても構わないという人間です。モラルハザードを起こしたトレーダーですね。金融ギャンブルで成功したら高額報酬、失敗したら税金で補填というやつです。またはどうせ選択しないのだからという政権担当しない2番めのタロウくんのような人です。泡沫政党がやるポピュリズム的手法。実現不能の政策をぶち上げて俺の言ったとおりにしないからいつまでも成功しないんだというわけです。そんな話が一部与党の政治家まで拡散しているのは嘆かわしい話です。


 でもよく考えるとどっかの中央銀行総裁のホワイトさんから代わったブラックさんは当時金融緩和をすれば日本は復活だと言っていたのですが、復活どころか自分で設定した2%のインフレ目標すら達成できていないんですよね。「異次元」緩和とか言っているのにですよ。リフレ派も結果を出せていない。何だか日本の経済学理論はインチキ理論ばっかりのような気がしてきます。情けない限りです。


 3本の矢も全部折れていますしね。そしてぶち上げたのが分配と格差縮小。ここ数年で格差が拡大したと言っているようなものです。なんたらミクスも完全敗北です。


 それにしてもここ数年で幻想に踊らされる人が増えたような気がします。M橋信者とかT橋も酷いですが、なんでこんなペテン師に引っかかるんでしょうね。仕事の都合でM橋氏の公演を聞いたことがありますが彼いわく日本がだめになって成長しないのは消費税を導入したからだとのことですが、ヨーロッパ諸国のほうがさきに導入していますよね。なのに日本はゼロ成長から脱却できない。明らかな三段論法で否定するのはそうでない実例を一つ上げればいいだけですが多数の実例が出てくるのですがどうしましょう。ちなみに増税すれば消費税であるとか所得税であるとか関係なく一般的には景気は悪化します。



 小渕内閣からずっと日本政府は放漫経営ですが結局成長軌道に乗せられていません。財政出動が足りないからなんていうのはこれだけ歳出増えてて結果出てないじゃないで終わる話です。もはや宗教じみた盲信ではないでしょうか?個人的には結局量だけの財政政策や、金融緩和ばかりいじっても社会構造の是正をしなければ焼け石に水にしからならないよなと思います。


 幻想にすがって生きていくのは物語の中だけで良いと思うのですが・・・。





 そうそう幻想といえば「BCってビフォーキリストだからAD元年にキリストが生まれた」っていうのはどうも違うらしいんですよ。興味があったら調べてみてください。


 他人の作った真実に呑まれてしまうのはよろしくない話だと思います。もっとも「真実」が正しいかなんて冒頭にあるように結局はわからない話です。


 なろうでも真実の愛なんて大抵ろくでもないことになりますから・・・。


 そしてろくに調べもせずに安っぽい正義感で「財務省がー」と断罪風に騒いでいる人々を見て、この光景をどっかで見たことあるなと思ってふと考えると、悪役令嬢を断罪して婚約破棄しているあほ王子だということに気が付きました。徒労感満載の悪役令嬢の気持ちがちょっとだけわかった気がします。


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― 新着の感想 ―
[一言] わざわざ和製MMTと書いているところに好感が持てます。 ほとんどの人は気にしないんでしょうが。
[気になる点] ①物価目標を決めた上で、その範囲内であれば、積極的な金融緩和と財政投資をすることは、別に問題ではないと思いますが? ②財政投融資特別会計積立金(特別会計)は、物価や金利の調整を目的に…
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