5話
「そういえば『どうしてわたしに?』という質問にはまだお答えしていませんでしたね」
「聞きましょう。是非に」
『なにがあったのか』という質問には『イエローが魔法使いを殺して回っている』と答えて頂きましたが、そちらはまだでしたね。
腹の探り合いは一旦置いておいて、そちらの理由も伺うことにしましょう。
「理由はシンプルです。わたくしが知る中で、貴女が一番強く優秀であるからです。色々と貴女に関する報告はこちらにも上がってきていますよ。葬儀の件数、魔教徒の捕獲数、魔人の討伐数、どれを取ってもトップクラス。流石の成績と言わざるを得ません」
「それほどでもあります。それでわたしに白羽の矢が立ったというわけですね」
ホワイトだけに。どや。
「ですが、葬儀屋としては葬儀以外がカウントされているのは意外と言いますか。必要ですか?」
わたしの場合は全てにおいて〝成り行き〟で、実績を積もうと躍起になっていたわけではありませんからあまり実感が湧かないというのが正直なところ。褒められるのは嬉しいですが、所詮は偶然の産物というものでしょう。
「悪魔絡みは葬儀屋でなくとも功績になりますからね。死者に一番近い職業が葬儀屋だから腕っ節が強い方はいつでも大歓迎なのです」
「今回の件はそれが裏目に出ているというわけですか。自業自得ですね」
「それを言われると弱いです」
困ったようにくすりと微笑むレッド。
イエローは腕っ節の強さを見込まれていましたから、そのせいで手を焼いているのは本末転倒と言いますか、困った話です。
「それで、引き受けてくれる気になってくれましたか?」
「引き受けるもなにも、こちらに拒否権は無いのでしょう? そもそも」
伝書鳩にはそのように書かれていましたから。『拒否権はない』と。
ここで意地でも断ろうものなら、向こうも意地になって二対一の魔法使いによる争いが起こるでしょう。それは本意ではありません。
「ちなみにどうなるんですか? 断ったら」
「ご想像の通りだと思いますよ。切れる手札は全て切ってでも引き受けてもらいます」
パワハラだー。
「……ひとまずお話はわかりました。お話は」
とりあえず、ということは強調させておきました。
「では、引き受けていただけますね?」
「もちろん──」
「良かった、断られたらどうしようかと」
「──嫌に決まっているじゃないですか」
ピシリ、と窓ガラスにヒビが入る音を立てて、会議室の空気が固まりました。