4話
虹天集のメンバーでもあるイエロー。それを殺せとレッドは言いました。
想像もしていなかったお話に頭がついていけません。イエローに一体なにがあったのでしょうか。
「どうしてわたしに? なにがあったのでしょうか?」
「貴女は旅をしていて世情には疎いのですよね。わかりました、順を追ってご説明致します」
──ということで、レッドがイエローに関する様々な情報を提示してくれました。
わたしが知っている情報だと、イエローはわたしたちのような魔法使いではなく普通の人間なのですが、かなりの武闘派な男性です。長身でガタイの良い筋肉質な身体で、他人にも自分にも厳しく頑固そうな印象を抱いたことを覚えています。
そしてここからがレッドから聞いた話なのですが、どうもイエローは魔法使いを探しては次々と殺して回っているそうなのです。やっていることがまるで魔教徒のよう。魔教徒は魔法使いを敵視している人が多いので。
あ、魔教徒というのは悪魔を信仰する謎の集団のこと。ただの害悪です。
「ここも危ないのでは?」
なにせここには標的となっている魔法使いが三人も揃っています。そしてイエローは虹天集のメンバーなわけですから出入りも簡単なはずです。
「もちろんすでに指名手配済みで出入りはできないようになっています。押し入られたら話は別ですけどね。ですがそれはないでしょう」
「三対一になりますからね」
こちらは魔法使い三人。あちらはただの人間が一人。いくら武闘派とはいえ、この戦力差はそう簡単に埋められるものではありません。
ですが、レッドはゆらりと首を横に振りました。
「いいえ、美少女が三人もいるからです」
「なるほど!」
手を打って納得しました。わたしだって逆の立場だったら確かに嫌です。魔法使いの男が三人もいる中にただの美少女が一人で向かうなんてことしたくありません。納得も納得の理由でした。
「で、どこにいるのかはもちろん把握しているのですよね?」
なにせレッドの魔法は千里眼。見知った顔を探すなど雑作もありません。
レッドは「もちろんです」と頷きました。
「引き受けてくれたらお教えしましょう」
「チッ」
こちらの思惑もお見通しでしたか。
こんな面倒で葬儀屋の仕事でもないことをやるなんてまっぴらゴメンです。場所だけでも聞き出して、そこを避けるようにしてトンズラしようと思っていたのに。
この女はわたしの目から見ても侮れません。ちょっとキャラ被ってるし。
「相変わらずのようですね。女狐」
「ふふふ、それはお互い様でしょう?」
「ふふふ」
「ふふふふふふ」
「「ふふふふふふふふふ」」
しばらく腹の探り合いで全く感情のこもっていない笑い声が会議室にこだまします。
「こわいですよ……」
グリーンは雷に怯える子猫ように隅っこで震えていましたとさ。