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22話

「殺さ……ないのですか」

「殺してやりたいという気持ちはありますが、グリーンに釘を刺されましたし。あとでお礼でも言っておくんですね」


 それにレッドは虹天集(こうてんしゅう)のリーダー的存在としてその立場を確立しています。葬儀屋の顔役になっていると言っても過言ではありません。

 そんな人を殺したらどうなってしまうのか、想像ができませんから。


「なにを企んでいるのか知りませんが、人間の命を脅かすようなことなら今のうちに手を引いておくことです。早めに」

「今更、後になど引けるものですか」


 非力とは言えそれなりに力を込めて首を掴んでいるつもりですが、レッドはハッキリと宣言しました。


「そうですか……ならせめてわたしを巻き込まないで、他所(よそ)でやってください」


 わたしは悠々自適、自由気ままに世界を旅して人々を救いたいのです。こんなところに呼び出されて利用されている時間なんてないんです。勘弁してください。


「もしまたバカなことがわたしの目に入ったら、そのときは覚悟しておくことです」


 突き飛ばすように手を離すと、レッドは小さく咳き込んでから身なりを整えていました。

 この決闘は終わりですね。わたしの勝ちで。


「……すぐに発つのですか?」

「のんびりはしていられませんね。元々ここに来る予定はありませんでしたし、軍資金を調達してから明日中には出発します」

「なら軍資金を調達する前でも後でも構いません。葬儀屋本部に顔を出していただけますか?」


 えー。


「そんな露骨に嫌そうな反応をしなくても……グリーンに顔を見せてあげてください。憧れの人にようやく再会できたのにこのままでは可哀想ではありませんか」

「……考えておきます」


 後ろ向きに。


「では明日、いつでもお越し下さい。お待ちしておりますわ」


 丁寧に……いえ、レッドの場合は(みやび)にとでも言いましょうか、そんな所作でお辞儀をしてから立ち去っていきました。

 さて、それではわたしも──ひとまずこの場から逃げますか。

 イエローとレッドと戦った影響で都市のあちこちが破損しています。幸い周りの人はすぐに避難してくれたので怪我人などはいませんが、この場に居続けても良いことはありません。

 逃げるが勝ち! すたこらさっさーっと。

 質屋と情報屋の場所聞いておくんでした。

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