21話
一直線だったレッドの攻撃がわたしの動きに合わせて曲がりくねった。追いかけてきたのです。確実に致命傷を与えようとして。刀剣としては軽い部類に入る細身の曲刀だから可能な挙動でした。
「でたらめ……ではないのでしょうね」
千里眼で観た光景と自分の目で見た光景。二つの視点からわたしの動きを分析して対応した、ということでしょうか。思考速度まで上がっているはずです、そうでないとあり得ません。脳への負担も相当なものでしょう。
それを平然と行なっているのだから、レッドは紛れもない実力者。千里眼という、本来なら戦闘向きではない魔法でよくここまで上り詰めたものです。賞賛に値します。
イエローと同様に、気を抜けるような相手ではありません。
「──それでも、あなたにわたしの白は穢せない」
このセリフを一日に二度も言うことになるとは。キャラが立ってるいいキメ台詞で結構気に入っていたりするんですよ。どや。
「ふふふ、その言葉を待っていました。散々嘘つき呼ばわりされてきましたからね、わたくしの手でその言葉を嘘にして差し上げましょう」
「自信満々ですね。その天狗のように伸びた鼻っ柱をへし折るのも楽しそうです」
天狗とかいう架空の存在は赤いお面を被っているそうですし、レッドにピッタリじゃありませんか。
「不可避の一太刀に後悔しなさい」
「是非わたしに見せてください。その不可避の一太刀とやらを」
次の一撃、余裕があるように見えているかもしれませんが本気で立ち向かわなければならないでしょう。少しばかり運がわたしに微笑んでくれさえすれば、そのあとは実力で勝利を掴み取ってみせます。
「──ッはぁっ!」
レッドはカタナを上段に構え、渾身の力で振り下ろしてきました。先程よりもさらに深く踏み込んで。後ろに回避させないためでしょう。左右への回避を釣るためでもあると思います。
──ですが、勝利の女神はわたしに微笑んでくれました。
念のためかけておいた保険をフルに活用して、レッドにわたしの実力を見せつけてやるとしましょう。
圧縮魔法の領域を自分の両腕に纏わせたものが保険。これでレッドのカタナを左右から挟み込むように受け止めたのです。
お互いの領域がぶつかり、衝撃に雨が霧散します。
「なっ、白刃取り?!」
「これ『白刃取り』って言うんですか? わたしにピッタリじゃないですか」
続けて魔力を高め、カタナを一気に超高温へ。レッドのカタナは半ばから落ちて地面に突き刺さりました。
「折れ、いえ溶けた?! ガグッ──?!」
「これでわたしの勝ちですね。詰みです」
カタナが使い物にならなくなって狼狽えているレッドの首根っこを掴みました。
グリーンがいなかったらレッドはこの時点でもう死んでいます。命があることを感謝するんですね。グリーンに。どや。




