表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/24

16話

 わたしの申し出を祝福するかのように、どんよりとした低い空からポツポツと雨粒が降り始め、勢力を増した雨はイエローの血痕すら洗い流してしまいました。

 やはり雨は心地良い。火照った体を包み込み、血が登った頭を冷やしてくれる。いつでも雨は、わたしの味方。

 イエロー。あなたとの闘い、不謹慎かもしれませんがとても楽しかったですよ。でもお互いに満足できていないでしょう?

 この申し出は、あなた(イエロー)の分も含めた延長戦です。


「決闘……ですか? それは面白くない冗談ですよホワイトさん」

「『面白くない冗談』ですか。それは面白くない冗談ですね、レッド」


 わたしはそんなつまらない冗談は言いません。わたしの冗談はいつでもどこでも面白いのです。面白くない冗談だと思ってくれたのならば、わたしのお誘いが本気であると伝わったはずです。


「あなたは『人を殺せば悪。悪を殺せば正義』と言いました。ついさっき」

「ええ。それがなにか? 間違っているとでも?」

「いいえ、肯定してあげます。だからイエローを殺したあなたはわたしにとって悪です。わたしに殺されても文句はありませんね?」

「なるほどそういうことでしたか。これは一本取られてしまいましたね」


 糸で釣っていたかのように上がり続けていたレッドの口角が真一文字に引き結ばれました。


「〝真っ赤〟な嘘に塗り固められたあなたの仮面、叩き割ってあげましょう。粉々に」

「……わたくし、ホワイトさんとは戦いたくないのですが」

「嘘ばっかり。魔力(マギ)が昂っていますよ」


 風に(なび)く程度の魔力(マギ)が、レッドの周囲では嵐に揉まれるように荒れ狂っています。

 わたしの魔力(マギ)とレッドの魔力(マギ)がせめぎ合い、一触即発の突風が雨に痛みを持たせます。

 そんな二人の間に、空気を読めない真っ白な鳩が割って入りました。

 ──白い鳩は平和の象徴。


「わかっていますよグリーン。『殺されても文句はありませんね』とは言いましたが、本当に殺しはしません。嘘つき(レッド)とは違います」


 うっかり殺してしまうかもわかりませんが。


「ホワイトさんはご自分に正直過ぎます。貴女ならもっと上手く生きていけるのに」

「わたしは今の生きかたに満足しています。余計なお世話」


 お互いの額と額をゴッツンコ、胸と胸をむにんむにんとさせてから、稲光を合図にこの場で決闘は始まりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ