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15話

 イエローの陰からゆっくりと姿を現した織物姿の女性。その手には血が全くついていない細身の曲刀が握られていて、カチンッ、と鞘へ納められているところでした。


「『その身で味わってみろ。飛ぶぞ』でしたか? 飛んだのは自分の首でしたね。お似合いですよイエロー」


 鞘で軽く突き、立ったままだったイエローの身体を倒すと、レッドは天を仰ぎます。


「グリーン、見えていますね? 処理なさい」


 その一言を機に、周囲から漆黒の鳥が大量に群がり、物凄い勢いで死体を(ついば)み始めました。

 これはグリーンの鳥操(ちょうそう)……いえ、鳥葬(ちょうそう)。鳥を使ったれっきとした弔いかたです。

 その場に残ったのは、僅かな血痕のみ。イエローが着ていた衣服は鳥が咥えたままどこかへ飛んで行きました。

 死体が消えたことを確認し、レッドは満足げに微笑むと、ようやくこちらを見ました。


「わたくしの存在に気づけず、後ろを取られるほうが悪いとは思いませんか?」


 顎に指を当て首を傾げるという、実にわざとらしくとぼけてくれますねこの女は。

 わたしという絶世の美少女が相手だったのですよ。他に意識を割く余裕など無かったはずです。


「千里眼を持つ人が言うと嫌味にしか聞こえませんね」

「ふふふ、そう聞こえてくれたのならば幸いですわ」


 本当に嫌味な女。嫌いです。


「殺す必要はなかったのではありませんか。仲間でしょう」

()仲間です。そこはお間違えのなきよう。人を殺せば悪ですが、悪を殺すのは正義です。魔法使いという人を殺したイエローは立派な悪ではありませんか。わたしは悪を裁いたまで」

「ご高説どうも。ヘドが出ます」


 それが当たり前だと、そう言わんばかりに流暢に(うた)ってくれますね。

 流麗な所作で一礼するレッド。


「痛み入ります。多少思惑とは違う点もありましたが、お陰様で(おおむ)ね予定通りに事は進みました。感謝致しますわ、ホワイトさん」

「お礼は弾んでくれるんですよね。まさか」

「あら、本当にホワイトさんは冗談がお上手ですね。貴女はわたくしの命令を蹴った。そのような義理はございません」


 そう言うと思いましたよ。レッドに利用されているということはわかっていましたが、いくらなんでもこれは後味が悪すぎます。

 わたしが引き受けたらわたしが殺すから放置でいい。断られてもわたしを襲うだろうからその隙に殺せばいい。

 どっちに転がっても、わたしがこの地に来てしまった時点でイエローの死は免れなかった。


「……そんなの納得できないじゃないですか」


 小さく独り言ちました。

 全てレッドの思惑通りに進んでいるなんて、面白くありません。全く。これっぽっちも。


「レッド」


 用は済んだとばかりに涼しい顔で立ち去ろうとしているレッドを呼び止めます。


「どうされたのですか? まだなにか?」


 変わらず微笑むレッドに、わたしは手をゆっくりと差し伸べました。この手はその笑みを掻き乱すためのもの。




「──あなたに決闘を申し込みます。わたしと踊ってくれますか」




「……はい?」


 あなたの台本に、こんなセリフは無かったでしょう。その表情が見たかったんですよ。どや。

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