第92話
「何の用」
低く周囲の雨の音に消えてしまいそうなわずかな音を出したこっちに対して、向こうを見ようとすると自身の髪の毛が視界を邪魔してくるのに気づくけど、でも、それをあえてそのままにしておく。一方で星田さんは自分の顎のところに指を当てながら私から視線を逸らすようにしていて、一緒にわずかな声を出しているのをただただじっと見続けていた。
でも、それから一度だけ声を出したそっちはこっちの部屋の中に入ってきて、自分の手でお腹を押しながら私は数歩後ろに下がる。でも、向こうはそのまま杏のベッドの縁にお尻を落っことすと一緒に、立っているこっちへと視線を首ごと見上げるように見つめてきた。一方で、私は自分の両方の手を握り締めたままにその姿を見つめる姿勢でいる。そして、それと一緒に上瞼を下ろしてそこを細くするみたいに。
「いやさ、なんか木月さんみてるとね、昔の私みたいだなって」
最初は声を上げるようにしているその声を聴いた途端、私は一気に上瞼を持ち上げるみたいにしてて。でも、それと一緒に顎も持ち上がってるのに気づいた途端、私のベッドとそれの毛布の下に隠してあるうさ耳パーカーのフードと袖が出てるのに気づいて、それと一緒に少しだけ口を開けるみたいにしてたのにそうなった後で気づく。
でも、その瞬間星田さんも同じような表情をしたとおもったら視線を斜め上へと向けて。それから両方の手を使って立ち上がった。それに続いて私もすぐに体を前のめりにするみたいにしてそっちに近づくけど、でも、全然向こうのほうが動くのが速いせいで私がその体に触れようとした時にはもう、向こうは梯子に足を開けて背伸びするみたいにして からうさ耳パーカーを手に取ってた。
それを見た私は顔を斜め下へと向けながら目を瞑って。それから服が横へと大きく広げられる音を聞いてからわずかに目を開けてそっちを見るけど、星田さんは私のお腹から出た血の跡や東雲の施設で着いたままになってる砂だらけになってる面の方を自分に向けてて。そんな光景を見た途端、私は両方の指をそっちへと向けるみたいにしながらわずかな声を出し続けてしまっていた。でも、それでもそれが意味のある言葉になることはなかった。
「これ、けっこう私はいいと思うけどな、やっぱあいつに言われたの?」
向こうの方から首を上へと持ち上げるようにしてこっちを見てきてて、それとともに途中まで声を出したのを聞いた途端、でも、私は体にこもってた力が抜けてたのを感じ取って、すぐに息を吐きながら慌ててそっちに近づくと前に出されてたうさ耳パーカーを受け取る。
それを両方の腕を手首の辺りでクロスさせながら自分の体へと近づけてから、それ同士の間にうさ耳パーカーを重ねると、そのたたまれてない生地のしわを味わった。一方で、私がそこに顎を近づけているのに対して星田さんはまた杏のベッドの縁に座ってて。こっちの体が軽くなっているのを感じている間、そっちが言葉の続きを言いながら自分の右側の手で縁を叩いてるのを私も見てたら、一歩そっちへと近づくみたいに足を進めると、喉が少し押し込まれるみたいな感覚を味わって。
そのままずっといようとしたのに、不意を突かれて大きな音を感じた途端に私の体が掴まれたら、明るい声を出す星田さんに半場無理やり引っ張られながらその横に座らされた。
「……あぁ」
両方の腕を縁に置いたままにして首を上へと向けるみたいにしてるその姿を横目に見ながら私は膝をくっつけて鼠径部の辺りに両方の手の横を重ねるみたいにして腕をまっすぐに伸ばしている。
そのまま肩を上へと立てるみたいな形でいるこっちに対して、向こうは体を少しだけ前に出しながら前後に揺れるみたいな形をしている。そんな様子をこっちは横眼で眺めているけれど、星田さんは揺れの後ろ側に行ったときでも、私よりもベッド側に行くことはなかった。
「なに? 私だってそうだよ、ここじゃ、それくらい普通だって」
最初は語尾を持ち上げるようにしているのが演技がかってるレベルにまで行ってて。それに対してこっちは膝の位置を変えるくらいしかできてない。でも、そっちは言葉を止めることもなく、また次は語尾を下げることもあれば上げるみたいにしていることもあって。それとともに目線を私ではなく斜め上の方へと持っていくみたいにしていた。
そう思ったけど、向こうは最後の方では顔も一緒にそうするみたいに視線をちょっとだけ下へと向けるようにしたまま瞼を少しだけ落っことすみたいにしてて。それを見た途端、こっちも口を少しだけ開けながら肩を斜めにするみたいにすることでそっちに近づくみたいな体勢をした。
「それに、木月さんかわいそうだなって。ごめんね、あいつの前だとすましてないと文句ばっかでうるさくって」
でも、そう思った途端に、向こうはまたさっきよりもちょっとだけ大きい声を出すみたいにしてこっちへとまっすぐに話し出したと思ったら、勢いよく顔をこっちへと向けてきて。髪の毛もそれに合わせるように持ち上がったと思ったら、少しだけそこから距離を取るみたいに肩を横へとスライドさせるみたいにしてから目線を斜め下へと向けるみたいにした。
それから、向こうがこっちに謝ると一緒にまたそっちに視線を向けると、こっちは同時に上瞼を持ち上げるみたいにして。そのままそっちをじっと見てたら向こうもそれに気づいたみたいにしたらすぐに私も視線を元に戻す。
「あぁ、あいつ、ほんと腹立つよね。私もさ、めっちゃ嫌い。木月さんもそうでしょ?」
口を横に広げて歯を見せているその声に対して、こっちも鼻からわずかな息を吐きながら顔をそっちへと向けたままに斜め下を見るようにしている私。鼠径部に乗っけてた手を親指の横辺りを重ねるみたいにしている姿勢から両方の指同士をくっつけるみたいにしてみたら、両方の肘がそれぞれの方向へと広がるせいで上半身とそれが触れ合っている部分が少なくなった。
それから少しだけ口を開けたままに息を吸い込んでいる私に対して、向こうはもう一度少し高めの声で「でしょ?」って同意を求めてきてて。それを聞いた途端、少しだけ視線を落っことしながらそっちを見てたら杏がまたしゃがんだままそこにいる姿が見えて、背筋をまっすぐにするみたいにしそうになったけれど、それに対してもそっちは全く動かなくて。その様子を数秒間眺めてたら、唇を押し込むことでその中身を一度飲み込むみたいにしてから、広げた肩をまた締め付けるみたいにして体を小さくする。
「まぁ、それは、そうだけど」
言葉を切るたびに雨がずっと落っこち続けている音を感じるみたいにしているのに対して、星田さんは何もしてくることがなくて。それを見ながらも少しずつ言葉を発していってるのに対して、それが終わったタイミングで向こうは目を細めながら何度もゆっくりと頭を頷くように動かし続けてた。
そして、それから楽しそうに語尾を上へと持ち上げるみたいにして話をした向こうに対して私は足の間に手を入れるみたいにしているけれど、指の腹を甲の出っ張ったところにこすりつけるみたいにして何度も動かし続けてた。
「だからさ、こういう時は、自分のこと、最優先に考えた方がいんじゃないかなって、それを伝えに来たの」
一度声をおっきくするみたいにして最初の声を出したら、そのままそれと同じタイミングで両方の手に力を込めながら立ち上がるその姿を首を上へと向けるみたいにしていて。でもまっすぐに立ち上がったら私と同じ向きへと体を向けたままにしていたと思ったらまだ話を続けてて、それがまた途中で切れたと思ったタイミングで、私の方を首と腰を使って振り返ってた。
それから私は自分の体を見るみたいな角度に視線を持っていくと、少しだけ猫背になりながらそっちの視線を味わい続ける。その間も、息を鼻から吸い込むみたいな音を何度も立て続けてて。その間も上瞼がわずかに震える感覚と手の平をベッドの縁の上に乗っけたままにしていると、その細長い円みたいな感覚が私に対して痛みを味合わせてきて。顎を上へと押し込むみたいになってしまう。
「それは……」
何とかほんの少しだけ開けた口から出た声を出した後、視線を床へと向けるみたいに斜め下へと逸らしてるけど、周囲からは空気が動くことも感じなくて。でも、星田さんの少しだけ上半身を前へと持っていくみたいにしている姿を見ようとしたけど、それからかすんでいるままに杏の姿を見る。
今も眠ったままみたいになっている杏の姿。それに対して私は脇を締めるみたいにしながら肩を大きく持ち上げて、それから音を立てながら鼻から息を吸い込むとともに顔も一緒に動き続けるのを感じて。それのせいでだんだんと瞼が落っこちてしまうのを感じていると、下の歯を上へと押し込むみたいにしてた。
でも、それから一気に顔のパーツ全体を持ち上げるみたいにして息を吸い込んだのに対して、そのまま体を立ち上がらせてから両方の腕に強く力を込めた状態でまっすぐに下へと落っことしていると、その下にある両方のこぶしを強く握りしめてた。
「帰れ! 帰れよ!」
そのまま体をまっすぐ下に落っことしたままにして大きな声を出し続ける。喉を傷めるくらい、部屋全体へと響き渡るのを感じながら一瞬だけ持ち上げた腕を一気に落っことすみたいな勢いで腕を握り締めた。
それに対して星田さんはすぐに軽く謝るみたいにしながら両方の手の平をこっちへと向けるみたいにしながら一歩ずつ下がっていってて。それから部屋のドアを閉めている間だんだんとこっちに背中を向けてるみたいにしている姿を眺めながらいるのに対して、こっちは何度も繰り返し肩で息をするみたいに繰り返していた。
数回それを繰り返した後、強くため息を吐くみたいにして。それから肩を落っことした私は顔も下へと向けて、そのまま数秒間周囲の冷たい空気を味わい続けるのに対して、それから視線をあげつつ息を強く吸い込むみたいにして顔を上げてから。すぐに体を前のめりにしながらそっちに近づいていくと、すぐに上半身を体の上に乗っけるみたいにして。そっちの肩の少しだけ上から自分の腕を回して抱くみたいにする。
「……杏。ごめん」
震えるようにしながらいつも以上に高い声が出ている私に対して、杏は目を開けながらわずかに顔を起こす。まっすぐに視線を向けたままにしていたのを数秒間だけ見つめるみたいに私がして。それから、息をできないほどに喉に力を強く籠めている私は杏の肩へとおでこを当てた。
読了ありがとうございます。




