第88話
杏を先に入らせてから私もそっちに入ろうとしたけれど、その途端にそっちの背中と私の体がぶつかりそうになってしまい、それから両方の手を前に出すみたいにするようにして向こうの体を押すと、ほとんど体に力をかけてないのにそっちからどんどん前のめりになっていくみたいに倒れていきそうになって。
こっちも息を吸い込みながらその体へとすぐに寄るみたいな体の動きをした後に反射的にそっちへと腕で倒れるのを止めるみたいにしたけど、それに対して向こうの落っこちてくる体重に勝てずにそのまま両方の手のひらを引っ張られて床へと落っこちてしまった。
杏の体重に指が押しつぶされてるのを痛みで気づいて、息もできないで何度もそこを引っ張るみたいに動かし続けてるけど、それに対して向こうはただただそこへと寝そべるみたいになってるだけで、それに対して私が腕を引っ張るみたいに動かしてるけど、向こうは一切動こうとしない。
それはこっちの喉から何とか無理やり出したみたいな声が出てその名前を呼ぶけれど、向こうは一切動こうとはしなくて、その後にどくように言ってから、腕を立ててからそこに力を入れて、まっすぐに立てることで上半身を浮かした。
それから、こっちが腕をひっこめて何度も手首を使って挟まれていた個所を振るうようにしているのに対して、何度も呼吸を口から吸ったり吐いたりを繰り返す。でもそこがじんじんする痛みが消えることがなくて、でもそれにさせてた動きをやめると、ベッドの下から一段目の縁にお尻を当てるようにしてから両方の膝に肘を乗っけながらつぶされてた指をもう片方ので包むみたいにしてからおでこの体重を乗っけるみたいにすると、その重みでそこが斜めに傾いてた。
そのままただただ呼吸を吸ったり吐いたりを繰り返していると、鼻が何度も吸うたびに震えるのを強く感じる。一方で、自分の目を開けたタイミングで杏がただただ上半身を腕で支えるだけの姿勢をしていたのに気づいた。
「杏、頼むから、立ってくれ……」
その言葉を目を瞑りながら言うと、機械が動く音がこっち側にも聞こえさせながらその体を立ち上がらせて、それから顔も体もまっすぐに窓の方を見つめていて、ただただその場にいるだけにしているのを見ていたら、その場で強く握りしめた手を何度も叩きつけるようにしてから息を大きく吐き出した。
「もういい加減にしてくれよ!」
そのまま膝の上で振動が揺れるのを感じた膝の上に両方のこぶしを乗っけたままにしている私に対して、髪の毛が落っこちてきているのを感じたままに両方の手を握り締めて何度も肩で息を繰り返す。
でも、それに対して周囲からはそれ以外の音はほとんどしなくて、唯一聞こえているのはドアの向こうからする施設で過ごしてるほかの生徒が話している黄色い声だけ。わずかに視線を開けた私の周りは月の明かりで青くなった周囲の様子を見せている。
一方で、私の視界の前にはもう自分のじゃない影が出来上がっている姿が見えていて、それを追うように顔を持ち上げたら、見えてきたのはただ杏がこっちを見下ろすように立っているだけ。そっちへとすぐに息を吸ってから膝を前へと滑らせるみたいにして抱き着くとともに私の体にこもってた勢いが向こうの膝に吸い込まれるのを感じた。
「ごめん……ごめん……杏……」
何度も喉を動かし続ける私に対して、杏はただただまっすぐに立っているのを足が全く動かないので私も感じ取るけど、でもそれでも私はその膝の少し下の辺りで両方の腕を後ろまで回してから肘に手の平を当てたままの状態にしてて、さらに正面におでこをこすりつけるみたいにする。
でも、その動きも数秒に一回その向きを変えるみたいな感じでかなりゆっくりのままにしてるけど、でも、周囲ではいまだわずかに開けた目の中で薄い黒と青が交じり合っているような光が薄く見えているだけだった。
その一方で、外からは未だに誰かが話していたり駆けている足音も聞こえていて、私がずっと杏の膝に膝立ちの状態で抱き着いている間にも、小走りでドアの前の廊下を通り過ぎていく高い音が聞こえてきていた。それに対して私は顔から小刻みに震えたままにわずかな息の音を立てるくらいしかできることはない。
でも、そう思ってたタイミングで、その暗い部屋の中にわずかな白い光が床を照らしているように感じて、顔を持ち上げると私のうさ耳パーカーの生地の中からそれが漏れてる。
それから息を一旦吸い込む音を立てながら体を持ち上げるようにするけど、杏は一切それに対して動こうとしない。私は息をもう一度歯をほんのわずかだけ隙間を開けた状態で吸い込んでから、右手で取り出したスマホをそれぞれの側面に手を沿えるような形で私の顔の前に出すようにする。
その一方で、そこに表示されている病院で面会した時に撮ったハリーと世古島のツーショットは、前者が肘を立てた状態で親指から中指までを伸ばして目を大きく開いているのに対して、後者はわずかに口をほころばせながらただ肩を抱かれている。そんな姿を見せながらただただスマホが揺れてたら、それに対して私は何度も目を瞑ったり開けたりするのを繰り返している一方で、そこが霞んだままなのは変わらなくて、強く息を吐いてから一旦脇にそれを挟んでから顔を平でたたき続けた。
「腰抜け、今、大丈夫か?」
指を曲げるくらい強く力を込めてスライドさせて電話に出たのに対して、最初はかすかに聞こえるくらいの音がしたのに気づいてから、スピーカーモードに変える。
それから杏へと手でついてくるように指示してから部屋の角にくっついて体を寄せるみたいな形で体育座りをする私に対して、向こうはこっちにまだ人間の肌が残ったままになっている方の腕を寄せるようにしてこっちに近づいてた。
瞼を少しだけ落っことすみたいにしたままにしている私に対して、杏のほうを見ると、その顔もわずかに灯りに照らされているのに気づいて、頬を落っことすみたいな感覚を味わい続けた。
「つなげてても、いいか……?」
わずかな言葉になってない声を出しているハリーの声を聞いてから出たそのゆっくりとした声から、さらにだんだんと消え入るようにしているそれを感じている私。
それに対して、だんだんと肘を落っことすことで自分の体に沿わせるみたいにしている。一方で、それが消えてなくなると向こうからもハリー声がしなくなって、それに対して目をわずかに開けながらスマホを強く握りしめると、細かい音が確かな質をもって何度も出るけど、それを数回繰り返してから一旦ため息をつくみたいに持ち上がった背中を曲げた。
「ごめんハリー、私……」
その何とか出した声が終わるよりも先に目線が横に逸れて。それとともに、スマホの画面の上に乗っけるみたいにした指も下がっていく。
しかし、そっち側にはバックライトでわずかに照らされている青色の光を浴びている壁しかなくて、そこからさらに視線をずらすけど、そっちにはただただ私の影になっているせいで暗くなっている場所しかない。
でも、そこから正面の床へと目線を反らすと、そこでもわずかに漏れているバックライトがそこを照らしているのが見えて、それに吸われるみたいに視線をまっすぐに戻す。
「あたしは先輩だろ?」
それとほぼほぼ同じタイミングで聞こえてきたその声と一緒に、今まで映ってたハリーと世古島の静止画が消えて画面が真っ暗になって。その途端に何回かそこをタップしたと思ったら、荒い画質のせいで四角くモザイクが見えているような感覚すらする向こうの部屋が配信されてる光景を見ることになる。
けど、その中でゆっくりとハリーの顔が上半分だけ見えている状態のまま片手を振っている様子を見たら、口の中の空気が一気に出るみたいな音が出てしまったのに気づいて口元に手を当てるけど、それに対してハリーが頭文字を上げながらこっちを軽く注意するみたいな言葉を出してた。
「あの……」
私の声もハリーの声もなくなったところで、私は数回口を動かしながら視線を左右へと向ける私に対して机の上に肘をつくみたいにしているハリーはゆっくりと鼻から息を出すようにしてる。その一方で、こっちは目線を右側の壁がある方へと向けたままにしていると、膝同士がスマホを持っていない腕のせいで一瞬だけこすれるのを感じて。
しばらくそのままでいようとしたけれど、ハリーが一回すぐに終わる声を出してきたのに気づいてから、その音が少しだけ音割れしているのを感じた後に数回完全に閉じないみたいな瞬きを繰り返してから顔をそっちに向けたままに視線だけをスマホへと向けた状態でそっちを見てた。
「ハリーは、知ってるのか」
最初は少し消えそうになってるような声を出したけど、それに気づいた途端次は少し大きめな声を出すみたいに最初の言葉を出して、でもそれが少し大きすぎるように感じたからまた調整するみたいにする。
その一方で、ハリーはスマホの向こうで口を閉じたままにわずかな低い言葉を出す。でも、それで肘を机に当ててる場所を変えてるだけで、それからはただただ体の少し横の辺りに置いてるスマホへと顔と目を落っことしているみたいにこっちを見ているだけだった。
それに気づいてから私は体育座りはそのままに、スマホを持ってない方の手を一回頬へとつけてそこを持ち上げるのを数回繰り返しながら一度目を強く瞑って、それから横に向けた状態で目の上から順番に顔をなでてからもう一度ハリーの方を見た。
「あいつのこと……」
だんだんと消えるような声を出しながら目線を下へと向けている私に対して、ハリーは小さく「なんなんだよ」っていってから口を横へと開けながら上瞼を少しだけ下ろしてて、目線をスマホから向こうの真下へと変えてて。
それを見た私は軽く顔を動かさないままに軽く謝ってから顔と背中から元に戻してから、スマホを持った腕を膝の前に乗っけるみたいにしてそれからお尻の位置を整えるみたいに一旦持ち上げた。
その後、下唇を使ってその両端にえくぼを作りながら数回瞬きを繰り返して、もう一度ハリーの方を見ると、そっちは目線を斜め上に向けて意味のない言葉を出す。その一方で、私も一度だけ鼻から息を出すのと一緒に一瞬だけ笑うみたいな声を出しながら口を開いた。
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