第79話
「あっ、すみません、僕心愛さんの……同居人なんです」
そのゆっくりと出てたけどそれ以上に言葉の一つ一つ出していくみたいにしながら、目線を左右に揺らして胸元に片手を当てつつこっちに向けて歩いてくるその男子の言葉を聞いた途端、私は考えるよりも先に何の意味もない声を出してしまって。それと同じような感じでハリーの方へと視線を向ける。でも、それに対して向こうは小さく舌打ちしながらもずっとそのままの姿勢でいるだけ。
それに気づいてからもう一度男子のほうに視線を戻すと右腕を曲げた状態のままそのひじを体に添える状態で一歩だけこっちに向けて歩いてきててそれで体の位置は変えないままに遅れてたほうを先に追いつかせるだけ進めてた。
それからもう片方の手を外側へと少しだけ広げるみたいにしてて、それと一緒に息を吐いてるその姿。その人が制服も汚れも全くないしベルトも腰骨に乗っけるあたりにズボンをはいているし、ブレザーもネクタイもまっすぐにしているのに気づくと、私は眉毛を少しだけ持ち上げるようにしたまま顎を上へと持ち上げることで息を吸い込むみたいにした。
「もしかして、腰抜け、さん?」
そのまま顔のパーツを動かさないでいると、それに対して最初の言葉は普通に言ってきたのにそのあとは最初の言葉もかすれてちょっとずつ頭の言葉を言ってから話してきてて。それと一緒に背中を曲げて体をほんの少しだけ前のめりにしてきてたら、まっすぐに立ってる私は息を飲むみたいにそこを動かして、それからわずかに口をあけながら一歩後ろに下がる。
それから、両方の手を胸元の前に持ってきながら指を下に向けた状態でいたままにハリーのほうを見るけど、それに対して向こうは全く同じまま。
それを見てたらまた体の角度をまっすぐに戻しながら口を横に広げて、私よりも高い背についてる肩から伸びた腕をこっちに向けて伸ばしてきてて。それに対してこっちはわずかな声を出しながら視線を杏がいるほうにそらす。でも、杏はずっと同じ姿勢のままだった。
「心愛さんから話は聞いてます。僕は志太陽」
さっきとは違って今度は地声で話すようにしながら言葉が終わるとともに鼻から息を吐いている音が聞こえてきて、そっちに視線を向けるとそのニキビも肌のあれもほとんどないケアがしっかりしてる様子をこっちに見せてきてて。それから目をぱっちりと開けてた。さらに、私が首を上にあげてそっちを見ている間、目線が合うのはもちろんのこと視界の端のほうにいる右手もそのまま動く気配はない。
その一方で視線をそっちへと戻すと、私もそれの少し下のあたりで手を少しだけ下に向けるみたいにしたまま両方の指の隙間をわずかに開けた状態で広げてた。それを見てる間、唇を重ねたままに上下に動かし続けてると私は眉を落っことすみたいにしてて。頭の中が動いた途端にそれから、急に視線を上げると、志太さんの左後ろにいるハリーが目線を横の下のほうへと向けるみたいにしたまま両方の手を握り締めるみたいになってる。
「私は……」
首を上げながら後ろに近づくにつれて言葉を大きくするみたいにして話し出した私だけど、それに対して志太さんはわずかに声を出す一方で、目も開けながら視線をこっちに向けてきてた。
一方で私はわずかな声を出しながら上の唇を下のに押し付けるみたいにしていると、鼻から息を漏らしながら少しだけ肩を後ろに持っていく。それから私たちの足元を確認したらそっちにはパソコンから出来上がってる光でハリーの体から伸びてきてる影が志太さんの足元に肩のところまで来てる一方でそこから先はその人のが私の元まで届いてて。そっちから視線を逸らすけど杏の影は見えない。
そんな姿が緑色の壁や床の色の中に見えているのに気づいたら、それから視線を上へと向ける。それから、のどを開くように1回だけ口を開けてから心の中で小さく声を出してて、今度は手を志太さんのの上にいったん回り込ませるみたいに動かしてから口を横に広げるために閉じてから声を出した。
「魔女、ルナティック」
それからできるだけ魔法が出ないくらいの力を込めて手を握る私に対して向こうも手に力を込めて握り返してきてて。お互いがそうしてるせいか両方の腕が上下に動き続けてた。それから、単語1つ1つが終わりそうになるたびに持ち上げるみたいな声を出してたこっちに対して、志太さんは顔を横に逸らしながら笑うみたいに息を吐いてて。
それを見てからすぐにハリーのほうへと顔の角度だけを少しだけずらしてを視線を向けたら、そっちは口を小さくしながら鼻の下を少しだけ伸ばしてて、頬のあたりに自分の軽く握ったこぶしをこすりつけるみたいにしてたらそこがへこんでくみたいになってて、それを見てるだけでも私も頬を持ち上げたままに視線をそっちに合わせる。
「心愛さん、けっこう無口で……」
少しだけ愛想笑いをするみたいな表情と声色をして話してる向こうの様子に視線を戻すけど、それと一緒に目も細めてる。その様子を見てから私は自分の肩を横へと少しだけずらしてからハリーの方に小走りで近づいていくと、そっちもこっちに視線を向けてきたのに続くように体の向きを変えて。それから、目尻と口の左右を落っことすようにしてた。
「あっ、誰か来た、こんばんはシャドです。今日は雑談枠ですね、特にやることは何も決めてないですけど、ちょっとこの前の配信の切り抜きを作りながら、だらだらとね」
スマホの縦長の画面の中でも下3分の1くらいを覆う位置に顔の目と額とそのままになっている天然パーマを見せたままにしているシャドは、斜めに立てるようにしているスマホのインカメラに対して顎を向けるみたいな角度から自分の目線を下へと落っことしている。それに対してバックライトがその顔を照らしているせいで、そこのパーツによってそれが入らなくなっている黒い影が目立っていた。
さらに、部屋の中にある灯りがすべて消されているせいで、眼鏡の奥にある目は見えなくなってしまっている。今もスマホを操作しているのか、爪が画面を叩く音が聞こえてきていた。
「今ベッドの上です。さっきまで寝てたんですよね、なんで、まだ目も半開きくらいな感じです」
そういいながら眼鏡を1回上にあげてから目やにをこすって取っている。本人が見ていない一方で次から次へとあいさつをするコメントが下から上に流れ続けて前に出ていたものを流し続けていた。それに対して、シャドは体を伸ばしながらそれと一緒に普段と比べて低い声を出していると同じタイミングで自然と眼鏡が落っこちてきているものの、それは目から比べてわずかに離れた場所にいた。
「はぁ、私も何かチャンスがあればなぁ有名人に見つけてもらえて宣伝していくのがいいと思うんですよね、オフ会とかやればだれか来てくれるのかな。あっ、この前の配信のアーカイブ見ました? ありがとうございますぅ! あれ最高ですよね! あーうんこおまんこって!」
馬鹿にしたような普段以上に声の高い演技じみた声を出すとともに、自分の腹を抱えるようにして笑っている。それのせいで手に持っていたスマホが明後日のほうを向くせいかただただ暗闇の何も見えていない場所しか配信には映っていない。その一方で、シャドの喉を何度も震わせながらずっと同じ音を出し続けるような、音割れがしているほどの大きい音を部屋中に響いていた。
「あれからどうなりましたか、いや知りませんけど、たぶんそのまま誰かが見つけて紐ほどくなりなんなりしたんじゃないんですか? いやでもほんと面白くない? なに? あーうんこおまんこ! って! うんこなのかおまんこなのか!」
そういいながらまた大きく体を反りながら音割れをするほどの大声で笑うシャドに対して、コメント欄は一切動いてはいない。周囲の暗い部屋の誰もいない中で相変わらずの演技声で何度も同じ言葉を言いながら1人で笑い続けていた。その隙間には息をするか、何度も「面白い」と言い続けているのみ。
「サナサナさんいらっしゃい。あっ、安心してください、DMは見ました。ちょっと今情報収集中なのでいつになるかまだ分かりませんけど、ちゃんと正義は執行しますから。いやでもさ、ほんと! あいつがうんこおまんこです! って言ってたところ! ほんとめちゃくちゃおもしろーい! それから、ぶっ殺してやるぞ! って! いやーめっちゃ笑えない?」
その言葉とともに、またベッドに何度も手の平を叩きつけながら息を強く吐き出してて、その隙間からわずかな笑いをそれと同じような勢いでし続けている。それに対して、コメント欄には配信者のことを褒めたたえるようなコメントが次から次へと流れ続けていた。
「DM見せて、サナサナさんさえよければ、私は大丈夫ですけど。あっ、オッケー?ありがとうございます! えーっと、こんばんはシャドさん、私は精神障碍者手帳2級を持っている都内の中学校1年です。昔私のことを仲間外れにして無視までしてきた花笠心愛が最近学校に戻ってきました。今は何もしてきませんがいつ何がまた起きるかと思うと怖くて怖くて授業もろくに聞けません」
今までの大きな笑い声とは異なるまっすぐにしゃべる声を、一度喉を鳴らすようにしてから話しかけ続けるシャドに対して、DMを読み進めていく途中からコメント欄はハリーのことを非難する投稿がアニメのアイコンとともに次から次へと流れ続けていた。
読了ありがとうございます。




