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Lunatic  作者: コンテナ店子
第一部前編
7/216

第7話

 奴らの中の女が見ているスマホに視線を向けながら男たちも歩いてる姿を追った後、近くにあった椅子の上を目指しながら、机の上にあった服を掴む。近くにあった並んでない家具たちを避けながら床の上を擦らせていき、光がほとんど届いていない上に唯一のドアから死角になるそこに足も上に乗せるようにして座る。そしてそのまま腕と膝の間に顔を押し込むよその間に私の綺麗な服が入り込んできた。


 灰色のスカートの硬い生地の中に覆われていると、その中に湿気がどんどん吸い込まれていくのが肌の体温を奪おうとしてくる様子でわかる。ほとんど外のコンクリと色が変わらないその中で、私の首から下はだんだんと上下を大きくしていって最終的には音でわかるほどなっていた。その一方で、両手の中から零れ落ちていたフードは椅子の足を隠していてこっちの体には一切触れていない。


 声が途切れた瞬間に何度も口で何度も深呼吸を繰り返すが、吸い込もうとするたびにうまくいかずに喉が高い音を鳴らす。それを三回ほど繰り返して、口から息を少しづつ吐いて体にこもってた力を抜いて行った。だが、スカートのプリーツは何度も体を擦った。


 服を体にひっかけてなんとか曲がりながらもドアまでたどり着くと、ようやく着替え終わったのねと聞かれたが、自分の体をコンクリに押し付けるようにしてそっちの方に視線を向ける。そこに広がっていた頬を押し付けても全く動くことのない細かい黒や白の点。それらが冷たい塗装の中にいた。


 女性を前に、後ろに男性二人の状態にしばらく歩いていると三角のでっぱりがこっちの方に向かって伸びた赤色の金網が、指紋と目の認証とパスワードで鍵のかかったドアを開けた先にあった。そこについてた南京錠を開けて、何度も切り替わってる無数のモニターの前で一人の男が下敷きで扇ぎながら座り込んでいる姿を横目に通路を歩いて行く。そうしようと思ったが、進んでく先にある金網が大きな音を立てて揺れていたのがこっちの方にも聞こえてきて目が大きく開きそうになったが、後ろから足音と風が動く音がしてすぐに背筋をまっすぐにしながら早歩きで進んだ。そうすると、すぐに前にいる女の人に向けてぶつかりそうになって少しペースを落としながら、何度も音がしてる方へフードを引っ張りながら下を向く。


「何度も言わなきゃわかんねぇのか」


 笑い声混じりの太い声。首の動きに合わせて瞼も閉じかける。全方位から降り注ぐような声たちに押しつぶされそうになるせいで足の動きが遅くなりそう。鼻をすするように動かすと同時に脇を締めて両方の肘に手を添えると同時に曲がり始める背筋。その勢いのままに膝まで力が失われそうだった。


 二回目の金網に着いた南京錠の黒い鍵穴に銀色の鍵が近づくにつれだんだん影になっている部分が減っていく。一瞬だけ穴の外でわずかに引っかかったがすぐに中へと入り、私の視線は後ろの方へと移動する。だが、そこにいた二人はにやにやしているだけで何の変化もなかった。肘を握ってた両手を押し込もうとしたけど、手の平が痛くなっただけだった。




 ようやく体から熱さが離れたのは、思い切り床に体を押し付けられて正座させられてしばらくしてからだった。座ってるはずなのに肩と顎はずっと持ち上がってて喉から出る息は途切れ途切れで。周囲にある牢屋のそこから出て来る目や手と私の視線がぶつかるたびに私のが膝元に戻っててわかるのはさっきよりも汚れや染みが目立ったが割れやヒビは一切見えないコンクリだけだった。


 周囲を見ている間に正面に座ってる背の高い女性がめちゃくちゃな方向に伸びた髪の毛を掻き分けながら少し高くなっている場所に座り込む。たぶん見たことない制服を着た中学生の女性。大きく開いた膝の上に両手を置き、じっとこっちの方を見ている姿は、上目遣いでも見わかった。そして、気付けばいつの間にかずっと盛り上がってた周囲にいた人たちは黙りこくっていた。


「おい!」


「ひゃい!」


 離れた場所にも聞こえるようにと出した大きめの声と共に目を正面に向けると、向こうは両方の膝に手を添えつつ力を込めて座り込んでいた。そのせいで足が結構開いてるのに、ここにいる女性の中でも一番スカートが長い上に横にも自由が利くみたいで足はほとんど隠れてた。


 茶色の髪の毛の奥からこっちの方をまっすぐに見ているのに一切動かない。周囲に視線を確認したくなるけど、それなのに向こうの人が全く動かないせいで目は動いてるはずなのに視界が動いていてなかった。


「ホントにこいつなのか?」


「むしろ説得力がないっすか」


「だからだ」


 私よりも女性に近い方にいた女の人が、ポケットに手を突っ込んだまま呼びかけに答えるように集団の中から一歩前に出る。そっちの人はあごをこっちの方に向けながら大股に歩いているその様子を私はほとんど見たことがなくて、すぐに視界の隅でかすんでる辺りを増やした。私の前にその二人が揃った辺りで両足の間にある隙間を埋めるように揺らし、それを諫めるように拳に力を込める。


「でも、ホントに間違えないっすよ」


「おいお前」


「えっと……私、は……」


「魔法使いなのか」


 頭を一気に上げたが、女性の髪の毛の中で目はぱっちりと開いてたし履いてる上履きも後ろが潰れていた。その一方で服はどっちもそんなに汚れてなくて手にも怪我とか絆創膏もない。それに、どっちも完全に手ぶらだった。


「おいお前! 姉御の言うことが聞こえなかったんか!」


「いっ、いえ! あのあのあの……!」


 いつもの倍くらい一気に話したせいで息も上がったし、それと同時に膝の上で縛っておいたはずの手の指すらもそこから解けてて、胸の前辺りで何度も無意味に動かしてた。落ち着かせようにも止めようとしたらなぜか上の方に行って腕で顔を隠すようになる。


「ビビる必要なんかないだろ。あたしはただの一般人だよ」


 ポケットから出した両手を下に向けて広げながらクルクルと私の前で何度も回っているその姿を見ていると、私の頭が下がってそれと一緒に白い髪の毛も降りてくる。上からの黒いそれは少し癖が出て来てるせいでまっすぐに伸びている物もあれば横に飛んでってたりしてたがどれも同じ重さだった。


「いいか。ここにいる限り姉御の言うことは絶対だ。大人しく言うこと聞いといたほうが身のためだと思うぜ?」


「……魔法使い舐めんなよ。黙ってな」


 私の目の前で同じくらいの高さになるように座り込んでた女性が振り返ったと同時に、後ろにいた姉御の人が首を動かすだけで合図してたくさんの人たちの方に下がらせてた。それが終わると鼻の頭辺りを掻くようにしながらそれ以外の体の部位を静止させる。それに対して、こっちはわずかに口の中で音もなく空気が動いて行くのが感じられるだけだった。


 と思ったその瞬間、私の頭に五本の指で押しつぶされる痛みが一気に襲って来て、そこから逃げるように目元にいくつもの筋を作る。頭がそれならばと考えたのか手をその力の方に持って行こうとするけど、そのわずかに生えた毛に触れた瞬間手が跳ねるみたいに動いて、爪を立てるようにするがその対象は空気だった。


「ここはあのドローン女が作ったんだ」


「あいつ……」


 膝を床に擦りつけると、硬くて一切動きそうにないあのざらざら感がある。同じような形をしてた指から少しづつ力を抜きたいが、前の女性の力が強くなればなるほどに爪を引っ張っていくしかない。それに引っ掻かれたような言葉にならない声しか出なかった。


「話が早くて助かる」


「それなら……!」


「ジョーク言ってる場合か? あたしが怖いんだろ?」


 身長差を利用して私の体を頭に合わせた片手で持ち上げられて足が床から離れるが、そっちの方に向かって手足が伸びていくのに気づいて何度もばたつかせようとした。でも、空中を何度も行き来しているだけ。それでも辞めなかった。


「……そんなこと」


「あたしはあいつ同じ、用があるのはお前の力だけだ」


 言葉と共に投げ捨てられるように頭から手が離れて、地面におしりを叩きつけられるのと一緒に腕を着いてしまったのでその芯にまで振動が響いて行く。もちろん頭もそれは例外ではなくて、奥深くを刺激された感覚に背筋を曲げながら両手が膝の間で重なった。そして、その後すぐに前から聞こえて来た大きな音に膝同士を締め付けてしまう。スカートから伸びた足の火照った赤みに視線が集中していた。


「よし、わかったらもう面倒臭いことは抜きだ。アタシが見本見せてやる」


 腕をしならせるように払ってから両手の親指を握りしめるように一気に力を込めるが、その腕の太さは一切変化しない。その代わりにその両手を包むように現れた明るい水色の光。その二つが地面に落っこちると、それぞれが半円を描くように勝手に動くとその跡から上に向かって一気に水鉄砲のような勢いで細い線が飛び出すと上を目指しながらも絡み合い始め、後を追うように伸びて来たのも近くのまとまりに集まっていく。


 集まりが太くなっていくたびにねじれも入っていきそれが彼女の体に絡みつく姿は、白い制服に青い染みを作っていくようでそのまま服を貫通して体にも触れて行ったようだった。十数秒の時間をかけて体がすべてに光の糸が絡み合うとその光が急に強さを増し、私の顔は自分の体の方を向くことでそれを回避せざるを得ない。


 突風が起きてるかのような衝撃のせいで周囲からも大きな声が聞こえ始めた瞬間、光も風も勢いを失った。いつの間にか閉じてた目を擦ろうとしたけど、手首が太ももを擦った瞬間、すぐに元に戻した。


 その後すぐに頭の中で浮かぶこの前ネットで調べたドイツ語の単語を何度も指で足の内側に描き、それを目で追う。その動きに合わせて声を出す形に合わせて喉を動かし続けた。たまに途中で指や喉が止まりそうになったが、すぐに別の単語やサイトに切り替える。


「おい、何してる」


 女性にしては明らかに低いのに私の方まで一切止まらずに聞こえて来るその音に一気に首を引っ張られて、正面の方を見てみると、角ばった上に白に近い色をしたコンクリを背景に青色とその中に入れた黒と赤が混じり合ったような色の布地が見える制服姿をしたさっきの女性はいた。ヒビも何もない真っ直ぐな床の上に立っているサンダルが守っているのはほとんど指の付け根だけだし、光が消えてから全く動いてなかったのに大きく破けてたスカートからは歩くたびに左足が見えている。


 服装以外は以前と変わりはない様子の両腕を動かしながらスピードを変えずに進んでくる姿に両手と両足を動かさなきゃと思いながらも、指が少し動いた先を見るとそこには黒くまっすぐに伸びた影があった。


「お前もやってみろ」


 指を滑らせて広げていた手に力を込めればわずかにそれが後ろに動く。もちろんそこでも足音が響いてくる振動から逃れることは出来なかった。伸びた爪をひっかけるように動かすとどんどん増していく内側が熱くなっていく感覚。そっちの方を見ると、爪の中に白さはどこにもない。


 瞼の位置は動かさずに首だけを動かすと薄目でも見えるさっきの人が歩いてくる様子。そのちらちらと見える中の生地。そこから視線を周囲にずらすと私たちの方をまっすぐと見てくる無数の目が見え、その奥の牢屋からは赤いネオン管の光が溢れていた。


 人々が作る円から降り注がれる視線と目が合うたびに瞑りそうになるし、彼らの声の一つ一つがちゃんと中身まで拾える。背筋が曲がるがそっちの方には何もない。


 自分の制服姿を見るように私の体を確認した瞬間、おでこの前に合った短くまとめられた髪の毛が揺れた。


「……いやだ」


 息を肩でせざるおえないほどに疲れたが、敵に向かって溜めに溜めた勢いのままに言い放った。両手を正座した膝に合わせながら前の方を確認すると、さっきよりももっと早くこっちの方に女の人が迫って来てた。慌てて体を回転させて走り出そうとしたが、腕のバランスを崩してそのままうつ伏せになる。


「もう一回言ってみな」


「えっそっ、それは……」


「もう一回言ってみろ!」


 目を瞑って思い切り力を込めるも奥から瞼を押されるような感覚にそのまま閉じ続けざるを終えなくなった。そうしながら聞く口から溢れるいつもよりも全然高い呼吸音。首を曲げて顔を上に向けてみても目じりが下がってるせいで元に戻そうとした。でも、思ってた以上の勢いで首を引っ張られて、一回体の方に拳をぶつけられたせいで目からはもちろん口からもあふれ出た。その痛みに手を抑えようとしたが、首根っこを掴んだ、管が取り付けられた手甲が腕に取り付けられてるのが目に入る。


「もう一回言ってみろって言ったんだ」


「ご、ごめんな、さい……」


「どうだ⁉ これでも同じことが言えるか⁉」


「違う違う!」


 私の大声で周囲が一瞬で静まり返ったのと同時に背筋から順番に体の熱さが一気に抜けて行って、手が離れた首を使って周囲を何度も見渡すが、動いている物は他になかった。そのせいか体の中の心臓の音が自分の耳にも聞こえて来るみたいで、首に触れた手が滑ってそのままの後ろに回ってフードを前に持って行こうとしたが、それが前髪に触れようとした瞬間、顔を滑っていく汗が指に触れる。そこで動きを止めた水滴を見つめると、透明で歪みもほとんどなく向こう側を映していた。それを目と同じ高さに持ってきたらいつの間にかフードも頭の上を滑って元の私が歩かされてた道の方に戻ってた。


「じゃあ、覚悟は出来たな」


 目の前の女性が座り込んでる私の方に向けて黄色い光を吸い込んでた太いバズーカを構えてる。もう私の体は動かない。チャージする音に比例して早くなりそうな息の音を聞いて、手と体を強張らせた。



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