第68話
「……私らしく、東雲アニタを、倒します」
その言葉をゆっくりと目の前にいる倉敷さんと女性に伝えた後、私は少しずつ肩を落としていくようにする。それと共に、鼻から息を吐いていくと、前者の方が壁へと向けていた体をこっちへと回すようにしてきたのを見てから、それに対してすぐに受け取ったパッドを操作。すぐに白と紺色と黄色で作られているアマプラの画面に辿り着いた。
それからもう一度首ごと視線を正面へと向けると、倉敷さんと女性が私の上から画面をのぞき込むようにしているのを見たあと、2人とも顔の角度を変えて私の方を見て来る。いつもと表情を変えないその様子を見てから、顔をまっすぐに戻すと、また未だドアから音がしないのを見つめる。そして、それの先にある、遠くに伸びている通路がだんだんと光が消えて最終的には真っ黒になっていくのも視界に入って来た。
それに対して、倉敷さんも女性も中腰になっているお尻は私に対して斜めになっているせいか、どっちもその先にはまだ光に照らされている壁があるだけだ。そんな光景を見てもう一度口を紡ぐようにしてから、画面へと戻した。それと共に、スマホの重さをマントについているポケットのそれで感じ取ると、それを自分の足に押し付けるように肘を体へと押し付けた。
その姿勢のまま、目線をパッドへと戻して指をいつも以上に手早く動かしてテキストを入力。それから、画面の真ん中で輪っかが回転している間に呼吸が通らなくて少し苦しく感じているも胸がわずかに苦しくなるのを感じてると、表情もそれに合わせるように眉を落としてしまいそうだった。
「これです」
おでこが動いた直後に、パッドの画面に検索結果が一気に表示され、目的だったカイジ2のサムネをタップして少しだけ持ち上げるような位置で指を曲げている状態でいようとした物の、その数秒後にはまた再生ボタンが表示されて、待機していた指をそこへと一気に落とした。
その音を聞きながら、顔も肩も出来るだけ動かさないように心臓の辺りが空洞になる感覚を味わいながら呼吸を繰り返す。鼻から吸いこんで1秒開けてから吐き出すようにしていると、わずかに口が開いて。映画を再生する準備をパッドがしている間にその真っ黒な画面をただただ私は見つめ続けることになったけど、それで喉を締め付けるようにしていた間に、倉敷さんと女性が首を互いに向き合う様に動かしているのを空気で感じ取ると、私もそっちへと視線を動かそうとした途端に、2人の姿も画面へと入って来た。
その数秒後に再生が始まると共にシークバーに指を触れ、そこをゆっくりと、表示されているサムネを確認しながら進めて行こうとしている間、私の鼻から出ている冷たい空気が感じられるけど、それを吸っている間は他に何も感じることはないし、でも、指を離した途端に、一条が転がるパチンコ玉を見ている様子が画面に映ったのに気付いてから数秒間待って画面を止める。それから、2人の方へと視線を向けると、向こうもそれに気づいたようで私の方に顔を上げていた。
「ここ、みてください」
カイジと利根川が川辺で話しているシーン。それを映してるパッドを自分の胸の前に持ってくるようにして、それと共に歯で押し込んで自分の顎を下へと向けるようになることで、視線を上に向けるようにして見るようにする。
それに対して、倉敷さんは鼻の下に手を当てるようにしながら体を僅かに前へと向けているのを見ると、口の中の息を吸い込むことになって、そっち側じゃない倉敷さんの部下の人の方へと視線を向けるも、そっち側ではまっすぐに背中をのばしたままサングラスも床と垂直になるような位置で立てるようにしている。それを見ていると、私もまた口の中が苦しくなるのを感じるし、目線も下の方に行きそうになる。
でも、目を強く一度瞑って、ずっとカイジが沼を攻略するための方法を利根川に説明している声を聞きながら、もう一度パッドを強く握りしめて、目を強く開けてから口から数回息を吸ったり吐いたりを繰り返す。それから、視線を2人の方へと向けて喉で1回空気を吸い込むようにして、その瞬間に私をずっと支えてくれた人、みんなの事を思い浮かべた後に声を出した。
「東雲のドローンは必ずまっすぐに出てきます。だから、あいつにバレないように床を傾ければドローンのジャイロセンサーを狂わせられる」
最初はちゃんと声が出なくて、それで首を見せるように動いたものの、その後息を吐きながら言えるところまで早口で捲し立てるように出ていたけれど、その途中で倉敷さんの目を見た途端、口が止まりそうになって。でも、歯を一旦噛み締めてから片足を僅かに後ろへと下げるようにしそうになったけど、それに対して、私は体からできるだけ力を抜くようにしながら目を閉じて数回呼吸を繰り返した。
それから、少しだけ口元を開けてみるも、2人とも同じような姿勢のまま私の方をじっと見つめて来ていた。それに、私がそっちを交互に見るようにしているのもその間も動かない。それに気づくよりも、私の口がまた動き出す方が早かった。
「ジャイロセンサーは東雲に地面がまっすぐだと思わせればその通りに設定されるはずです。電気を破壊してやつに気づかれないように部屋を傾かせます」
パッドを強く、自分の胸に画面を向けるようにして掴むと、それと共にそこの冷たい感覚をジャンヌオルタの衣装越しに味わうけど、それのせいかだんだん私の体の体温が少しずつ下がっていくのを感じる。
それのせいもあってどこにも視界が向かないようになっていたのを、わずかに呼吸と共に何にもなってない声を出してた倉敷さんの方へと向けると、その顎のあたりに自分の指を当てながらそこで親指を等間隔のタイミングで動かしている姿を見ることに。そのまま唇でそこを呼吸がわずかに通り続けるのを感じて、胸元が膨らんだりしぼんだりを息に合わせて繰り返していた。
「あなたの電気で歪ませるつもりですか?」
「……私1人じゃ無理です」
倉敷さんの後半になるにつれてだんだんと強調していく所を増やしていく声を聞きながら、それと共に心臓がまた反応するのに気付き、すぐにまた相手に返すような言葉が出てきて。ある程度溜めたつもりだったのに、後から考えたらそれはほんの一瞬だった。それで出てた声は、本当に一瞬で消えるように話していた一方で、それがなくなると共に倉敷さんたちは静かになる。
そして、髪の毛を一気に持ち上げるようにしながら正面へと視線を向けると、そっちでわずかに髪の毛の影を見ながら肩を自分の側に寄せるように力を込めて、そのまま顎を体に寄せて前へと進み続けると、それと共に小刻みで足を出来るだけまっすぐにするようにして進めていくとその音も当然のように私の耳にも聞こえてきて、その振動が身体中に響きわたって来るのを感じながら、眉を落とすのを感じる。でも、それを数えていると思っていた次の瞬間には、私の目の前にまたあのドアがやって来て。それのせいで私が首を上へと向けるようなポーズになってその様子を見つめる。しかし、それに対して向こうからは何も音がしなくて、斜め後ろの辺りに2人がいるはずだけど、そっちからも一瞬だけ音がしたような気もしたけど、次の瞬間にはもうどこにも何も聞こえる物はなくなる。
それから、そのドアの重いノブに手を添えるだけにして、その尖った角の感覚を味わう。それと共に、眉に力が籠りそうになって、周囲の空気の冷たさを全体で感じそうだけど、それ以上に背中が一番強く身に沁みる。それのせいで、眉だけじゃなくて頬の方もそっちに近づけるように動かしそうになるけど、その瞬間に手元の方から音がしてすぐに肩を自分の頭の方へと近づけそうになる。ただ、それと共に、手をそこから一瞬だけ離すと、息を吸い込むようにしてしまっていて、すぐに足を強く締め付けるように動かしながらノブを強く押し込んだ。
部屋の中には壁に寄り掛からされているハリーが息を何度も口から繰り返し吐いている様子に対して、付き添っているコアラの姿と、その少しこっち側に近い辺りで話してたマナと世古島の姿があった。私の左斜め前で脂汗を額に浮かべているハリーが顔を上に向けながら視線をこっちに向けているし、それに寄り添っているコアラもしゃがんだまま数秒間そっちを見たままにしていたけれど、しばらくしてこっちに顔だけ使ってこっちを目を僅かに広げるようにしながら見て来る。
そして、こっちに近い位置にいる2人は上瞼を僅かに上へと動かすようにしつつ、腰の辺りから体を曲げてマナは顔を姉御の横から出してこっちに見せるようにしている。それに対して世古島は軽く両方の腕を組み合わせたままに顎を自分の体へと近づけるようにしている一方で、こっちには目線は向けてきてなかった。
そんなみんなの姿を見てたら呼吸と共に肩をゆっくりと動かし続けるこっちの動きに対して、向こうからは何も声はしない。私は髪の毛だけが顔の辺りを擦り続けるのを数秒間感じてから、呼吸を一気に吸い込む。でも、それに対して辺りでは何も音がしなくて、だんだんと肩を動かし続けるのがゆっくりになるのを感じながら、自分のポケットに入っているスマホをそれ越しに握りしめる。
「あの……!」
呼吸を吐き出すようにしながら両手を握りしめる私に対して、世古島以外の顔が一気にこっちに動いてくる。しかし、限界まで大きく出したつもりになってたその声は私が発した次の瞬間にはもう消えてなくなっていて、それどころか、最初の一言目だけは大きくなったものの、すぐにだんだんと小さくなっていった。
それを聞いてから数秒間、周囲が沈黙に包まれているのに気付いてから、だんだんと私は自身の頭の重さに体を従わせるみたいに、肩をちょっとずつ落としていく。それによって、どんどんそこに血が上っていくのも、もちろん感じるけど、でも、それに対して私は歯を噛み締めるようにするくらいしかしない。そう思ったけど、その次の瞬間には足から一気に力が抜けて、それでかかとが浮かんだ代わりに脛が床と触れ合うも、その上に私の体が乗っかってそのお尻の横で手が全く力の入っていない状態で親指をほんの少しだけ覆うように、関節が床と擦れあう。
「みんなの力を、貸して、ください……!」
頭をそのまま、つむじをみんなに向けたままに肩の辺りだけ猫背で土下座にならないようにしたままの姿勢でいる。さらに、最初の一言だけ発したのに対してそれが想像以上に高くなってしまった上、それが消えるタイミングでまたそれとおんなじくらいの大きさでまた言葉を続けようとする。それをしている間も、それが終わった後も、私は体を上下に軽く動かし続けてたけど、その間ずっと私は全部頭を下に向けたままにして。その中ではお腹にある東雲によって作られた大きな痣と火傷の跡、他に体重を乗せ過ぎてしまったせいで折れそうになってしまった腕、そのほかにも、ジャンヌオルタの衣装も私の背中を覆っているマントも、全部砂埃まみれになって色に茶色が混じり合っているのに気付いた。
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