第65話
「ハリー……よくやったな」
空気が消え入るような勢いの世古島の声が聞こえた途端に、それをかき消すくらいの足音が激しくしたと思いきや、その後マナとコアラがハリーの名前を呼び続ける声がする。しかし、そっちに視線を向けようとするも、私の体はほとんど動かなくて、通路がずっと繋がってる正面を見続けることしかできない。それに、視界はかなりかすんでいるせいで、周囲からは何も見えないままであった。
それから、もう一度さっきまで強く激しい言葉をぶつけてしまった部屋の中へと入ろうとドアノブを回そうとするも、それに対してその瞬間に私は体を止める。それと共に、ゆっくりと呼吸をしながら、顔のパーツから急に力が抜けていくのを感じ取ることになった。
その一方で、未だ私がいる周囲からは何も音がしないままで、その度に喉が苦しくなって、目じりが熱くなるのを感じる破目になる。でも、それでも私はドアに体を押し付けることしかできなかった。
「悪かった」
その一言だけがドアを挟んでいるせいで籠ったような形がしたせいで、私はまた一度なくなっていたのに顔に強い力を込めて息を吐く。でも、そうしたいのに、そこからそれがほとんど出ていく気配は感じられなくて。その間、ノブに乗っけてない方の手を胸元に押し込むくらいしか出来なかった。
「あねっ、姉御ぉ……あたしは、もう一度命捨てた身っすよ……」
ハリーのかすれる上に止まり続けるような声を聞いた途端に、私は足を何度も交差するかのように動かしながら斜め前に出ていくことになるけど、その進み具合は止まったり早くなったりを繰り返してて、左手を右肩に抑えるようにする数秒後のタイミングで体を傾けながらもう片方の壁の方へとぶつけることになり、そこの凸凹した塗装が刺さったせいでわずかな声が溢れてしまう。しかし、それに対して、体は無情にほぼ同じタイミングで体に強い痛みを訴えかけてきて、それのせいで口から唾液が溢れそうになった。
二重に来た痛みのせいで、私は目を強く閉じそうになるけど、それだけでなく、膝も同じように重力に従って落っこちて行くのを感じると、それと共に何度も苦しい呼吸を繰り返す。でも、それでも髪の毛を前に向けながらその奥の目を正面へと向けるようにし、通路の向こう側へと続いている暗闇の方へと視線を向け続けた。それに対し、私は口を閉じようとしているのと自然と開いたままになってしまいそうな勢いとを互いに感じ続けている間、右手は落としたまままっすぐになったままにしていた。
それから、またさっきと同じように、膝が曲がりそうになった時、私の後ろから床を硬い物で叩く音が何度も聞こえてきて、それと共に、口を強く紡ぐようにすると、それに対して私は体の動きが勝手に止まってしまい、目を軽く開けながら歯を噛み締めることになる。しかし、向こうからしている高い音は何度も廊下の中を反響し続けているのを感じさせられるのが止まらない。
歯を食いしばるようにしながら、目も閉じて、それから一気に後ろに振り返ると、そっちではサングラスをかけたままにしている倉敷さんの部下の女性がまっすぐにいつもと同じスーツでやって来てた。
その姿を見た途端に、私は両方の膝から落っこちると、それを追う様に倉敷さんが世古島たちがいた部屋から出て来るのを見て、鼻から息を吸ってからおでこを両方の手の上に乗っけて息を吐く。それに対して、倉敷さんの方から私に近い位置にいる女性の方へと近づいて言葉を話していた。
「倉敷さん、これが東雲と001の位置を示す地図です」
その言葉と共にアイパッドを開いた女性が下側に左手を当てて、もう片方の手で右上の角をもつようにして倉敷さんにそれを渡していた。それを受け取った側も、すぐに右手の指を使って画面を拡大すると共に、こっちへと数歩足を進めるようにして来ると共に、部下もその後を背筋をまっすぐ伸ばしたままに近づいて来た。
それに対して私は、体を下に向けるようにしている間、両手を地面へと付けるようにしたままに上へと顔を上げる。そのまま両方の腕を足の間に入れる姿をしていたら、あっちは私に向けて、わずかに指同士の隙間を開けている状態で、その中心部分をへこませるようにしている手の平を見せて来るようにしながら、口を横へと広げる。
「今度こそ、あいつに勝ちましょう、木月流那さん」
その言葉に対して、私は喉を一度飲み込むようにする。その動きのせいか、自分の腹の痛みがやって来て、そこを手で抑えながら、もう片方の手を下を向いた状態で倉敷さんの手に合わせると、それと共に勢いに任せるような形で上半身を立たせて、それに続くように足も延ばした。
でも、その状態でも、私の体は横に倒れそうになったので、その瞬間に向こうの方からこっちの両肩に手を乗せらされた。
「……そうだ、そう、ですよね……」
そのわずかな声と共に、私はまだ動く左手を握りしめる。しかし、周囲ではそれのせいで何も音はしない。そう思ったその次の瞬間には、また私のお腹が痛みを訴えてきて、それのせいで体のバランスを崩しそうになると、すぐに倉敷さんが私の体をもう一度支えるようにして来る。それと共に、私は体を僅かに前のめりにすることしかできずに、何度も口から呼吸を吸ったり吐いたりをするも、それに対して私の上の前の方にある顔は目を軽く大きくするようにしているし、口も同じようにしている。
そんな姿のすぐ横で見ている部下の女性が、わずかに顔を動かすことで、その目線を私の方へと反らしてきた。一方私はそれを見た瞬間に一瞬だけ息を飲むようにする。その途端に倉敷さんが手を離したと思って、そっちの方へと体を寄せると、それに合わせるようにもう片方の人の手が変わって私を支えた。
「わかっている、だがやつは無からドローンを出せる以上今までの対策法は通用しない」
首に片手を当てて、もう片方の手をそっちの肘に当てるようにしているその姿に、私たちも視線を向ける。その上に、足を動かすリズムに合わせて言葉を発するようにしていた体は、私たちに背中を向けながら壁の下側の角を見るような顔の向きにしていた。
その一方でこっちは、髪の毛を介してでないとその光景が見れないような位置に顔がいることになってしまう。しかし、その一方で、正面にいる女性は私に対して何もしてこない。床に正座したまま両方の手もそっちに落っことすような姿勢をしているせいで、お腹の部分が一番引っ込んでいるので、またそこに心臓の音に合わせるみたいなタイミングで痛みが何度も私の体に訴えられる。それに余計に背筋が曲がるのを感じた瞬間、そこが急に軽くなったのと、下から硬い音がしたのに気付く。その瞬間、私は瞼を動かすようにそこと目を大きく開く。
「あの!」
首を大きく動かして、それと共に目線も前に出す。そうすると、すぐに女性から目線がそれて顔をその奥にある世古島たちがいた部屋の方に向かう。それと共に、ずっと大きく開いてた口がわずかな隙間だけ空くようになって、それからまたそこを閉じるようにする。しかし、それに対して周囲ではずっと静かなままま。
倉敷さんも視線を首だけの動きでこっちに振りかえって来てるけど、それに対して私はしばらくそのアルミ製のドアをじっと見つめて、首を押し込むようにする。目線の半分側にいる女性と残ったところの反対側の方にいるスーツ姿、そして、その奥にあるそれをじっと見つめて。2人の視線がこっちに向いたタイミングで一気に目を閉じながらなんとか立ち上がった。
それから、息を何度も吐きながら肩を一度だけ持ち上げてからそっちを交互に見て、それから最初の方に戻す。
「ちょっと、タブレット、貸してもらえませんか? あと……」
それと共に、女性は自分の体に立てかけるようにしていたカバンを取ってその中に視線を向けていた。それからすぐに、倉敷さんの方へと視線を向けて、すぐに喉を1回のみ込んでから、もう一度自分のスマホをポケットの上から握りしめる。それでも、その形はしっかりと、ボタンまで伝わってきた。
「倉敷さん、アマプラ、やってますか」
僅かな声を出すそっちのそれを聞いてから、もう一度私は、喉に強く力を込めて、言葉を発した。
「……私らしく、東雲アニタを、倒します」
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