第62話
しかし、それらの中でも未だに離れ離れで見えている黒い点の様子を視線で追いかけていると、その中で硬い床を叩く、それと同じくらい硬いシューズの音が聞こえた途端に、私の心臓の辺りが小さくなるのを感じて。でも、そっちから開いている隙間にその真っ黒な服装をしている倉敷さんが現れ、腰の辺りで曲げているその背筋がそこ以外は真っ直ぐな状態でこっちに顔を向けて来るようにしている。
その胸元のネクタイがある箇所以外ではワイシャツが見えているのだけれども、影になっているせいで元々暗くなっている上に、私の視界がかすんでいるせいで、周囲のスーツと混じり合っている。
「木月流那さん、立てますか、すぐに東雲アニタを追いましょう」
そのわずかにいつもよりは早くなっている声を聞いて、体を少しだけ起こそうとするも、そのタイミングでいつも以上にお腹が痛くなって、呼吸が苦しくなって元に戻してしまった。そして、それによってまた床に体の中でも頭をぶつけることになる。それのせいで、頭の中に痛みが重い形で響いて来た。
しかし、両方の手と肩で体を持ち上げるようにしていた物の、歯を見せてそっちに向けるようにするも、そっちでは倉敷さんの部下がそこに出来た空間の隙間に入りそうになっていた一方で、その人が歩いてくるよりも先にハリーが入り込むようにして、肘は下に落としたままそこより先を上にあげるようにして持ち上げるようにしながら、握りこぶしをそのまま倉敷さんの胸元に押し付けるようにしていた。
その一方で、そうされた側は体が一瞬だけ後ろに勢いで下がるけど、そのままに元のまっすぐに床と垂直になっている体がそのままになっている様子のまま。しかし、下から見ているハリーは勢いを付けて倉敷さんのへと向けるようにしていた。
「ふざけんなよ、お前、大人だからって、喧嘩すればあたしらのがつえんだ!」
何度も口から息を吸ってそれを吐き出すままの勢いに乗せるように大声を出すハリーに対して、倉敷さんはそれを上から見つめるようにしているだけ。さらに、一度だけそっちに向けて足と腕を近づけるようにしているその部下の女性も数秒間そのままになっている光景を見つめた後に、すぐ姿勢を元に戻していた。
ただ、私がそっちから視線を放して世古島の方へと動かすと、そっちでは両方の腕を組むようにしていた姿勢からそれを崩すようにしてて、それから自分の体に沿わせるように腕を落っことしていた。それから、上唇の位置を動かさないで下唇を押し付けるようにしている。しかし、そのまま一切動こうとはしなかった。
そんな姿へと、私の方から行きたいけど、でも、お腹の痛みに体が縛り付けられたみたいで、そっちに行くにはとても両腕の力だけじゃ何もできない。それのせいで、上瞼を落としたままの姿勢でしかいられない。それどころか、肩すらも持ち上がらなくて、呼吸を口で繰り返しながら首だけを動かして顔をそっちへと向けた。
「いいって」
途中だけ持ち上げるようにして言葉を発するけど、そっちまで届いたのはそこくらいな気がした。それに続く言葉は、肩を落としながら落っこちて行く呼吸の感覚くらいしかなくて。でも、それでもハリーはこっちに近づいてくるのに気づいたら、その肩へと両方の手を近づけるようにしている一方で、その後ろに倉敷さんが近づいてきている。ただ、お腹の方へとまた両手を持って行こうとすると、私はハリーの顔を避けるようにしてそっちに視線を向けることしかできなかった。
「あの、倉敷さん……杏は……」
何度も何度も止まりそうになるけど、それを無理矢理強く吐き出すようにして声を出す。しかし、それに対して私の言葉を遮るようにハリーが顔をこっちへと近づけるようにして腕を曲げていた。しかし、それに対して、呼吸をなんとか吐きだして視線を向けるようにするも、倉敷さんはまた眼鏡がわずかに鼻の下あたりを滑るようになっている顔を下へと向けることで私を見て来てた。
「施設のどこかにはいるはずです」
「お前いい加減にしろよ!」
倉敷さんの言葉を遮るように出て来たハリーの声と共に、体が動いて、それと共に、髪の毛も大きく膨らむように動いていた。しかし、それに対してどかされた方は自分から後ろへと下がったこともあって、そっちで何をするでもなくいる。そう思ったけれど、体を横へと向けている物の、視線は相変わらずこっちを見たまま。
一方でハリーは未だ私の肩に両方の手を当てて目を大きく開いてて、声全体を張るようにしている。しかし、それに対して私は、そのうち左側の肩に乗ってる方に自分の右手をほとんど力を加えずに乗せると、そのまま反対側の下に目線を向けるように。それから、ほんの少しだけ開けた口から息を吐くようにすると共に、瞼を震わせるようにするも、唇はそのままに。そうしているのと、正面にいるハリーが目を僅かに丸くするようにしながら私の名前を小さく呼んでいるのに気付いた。
「そう、だよな……もう、いい……よな……」
「腰抜け……?」
私はそのままの姿勢でだんだんと体を床へと落っことすようにする。でも、それのせいで砂を滑らせるように動くのを感じると、そのまま自分の顔を横へと転がすようにしながら視線をそらして、胸元に右手を持っていく。それから眉間に肌をよせるようにするも、出来るだけそこにしわを作らないままにじっとそっちを見ようとすると、そっちには誰もいなくて。でも、それを私はただただ見ているだけだった。その一方で、私の頭側にいるハリーたちの方では、靴で砂を踏みしめる音が聞こえて来る。でも、その次の瞬間にはそれが何回も繰り返し聞こえてきてて、その一方で私は体を一切動かさないようにしていた。
「何を言っているんですか、このまま東雲を放っておけばまた多くの子供たちが犠牲になるんですよ!」
空気の動きで倉敷さんが体を曲げながらこっちに向けて声を強くして話しているのに気付くけど、一方で私は自分の方へ両方の手をくっつけるようにして、それと共に背中を猫背にし、瞼を下へと落とすようにする。しかし、向こうではそれ以外には空気が動くところは一切ない。
その中で、すぐにそっちから肩に向けて一気に手を近づけようとするも、それに対して私はすぐにそこをより自分の折り曲げてる膝に近づけることで、そのまま目に力を籠めようとする物の、そこはすぐに掴まれて、私はその力に対して一切抵抗できずにいた。その一方で、倉敷さんはそこを何度もゆするように動かし続けて来てて。その度に私の体、特に痣と火傷になってるお腹にその振動を強く感じ取った。
それのせいで、目を強く力を籠め続けているし、息も激しくなってしまいそうで、それを一気に吐き出した。
「私は!」
一度気づけば私の口から大きな声が出てしまっていて、それに対して辺りでは何も音がしなくなる。そう思った数秒後にはまた倉敷さんがこっちの肩をゆするようにして来るけど、それで私の前面が天井にまで向くことは全くない。それなのに、周囲からは他の音は聞こえてこない。
私の正面の壁には横へと広がる自分の物はもちろんのこと、それ以外にもハリーたちの前へと伸びて行ってる影が見えているけど、それも動くことは何もない。その上、私の首の辺りに出来ている星のボタンで止まっているうさ耳パーカーが変身したマントも後ろの方へと広がってるし、ジャンヌオルタのドレスも正面にしか布がないせいで、体が揺れるたびに砂が擦れ続ける。
それを味わい続ける結果、私は以前そこにあった傷たちがまだその痛みを表してくるような気すらもして、そこに手を擦り付けるようにする。しかし、地面に接している面はそこについている肉が広がっているせいか、下には入り込むことが出来なかった。それから、また体を自分の体に膝を近づけるようにすることで、もう限界まで搾り上げるようにする。
「私は……ただのオタクなんです……ほっといてくださいよ……」
息を吐くようにしながらようやく出たその声で、わずかに喉を震わせるようにするのに対して、周囲ではやっぱり何も聞こえないまま。それに対して、私は目を強く瞑るようにしているせいで、その裏で赤色の光が私の視界をジグザグにヒビを作るように進んで行っているだけ、それが端と端に繋がるようになった途端に、その中央からだんだんと広がる青色の輪っかが数回出来上がっていくのを眺め続けた。
眉を限界まで寄せることで、眉毛がぶつかり合うような感覚すらも味わって、膝と体の間に挟んでいる肘を自分の股の方へと近づけていこうとすると、最初は着ているドレスと擦れるようになる物の、それもお腹の直前辺りでなくなるのを感じると、そのままおでこの辺りがびくびくと動きそうになるのを感じた。
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