第61話
「流那」
私の名前をゆっくりと呼ぶ優しい声。それに気づいた途端目を開けると頬だけが大きく瞑れているのを感じるも、それと共に、自分の腕も頭もけっこう重いままで、まだその姿勢のままでいる。しかし、それと共にもう一度瞼を閉じることにした。そしたら、周囲で感じさせられてた生暖かい空気とそれが運ばれてくることによって髪の毛がわずかに揺れるようになっているのを感じて。それが私の首元をくすぐり続けると、そのまま目の裏の真っ暗な様子すらも見ているのが面倒な気がして上瞼に込めている重みを無くしていた。
「流那」
それの直後に、今度は一文字一文字の間を大きく開けるように伸ばした声を出しているそれを聞いた途端に、体を撫でていた髪の毛がくしゃくしゃにされているのを頭の感覚と髪の毛が擦れる音で感じて。そっちに向けて頭を持ち上げると、未だに頭の中がそこでずっと重い物にのしかかられているような感覚がして。でも、それでも髪の毛を揉みしだかれているのに従って私の体もわずかに上へと持ち上がった。
その後、目を開けようとすると、だんだんと周囲で女子たちがまた雑談で盛り上がっているのが聞こえてきて、私が前髪がなくなったせいで丸出しになっているおでこを下へと向けようとしたらそれと一緒に私の頭の上にいた手がいなくなるのを感じた。
自分の手の平の片手をそこへと押し付けながら、もう片方の手で目を擦る。それから、両方の手を思い切り伸ばして背筋も同じようにすると、数秒後にはいつも通りの猫背に戻して息を吐く。そっちには、眼鏡の向こうから丸い目をこっちへと向けて来ている杏の姿があった。
私と目が合った直後に、後ろに下がりつつお尻に手をやりながら制服のスカートを整えて座ってた。視線をそっちから戻した向こうは、自分の両手を皿にしながら太ももに皮脂を乗っけてその上に頭を乗っけて頬を持ち上げていた。そんな光景に対して私は息を一旦吐きながら肩を落とす。
「また昨日もアニメ? アマプラで見ればいいのに」
周囲のうるさいのの中でもしっかりと聞こえる杏の声。それは最初は先に進むたびに上がって行っている様に感じる一方で、その後はだんだんゆっくりになっていくみたいだった。
それを聞いてから私は机の上に並んでたノートを自分の側に引き寄せて、それからシャーペンを取ろうとすると、それと一緒に杏が自分のを体の前で私に両方の手で持った状態で見せつける。それから、黒板へと体ごと向けるような姿勢でいた私は目線だけをそっちへと向けるようにした姿勢でいて。それに対して杏は目を閉じるようにしたまま顎を少しだけこっちに向けていた。
その後、私は息を吐いてから一度肩を落として。それからもう一度杏の方から視線をそらして、すぐに机の上に並んでた物をまとめてカバンの中に押し込む。
「ないんだよ、アマプラには」
一言で言い終わらせるくらいの早口でそれを発した後、ため息をついて体を落とす私に対して、杏はわずかな呼吸とともに目を細くしながら笑っていて。それに対してこっちは机の上に頬杖を突く。そうしている間杏は後ろを通ろうとしているクラスメイトの姿に対して、体は真っ直ぐに向けながらも首より上だけをそっちへと向けながら謝って数歩こっちへと進むようにしている。
それから、私との距離が近づくと、杏はこっちに向けて手を軽く伸ばしてきてて、それに対してこっちは喉を押し込むようにしつつ目を大きくして、頬が熱くなるのを感じる。そのまましばらくしてる間に私の視線はだんだんと視線を細くして杏がいない横の方へと反らしていった。
「跡、付いてる」
その言葉最初の一言だけを行った後に、今度は口を横へと広げるような動きと共に鼻から息を吐きながら発せられる声と一緒に、私の頬をへこませるように指を押し込んでくる。それに対して私は特に何もせず、そっち側の目を細めるようにするくらい。しかし、それでも、杏は数回そこを押し続けてた。私が右手で頬杖を作りながらもう片方へと視線を向けている一方で、杏はずっとそのまま背筋を伸ばして私の方へと体を寄せ、後になって凹んでいる場所を上下に撫で続けてた。
それに対して、私はそこを膨らませるようにして目を細くする。でも、私がそうしている間にも杏が逆に立ち上がって、私の椅子と後ろの席になる机の間に立つと、両手をこねるような感じで私の頭の上に合わせてから自分のポシェットからくしを取り出して私の髪の毛の間に入れるようにして来てた。
「それに、髪の毛も。また久保田さんに笑われちゃうよ」
語尾を上げたり下げたりするのを交互にしながら話してくるその声は、聴いてるだけで私の口からため息が出そうになるけど、それで正面にある机に体重をかけようとしたら、その瞬間にくしを持ってない方の手で杏が私の肩を掴んできた。それに対してこっちは、息を吐き終わったタイミングで目を皿のような形にして行く。
一方で、後ろにいる杏はそれ以降くしを動かし続ける音が周囲の喧騒の中に消えていくせいでそっちからは何も聞こえなくなってしまっていた。しかし、それに対して奥の歯同士だけで軽く力を籠めるようにしているだけで、それ以外には何もしないでいるせいか、ただただその音を聞き続けるしかない。
それから、向こうからまたくしのくすぐったい感覚がなくなったところで、視線を目だけ動かすことで椅子の方へと動かすと、そっちで杏が重ねるようにしてる膝の上に腕を置いてる状態で少しだけ黒いショートカットで肩の辺りを撫でるようにしてた。
「これは杏がやったんだろ」
その名前を呼ぶタイミングでそこを強調するようにして話す。そして、その後に語尾を少しだけ伸ばすようにしてたらそれをだんだん消えていくようにしていくけど、周囲の音のせいでそれが私にも聞こえなくなってしまっていた。
その一方で、杏はその間も何も動かずにずっと同じ姿勢のまま顔の見た目を口を使うことで横に広げてた。そのまま、自分のポシェットを両手とほとんど同じ位置に置くようにしてて、それからまた視線を戻すことで、私はまた真っ直ぐに日直が黒板を消している様子を眺めている。その教師が書いた文字の前にある教卓に溜まっている生徒たちもそうだし、日直も手は黒板消しに触れている一方で、視線は溜まっているのの方に向いているせいで視界の範囲内ではそれを見ている人は誰もいなかった。
「ルナティック! カイジ、ちゃんと読んできたか?」
杏がいる側とは反対側、この教室の入り口もある方から入って来ていたのは、ゆっくりと足を進めながらこっちの方へを両手を大きく広げることで胸を見せつけてくるセレニアの姿だった。それを見た途端、私も椅子を引っ張って床をそれが滑る音を聞いた後にそっちへと小走りで近寄っていく。その頬を持ち上げて笑みを作る向こうに対して私も同じようにしていた。
胸が一瞬だけ上へと動くようになった途端に、それと共に咳が出ると、自分のお腹にものすごい重みが来て、動かないと思ってた腕がそっちに持っていかれる。しかし、それに対して私の背中は砂利の上を擦ったようで、それの細かい痛みが私の肌を直接擦る。でも、それもお腹の痛みに比べれば全然で、そっちは痣になった部分や火傷になった個所が何度も繰り返すうさ耳パーカーとジャンヌオルタの衣装の中で何度も主張してきた。
それに対して私は口を使って何度も呼吸を繰り返し続けたいけど、その度に東雲が私にまたお腹にミサイルやドローンを叩きつけて来るほどに感じる。そのせいで、また一気に喉が押し込まれてて、それのせいで咳が出続けた。それが収まった後も、そっちに勝手に持ってかれてた手を使ってその辺りに当てることで出来るだけ胸が動かないように意識して、呼吸を繰り返す。しかし、その一方で、目の下にある筋肉を動かすことで、体の痛みに必死に耐えた。
その一方で、真っ暗な視界の中で空気が周囲で動くのを感じたけれど、それと共にやってきた冷たいそれが私の体へと突き刺さるように動き続けた。しかし、その後すぐに、私の肩に体重が乗せられて、またその振動でお腹の痛みが強くなって、それと共に口の中の空気が一気に吐き出しそうになると共に、一瞬だけ唾液が溢れそうになった。
「腰抜け!」
その一瞬で消えるけど、それ以上に声が大きくて私の耳にも突き刺さりそうなくらいの大きさで聞こえて来たハリーの声は、それが終わった後もその呼吸の音が聞こえてくるくらいだった。しかし、それに対して、瞼を僅かに開けると、上のそこが震えるのを感じさせられて、それのせいでまたお腹の痛みに強く力込めてもそれは変わらない。
しかし、その一方で、倒れてる私の視界を覆うようにしてるハリー以外の、マナやコアラは目を大きくしながらわずかに口を開けるようにしている。そして、まっすぐに立っている姿が見えている世古島は眉をひそめるようにしながら口を閉じてその中を僅かに動かそうとしているくらいだった。
「はっ、はりぃぃ……」
一度声を出そうとしていたのに対して、また咳が出そうになると胸元が一気に持ち上げるようにしたせいか、肩を動かして激しく呼吸を繰り返すくらいしかできなかった。
それが終わったタイミングで、乾燥しきった喉が音を立てながら呼吸を繰り返している間に、ぼやけた視界の中で、世古島の仲間達の周辺では白くて光を反射している廊下と同じような硬そうな壁を見せている。その一方で、その模様にはわずかな黒いぼつぼつの模様が描かれている物の、こっちが視線を動かすことによって見える光の反射によって白くなっている箇所のせいでそれらもすべて見えなくなってくるし、その眩しさで目が痛くなった。
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