第60話
砂煙と機械が燃えることによって出来上がっている煙に対して、自分の手を口元に当てながら何度も咳き込む。そして、それと共に体を僅かに傾けるようにして、その音が出る度に視線を左右に動かすようにしていた。それのせいで数秒足を止めて左右を見渡すようにする。しかし、それに対して、周囲には真っ白になっている煙と赤色に燃え盛る炎、そして黒くなっているがれきや機械の残骸くらいだった。そっちからすぐに視線を戻して、顔を僅かに上へと向けながら、呼吸の通り道としてほんの少しだけ口を開けつつ、小走りで走り出す。しかし、だんだんと体の中の空洞が大きくなっていくのを感じながら、眉が落っこちて来るのを感じる。
それのせいか、またさっき手を突いた時の痛みがまた自分の手に引っ掛かってきて、それのせいでそっちを抑えながら息を小刻みに繰り返すように息を吸ったり吐いたり。さらに、その上に顔を僅かに上へと持ち上げ、息を今度は一気に吐き出すようにしながら肩を落とした。それから自分の両方の右腕を体へと押し込むような形でそのままの姿勢でいると、そのまま視線で弧を描くように目を動かしながら、お腹の辺りを通ってた腕で自分のそこを押すと、それと共に東雲にやられた痛みが通るのを感じると、その瞬間に目を閉じて、歯を噛み締めた。
「杏……」
息を吐くのと同じタイミングで、視線をまた下に向ける。でも、お腹と腕の痛みは同じ様にしか感じなくて、歯を何度もぶつけるようにじゃないと呼吸を進められない。しかし、それでももう一度膝を落っことしそうになるけど、それと共に、左手に限界まで力を込めてまた立ち上がった。
また顎を僅かに落とすようにしながら上を見ると、そっちでは私が足を立ててる床から見ると、わずかに残った金網と共にせりあがったままになっているリングの壁を見上げるようにすることになった。しかし、当然のようにその上にも煙が浮かび上がろうとしているのを見て一旦口の中にいる空気を吸い込むようにしてからそっちへと近づくように小走りをするも、渡曽の手が触れた場所はまだ金網が多く残っていたせいで、その周囲を回って登れる場所を探し出した。
「杏!」
東雲がドローンを何度も発射して来るタイミングから風でわずかに揺れるようになって以降全く動いていない杏の体が床の上に転がっているのに気付いて、体と足をそっちに動かすために全力で近づくと、そのままそこに見えている背中に両方の手を当てる。しかし、それでも向こうは何も動くこともなくて。それから自分の胸をそっちへと当てるようにして、その間、自分の喉に強い力を籠める。しかし、それも数秒間続けたタイミングで辞めて、目を開きながら自分の指も通るか怪しいくらいの大きさで口を開けておくも、そこを呼吸が通り続けるのを感じた。
その後、目の下を大きく広げるつもりで、杏の体の上で両方の手を空気で出来た丸い球を持つような形にさせている間、肩を呼吸に合わせて数回動かし続けている。しかし、その間も私の下に向かっている視界の中で動いているのはずっと上に向かって上がり続けている煙だけ。それに気づいてからもう一度杏の体に触れ、片方の腕を私の首の後ろを通すようにしてその肩を持ち上げようとするけど、私の右手に力を入れようとするタイミングでそのまま私の方が体のバランスを崩しそうになる。それを何とか左手で止めるも、杏はそのまま体を地面に体を戻してしまい、わずかな砂煙を起こしてしまっていた。
上半身をもう一度持ち上げて、それから体に魔力を込めてもう一度杏の体を拾う。それから、その人間の皮膚が残っている側の肩に自分のを貸してるのに、それでも冷たい感覚を味わって、それのせいか自分の体を猫背にした途端、こっちの体が後ろから吹き飛ばされて、それが東雲に蹴飛ばされたせいだったのに気付いたのは、体がまた砂利の上を滑ってその痛みを味わう羽目になった後に、息を強く吸い込んだ時だった。
そっちでこっちに片方の足を向けるようにしているその姿と目線を合わせると、両方の手をリングの上について上半身だけを持ち上げるような体勢に。しかし、それに対してすぐに向こうは横にいる杏へと目もくれずにこっちへと進み始めた。
「あの男に何を言われたんでありますか!」
普段の物とは全く違う、語尾を限界まで大きくするような物であった上に、それと共に体を大きく震わせるようにしている声。それを聞いた瞬間、私の喉が引っ込むようになる物の、その瞬間に東雲が自分の手元へと召喚したドローンをまだ魔法陣から出きっていないタイミングで掴んでこっちに投げつけて来てた。その小さな爆発で私の体はまたリングの上をのたうち回り、うさ耳パーカーを変形させて作ったマントも燃え始め、その痛みと熱さで喉が裂けそうな声を出すことになる。
それから、少しでもその炎を消したくて、私はのたうち回るように体を何度も回し続ける。その間も私の方へと東雲が近づいてくる音がすると共に火消が終わったタイミングで上半身を起こそうとすると共にまた次なるドローンが床と平行な角度で召喚されるのを繰り返している水色の魔法陣の光が私の目の中に入ってくることになった。しかし、それに対してこっちが起き上がろうとすると、それと一緒にその中の1体から小型のミサイルが発射され、またお腹でもろに食らうと、そのまま内臓がつぶれてしまいそうなほどの痛みになって、また胃液を一気に吐き出してしまう。
そのまま、反対側のリングの縁でわずかに残っていた金網に激突して、そこがひん曲がるのを見させられてから、あおむけの状態でまた胃液を吐き出してしまい、口元はもちろん、肌にも髪の毛にもそれがかかってしまっていた。
「お前らは、ただ身勝手に生きてるだけの小娘でありましょう!」
東雲が少し離れたところから小刻みで止まるたびに最大限まで上げるようにしている大きな声を出すのに対して、こっちはとても体を動かせず、無理やりそうしようとするたびに、お腹が以前杏に刺された時とは比べ物にならない痛みを発して来ていた。首だけを動かしてそっちをみると、ジャンヌオルタのドレスに元からある穴にやけどで赤黒くなっている箇所と痣で青黒くなっている場所が混じり合うようになっている私の肌の姿を見た途端、激しい呼吸を繰り返しそうになりながら目が飛び出しそうな勢いを感じ取って、そのまま鼻をすする後に顔を上げると東雲がこっちに近づいて来てた。
でも、それ以外に周囲で聞こえる音は機械が落っこちたことで聞こえて来る燃え盛るのだけで、何度も口から無理矢理息を通そうとしている呼吸をするたびに、また腹の上に同じものがやって来る。それは、何度私が目を瞑り続けても、それが消えることはない。
「001は私が作り上げた研究成果、お前もあいつらに守られるのであります」
こっちを見下ろすようにして見て来る東雲の姿を僅かに開けた目から見つめようとするも、そっちの上から照明が降りているせいで、眩しくて見えない。その上、その光もドローンが次々とその後を追う様にやってくるせいで、見えなくなってしまっていた。でも、私の体は何度も咳き込みながらいるせいか、そうして見えている敵たちの光景もだんだん薄れていくような気がする。でも、それに対して、東雲の影は私の視界のほとんどを支配している様にすらも見えていた。
その後、だんだん私の視界が薄れていくのを感じて、それと一緒に、だんだん目が重くなっていくのを感じて、体も頭もその中身が消えていくような感覚がする。それと共に、そこの苦しさも消えていくような気がして、そのまま私は目を閉じて頭も上へと持って行こうとする。それに対して、ずっとドローンが羽根を回しているモーターの音は聞こえている物の、だんだんと東雲の足音が消えていくのを感じてしまった。
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