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Lunatic  作者: コンテナ店子
第一部前編
6/216

第6話

何故か先週分のが投稿出来てませんでした。

申し訳ないです。

 微動たりともしなくなった流那を担いだ男も含めて、倍以上も年齢が離れている男や女を引き連れて着陸寸前のヘリコプターに向けて歩みを進める、中学生にしては背が高い少女の足が動くたびに高い音が鳴っていた。ヘリから降りて来た人たちが彼女と目が合うとすぐに下や左右を向くように視線を逸らす。そんな人たちを無視して進んだ先で足を止めた隊長は、しばらく待った末に降りて来た背の低いツインテールの少女を見つけるタイミングでもう一度歩き始めた。


「また我に黙って行動しおったのか!」


 ヘリコプターから聞こえて来る騒音のせいで大声を張り上げている彼女のすぐそばに到着した隊長は、見下ろす様子から周囲が落ち着いた後に瞼を一回閉じてから視線を動かす。


「そっちは学内担当でありましょう?」


「今はそんなことを言っている場合ではない!」


「だからこそであります」


 周囲が静まっても声の大きさを変えない様子と、それを押し付けられても涼しい顔をしている彼女を囲っている大人たちは微動たりともしない。制服や体格すらも性別ごとにほとんど一緒の彼らが向けている視線に対して帰って来るものはしばらく何もなかった。


「ぼさっとするな。とっとと仕事を片付けろであります」


「お姉さま!」


 しばらく静かにドアが開けっぱなしになっていたヘリコプターから、大きな鉄の音を鳴らしながらもその大声はヘリの中でこだましている。それをそこにいる全員が耳にした直後、今までそこにいた人物全員と打って変わって激しく靴を地面に叩きつけるようにしながら、背の低い方が着ている物と同じ制服を着た少女が現れ、円形に並んでいる大人たちの隙間を、体を縫わせるように入り込んできた。


「そやつもアニタに会いたがっておったぞ」


 人同士の間から顔を出すようにした少女が隊長と視線が合うと同時にその二人を押しのけてから全速力で駆けてくる。そしてそのままの勢いでラグビーのような勢いでタックルを仕掛けるが、青と白の制服姿の彼女は微動たりともせずに衝撃の後に自分の方を見上げてくる足元へと視線を移していた。


「用事はそれで終わりでありますか?」


「我としては山ほどあるがな」


「呼んだのは処理班だけであります。っと、妃美も、でありますね」


 初めて口元から息が溢れるように頬を動かす隊長。それと息の延長線上がぶつかり合った瞬間、一気に妃美の呼吸も早くなり腰を掴む力も強まって視線も上から体の方へと変わっていく。その様子をひとしきり見ていた後に姉の方もしゃがもうと膝を曲げた瞬間、妹の方も力をだんだん緩めて行った結果、その目線はお互いに回転することなくとも同じ高さになった。


「あの、お姉さま……」


「次のセックスまでは我慢の約束。でありましょう?」


「でも、もう一人じゃ……」


「その滾り。あなただけでありますか?」


 妃美の方から、震える首より上の方を一切ためらう様子なく少しづつ前の方へと近づけて行った。


「……アニタ、いい加減にしておけ」


「私も彼女のためにやってるんであります」


 溜息を一度ついてから、帰るから続きはヘリでと妃美と諸葉の二人に指示をしながら隊長はその背中を押すように前へと進み、階段までたどり着いた瞬間にトランシーバーを口元に当てて後ろへと振り返る。そして、その直後に集団のさらに後ろにいた緑の髪の毛と縁のない眼鏡が目立っている少女が歩き出したのを確認してから二人の後を追いかけて行った。




 瞼の向こう側にぶつかってくる眩しさをよけるように目を瞑った暗い世界の中で体をねじろうとしたが、左肩が持ち上がったくらいですぐに腕とお腹周りが壁にぶつかる感覚がした。それを何度か繰り返した末、溜息を付いて目を開けようとするがその瞬間にまた手が持ち上がりそうになって、手首の関節に角がめり込む。


「飽きましたか?」


 私の傍で胸にまで届きそうなほどの黒髪と共に背筋を伸ばした大人の女性がいて、さっきまで私の体が動いてなかったのに気付けばその姿から離れるように体を出来る限りそいつとは反対側の方へと滑らせている。さらに、何も縛りが付いていない首は肩が女の方に盛り上がるほどに動いていた。しばらく静かなままだったのもあって、頭の中に浮かんだ言葉にわずかに口元が横に広がりそうになったが、その瞬間に目の前の口がもっと大きく動いていた。


「何か言いましたか」


「いやっ、別に……」


「言いましたよね?」


「その……、組織の、人間かって……」


 言葉を言おうとした瞬間、顔のパーツも四肢もお腹の中に込めた力も体の中心に向かって集まっていった。それに伴って体温も動いて行ったと思ったが、別に温かくはならない。そんなこと普通に知っているはずだった。


「いや、本当に言ったわけでは……」


「そう。ある意味ではそうですね」


「じゃっ、じゃあ……!」


 手を握りしめる形にしながらも親指とそれ以外の間にすこしだけ隙間を作って、五本に力を込める。全く意図してなかったけど目もつぶりそうになって周囲が暗くなったとわかった時、息が一瞬で止まってしまって、体の冷たさが一気に変化する。さっきまで全くなかったのに突如復活する背中を擦れる硬いベッドと体が擦れる感覚。それによって今着ている服が最後に意識のあった時のと同じなことに気づいて、すぐそこから目を逸らした。


「気持ちはわかるけど、別にそこまで敵意を向けなくても」


「だが……!」


「あなたの事は聞いてるわ。大変かもしれないけど、私も手伝うから。あなたが魔法少女なんてものはないということを受け入れることが今は一番大事なの」


 一瞬抜けかけた力をもう一度入れ直す。何度も息を口で繰り返しているうちに親指が痛くなったりそこから四つの指が滑り落ちそうになるし、腕の様子はいつもとほとんど変わりない。一度力を抜いてからもう一度右手だけに爪を立てて力を込めるが皮にのめり込んでいくそれらの様子は何度も見たことあるような物と同じだった。


「受け入れられない気持ちはわかるけど、ここにあなたを連れてくることを親御さんも快く返事をしてるわ」


 鼻から鋭く放たれる女性の息。身動きが取れずにいるこっちを見下ろしている視線。それらと共に抑揚が一切ないその言葉が私に伝えられた瞬間、手も体も力が抜けて青と緑の中間くらいのベッドに落っこちた。もうベルトからも枷も感じ取れない。


「ここ最近あなたのような人たちがたくさん来てるの。着いてきてくれる」


 いつの間にか持ち上げられた左腕が波を描くように先端側から宙へと投げ出されていくのを肌から伝えられて確認する。そして、拘束具があった場所を滑っていくように体を動かして、女性の後ろをついて行った。


 真っ白で染みもわざわざ探す方が大変そうだった部屋から出たが、そこにあった硬い音がする廊下も同じような壁の色をしていた。目の前を歩く姿を追うように歩いて行くと、さっきの部屋の端くらいまでたどり着いたところで現れた柱のような出っ張りに床以外の三方向を覆われた境目を超えても、特に周囲の壁の色や形が変わるわけでもなくさっき私が出て来たところと等間隔の所に立札も看板もないドアがあった。


 同じような見た目の壁を何度も繰り返し見ながらまっすぐに伸びた背中を追い続けた後、銀色に光っているエレベーターが正面に見えてきて、そこにいた二人の大きな男が視界に入るとほぼ等間隔で歩いていた女性が足を急に速めたせいで、ただでさえ早歩きだったこっちはとてもついていけない。そこにいた人たちの腕の現実では見たことないような太さに吸い込まれていくと、そこに出来た傷が縦や横や斜めに何個も入っているのがわかった。


 足を止めた女性はそこにいる人たちとの会話が何度か続いてから後ろに振り替えったが、私はその顔をずっと見ていたにも関わらず一度も視線はぶつからなかった。その背中へ声を掛けようと思うも、声が出ないどころか出たのは上ずった短い音。それの後に目の前から聞こえて来たそれは、二人のマッチョな人のうちの私に近い側の人が鳴らした物だった。エレベーターのドアをグーの甲を使って叩いたのが戻っていく手の様子でわかる。


「よし、行くぞ嬢ちゃん」


「安心しな。洗礼すんのは俺らじゃねぇ」


 もう片方の男の人も手を伸ばした状態で壁に付いて、こっちを見下ろすような体勢をしていて、その腕には筋肉の盛り上がりが余計に見えた。


 体を動かさない程度に深く呼吸をするが息は冷たいままで背中がまっすぐに伸びる。それに便乗するように後ろへ振り返ると、まだ長い廊下をあの女が歩いていた。あの部屋からここまでに曲がり角は一つもない。


 正面の方に視線を戻すが、二人とも体をエレベーターの方に向けて恐らく車の話をしながら盛り上がってた。


「おっ、来たみたいだな」


 いつの間にか自分の太ももに指を突き立てるようにしていたら、エレベーター特有の高い音がして正面の方に視線を戻すと銀色のドアが開き、その中に全方位を廊下と同じ様子で囲われている四角い直方体の空間があった。低い早くしろという声を聞いてようやく動いた足の位置から次の動かす場所を確認する。二歩歩いた時に手が腰骨とこすれ合った所でぼやけていた視界を無理やり直して中へと入っていった。


 私が入って振り返ったのを確認したらすぐに入り込んでくる男たち。二人が入口に詰めかけると外の様子はもう見えなくなった。それから腕によって止められていた入口が解き放たれ、周囲がどんどん暗くなっていき完全に真っ暗になった瞬間天井に付けられた豆電球が何度も点灯と消滅を繰り返し始める。どんどん音を立てながら下へと下っていく音、それに合わせてこの箱も揺れ続けていて私だけ体のバランスを失って転びそうになっていたが、その度に後ろの男の人にぶつかって小さくごめんなさいと音をたててしまった。


 いつの間にか鼠径部の前の辺りで重なってた手から続いてる脇が締まって首と肩を若干前の方に出しながら、ずっと上の方に行きそうになってた視線を無理やり下の方に向けてた。そのせいか、落ちて行くが止まった瞬間の大きな振動で体がビクンと反応しながら飛び跳ねそうになる。周囲の気温も冷たいがそれとほとんど同じように私の体からも体温がなくなったようだった。


 高い音を立てながらゆっくりとドアが開いて行くが、それでも周囲が明るくなっていくこともなく、一見すると灰色の硬そうなコンクリートが一面に広がった通路とすぐそばに事務所のように机と椅子が並べられている四角い場所がある。自分の息の音に耳を傾けて頭の中を探っていたが、目を中に向けるように閉じてもただの暗闇が見えただけだった。


 しばらくそのまま静止していたら、背中の方から背骨の辺りを思い切り押し込むみたいな強い力でその方向とは直角になるような上に飛び上がる。それのせいで私の体にはもう何も触れない、その次には硬い床、あの時何度も触れ合った感覚と同じ硬さの物が私の体の上を滑る。そして、それは思い返してみればほんの数秒のことで、頬が潰れるようなそれの上にいる時間の方が明らかに長い。そのせいか、肌を通して伝わってくる心臓の音だけが聞こえて来るその中で手を強く握りしめた。


「早く服脱いでくんない?」


「えっ、え⁉」


「何度も言わないとわからない?」


 音に引っぱられるみたいに顔をあげれば、そこにはさっき見た女性かと思ったがよく見ると微妙に違う見た目、考えてみれば声が全く違っているその人はしゃがみながら右手の肘を左手に乗せながら頬杖を付く。少しの間見ていたらこっちから視線をそらして欠伸をしていた。


「そっ、そんなの違法だろ……」


「あぁ? 目の前にいた人ですらお前助けなかっただろ?」


「私の何を知って……!」


「うっせぇな……。知るかそんなもん」


 立ち上がろうとした瞬間にそれと相反する方向の力が働いて体がビクンと反応する。頭の中で描かれていた通りの、さっき私と一緒に入ってきた筋肉がすごい男たちがしゃがんでいる姿と立っている姿で並んでた。こっちが地面から腕を使って上半身だけ起こした状態から首を向けると、天井にいくつか埋め込まれてる電球の中でも一番近いのは私とその人の頭との線上にあった。


 その後すぐに脇に手を入れられて持ち上げられた体を見ると、いつの間にか服が埃まみれになっていて、それは前が開けられてたとはいえ黒いパーカーで守られていた中の制服も例外じゃない。しかも、滑った膝とそれより下は全部細かい砂が擦れて痛くなる。


 なんとか立ち上がったその瞬間に私の体にめり込んでいた硬い手が離れたが、それと一緒に私の体の中の鉄筋が一気に硬さを増して、それに支えられてない体の肉が零れ落ちていった。

読了ありがとうございました。

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