第57話
世古島にようやく聞こえるくらいの大きさの低い声を出した北川が一気に腰を落としながら腰元で両手を握りしめて肘を一気に背中よりも後ろ側へと引き込む。そうすると、それと共に周囲から一気に煙が消えて、それに対して受けた側も、片足だけを一歩後ろに下げて、その勢いに備えようとしているし、その後ろで寝かされているハリーを庇う様にしていたコアラも、そっちへと体重をかけずに上半身を重ねるような姿勢にした。
辺りではいまだに北川の周辺以外では砂煙や燃えることによって起こっている煙がずっと持ち上がり続けていて、それのせいで東雲が乗っていたゴンドラやハリーたちがいた足場が崩れた姿が影になって映っているくらいになっている。しかし、そっちを見ている人は誰もいないし、そこから聞こえて来る電気が故障したことで漏れて火花を発している音以外に周囲からは何も聞こえなくなっていた。
ただ、その沈黙も、北川が同じポーズのままに体へと一気に力を籠めることでさらに足を曲げた瞬間に破られる。その体の足元に黄色い魔法陣が現れ、その光が辺りを照らすと共に、世古島もそこから視線を逸らすように動かしてしまう。その一方、北川はまた顔に笑みを作ってそっちの方を見ていた物の、その直後に顔までもが、魔法陣から現れた渦巻きを描くように回転しながら持ち上がり続ける黄色い太い線で隠れてしまった。一方で、次々と増えていく光の線はどんどん増えながらも彼女の周囲へと集まり続け、それと共に、それが低い音を立て続ける。
そして、それを見ている世古島は、顔の近くへと金属グローブから伸びてバックパック型機械へと繋がれている管を見せるようにそこで目の元を覆うようにしていた。その上に、それらはもちろんのこと、足元を覆っているブーツまでもが、そこに付けられている小さなライトが様々な色を立てながらいくつも点滅するのを繰り返す。その上に、ファンもまた激しい回転をし始めていた。
光に包まれている北川は、体を大きく反らしながら両方の手を下に下げて平を拡げる。それから、元に戻して体をまっすぐにしたままにすると、北川は今度は右手を腰に置きながら鼻から息を吐き、下瞼を使って目を拡げるように。それと共に、頭に人骨を乗っけた上に、丸い円から鋭く尖った刺をたくさんつけている真っ黒な半袖ジャケットと、たくさんのダメージが入ったジーパン姿に、それを止めるためにべルトに金色の鞭をぶら下げていた。さらには、敗れているズボンの隙間や二の腕の真ん中辺りから見ている腕にはサソリやどくろ、ハートやバラなどの形をした真っ黒なタトゥーが描かれている。
そんな北川は、ずっとその音を周囲のメンバーにも響かせるくらいの大きな音でゆっくりと深呼吸を繰り返しているせいか、顔の中でも特に頬を真っ赤に火照らせていて。そのまま笑みを作っている。
「これで、プライドも満足できる?」
一気に持ち上げるように最初の言葉を出した北川は、いったん止まった後に続けて大きさを元に戻してゆっくりと話す声を出していく。それと共に、また顎を上へと向けるようにして鼻からわずかな息を吐くようにしている。それから、さっきと同じように目を下へと向けるようにした。
その一方で、相変わらずファンが回り続けている音を後ろで立て続けている世古島は、自分の肘をハリーやコアラの方へと向けて曲げると共に、両方の手をもう一度握りしめることにより、その金属の高い音を立てる。それと共に、顎を引くようにして顔の角度を変えることにより、息を吸い込みつつ歯を奥へと滑らせるようにしていた。
その一方で、未だに北川はずっと同じまま。それのせいで、周囲からは何も音がしなくなっている。世古島の後ろにいるコアラも倒れてた体に重ねるようにしているのは辞めたとはいえ、足を折り曲げたのを床の上に重ねている上に、それも含めて上半身をハリーの側に向けていて、唯一顔と肩の辺りだけを2人の方へと向けるようにしていた。
その沈黙が破られたのは、メンバーの中で一番後ろにいたハリーが肩を使って体を持ち上げようとした肘までも床に着いたまま力を込めて、喉を鳴らした音が聞こえたタイミングだった。それから、上半身全体を起こしたその体で、姉御の事を呼んだタイミングで、残りの3人も、北川も含めて全員が視線をそっちへと向けた。
「ハリー、お前は腰抜けの所に行け」
体を敵の方から九十度足も含めて向きを変え、それから髪の毛を揺らすようにして視線をコアラたちの方へと向けるようにするも、その後に髪が動くのを辞めたタイミングで、体はそのままにもう一度北川の方へと向き直る。
その一方で、ハリーはというと、一度片膝立ちになっていたと思いきや、目を強く瞑りながら地面に着いたほうの手を拳に変え、もう片方の手も立てた肘を強く握りしめる。それと共に、下に向けて強く息を吐いたと思いきや、その後何度も繰り返し肩で息をするのを繰り返していた。
そっちへと、体を支えるようにコアラが近づこうとするも、肘を曲げた状態で前腕を床と同じような角度にしたタイミングで、ハリーがそれを払う様にしていた。そして、そのまま髪の毛と一緒に顔を下に向けたまま、両方の目を強く締め付けて、それから膝を曲げるようにした状態で立ち上がる。
「あいつにはお前が必要だ」
それを音で感じ取ったのか、世古島はいつもと同じ抑揚でその言葉を話すと、数秒もかからない時間でそれを言い終え、その後は少しの間だけ口を開けたままにしていた。それが終わると、北川がわずかにマナが寝かされている側の足を出してからそっち側の手で自分の首を掴み、そこを撫でるように動かしながらそれと同じ側にある耳を下に向けるような形で首を曲げ、それと共に髪の毛が擦れる音を鳴らしている。
ただ、ハリーは両膝に自分の両手をついたままにしていて、その声に合わせるように片方の目を閉じながら体を起こして、そのまま歩き出そうとすると共に、体から掻いた汗を落としていた。そんな体に、またコアラが寄ろうとしている物の、それはわずかに手を近づけようとして、そこから離れるようにしているだけであった。
「腰抜けは杏を助けに行ったよ」
まだ世古島の横辺りによくやく来たばっかりだったハリーに対して、顔を向けてから、顔の角度はそのままに両方の手を腹と胸の間くらいの位置で重ねるように指している北川。その手は右手を曲げたもう片方の肘の裏側に乗っけるようにしながら、もう片方を右の肘を持つようにしてそのまま立った状態でそっちの方を見たままにしていた。
そんな光景を見たハリーは、すぐに歯を食いしばって顎を自分の体へと近づけるようにする。しかし、それから目を一度瞑って息を強く吐き、そのまま北川の方へと向きを変え、両方の腕に力を籠めることで勢いづいた体でそっちに向かって行った。
しかし、それに対して北川は、すぐに体の角度を変えることで相手が近づいてくるのを回避してしまい、それに胸の少し横辺りで両方の手の平をハリーの背中へと見せるようにしているだけだった。それに対して当の本人は、勢いが止まれなかったせいで、体勢を崩してしまい床に倒れてしまう。そのタイミングで彼女自身も衝撃に備えて目を閉じようとするも、それを感じ取ったのは、両方の肩くらいのものであった。
それから、床に膝を付けて体を倒そうとするハリーが目を開けると、自分の前にいつの間にか移動して来てる世古島が肩膝立ちになるような姿勢でその姿をまっすぐに見ていた。普段と同じようにしているその目と自分の目を合わせると、生唾を飲み込むようになっている。
「悪かったな、ハリー。だが、こいつはあたしの喧嘩だ。だから、しっかり見てろ」
2人の近くにようやくコアラが小走りでやってきたころ、世古島はいつもよりゆっくりと最初は話し始めるも、その次の瞬間には、呼吸を殺すような低い声を出し始め、聞いていたハリーはそれと共に自分の肩にかけられる重さが余計に増しているように感じていた。その体が少しだけ前に揺れた頃、姉御の人がその体から顔だけの向きを変え、もう一度ハリーとマナの事をコアラに頼むと、それに対して言われた側は強く返事をしていた。
倒れそうになっていたその体を支える係が変わったタイミングで、足だけを動かして体を立たせている世古島が改めて北川の前に立っていた。その直後に、一度おろしていた顔を完全にならない程度に持ち上げ、そこを陰で黒く染めたままにしているようである。
それに対して、北川は軽く「終わった?」とだけ聞いていてから、両方の手を下におろしながらも、肩を大きく開くようなポーズをすると、それと共に手を強く握り、周囲が魔力で光り輝き始めた。
「私は全員でやってくれたほうがいいな、何なら、マナも使ってもいいよ。軽く気を失わせただけだし」
首を使ってコアラが介抱して背中を肩の辺りだけ持ち上げられているマナの方へと差す。そうすると、軽く、いつもよりも明るそうな声を出していたその声が終わったタイミングで、鼻から音を立てるようにして、口を横に広げる。
それに対して、間髪入れずに、自分の左の肩をもう片方の手で支えるようにして膝立ちになっているハリーが一度溜めるようにわずかな声を出してから、その後に喉を全開にしたそれを吐き出してた。
「お前、あんま姉御の事なめんじゃねぇ!」
「わかってないなぁ、ハリーは、ほんと、姉御の次はお前だ」
最初はさっきと同じような声を出したと思った北川は、一度声を持ち上げるようにした物の、わずかに唾液の音を鳴らすようにしたその声は、すぐに世古島が出した声よりも低い声を出して、魔力で作り上げた自身の黄色いオーラを特に両方の手の辺りで強めるようにしていた。
それに対して、2人の間に立ちはだかっている世古島は、バックパックについていたブレーカーのようなスイッチを自動ですべてをオフからオンに切り替え、それで今まで動いていなかった部分も次々と起動をはじめ、それと共に両方の手についている金属グローブの側面についているメーターがどんどん黒から赤色に変化。それから、その2つをつなげている管も中でエネルギーが通るのを表現するように持ち上がる様であった。
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