第56話
流那と東雲の戦いの爆発と電撃によって倒壊した足場が落っこちた瞬間に、天井の素材が破壊されて落っこちてきたせいで、即座に変身することになった世古島は、周囲から音がある程度落ち着きを取り戻したタイミングを見計らって自分の足元でしゃがんでいるコアラの肩へと手を置いていた。そして、それと共に両方の手を自分の耳元に上げながら極限まで膝へと体を近づけていたそっちが、顔だけを姉御へと向けてから自身の頭や膝などをはたいて埃を落としながら立ち上がる。でも、口元を横へと伸ばすようにしている前者に対して、後者は一度立ち上がった後にすぐ自分の手の平の先端辺りを目元に当てながらそこを何度もぬぐって、喉を鳴らすように声を出し続けていた。
そんなコアラの様子を、世古島はじっと見つめていたが、それは数秒間の間で、すぐに後ろ側へと振り返ると、そっちにある足場と天井の残骸へと視線を向けた。そして、その直後に呼吸を一度口から吐き出すようにして肩を動かすと共に、その後ろで一度強く自分の前腕を目元へ押し付けるようにしてから立ち上がって数歩歩いてそっちに近づいていく。
「姉御、すみません」
息を少しずつ吐いて近づいていたコアラの足はその背中へと近づきすぎたタイミングで数歩だけ戻すように。その一方で、世古島は手と足を使って、それでどけられる細かい物を動かしている。そのどちらも、変身を未だそのままにしているし、バックパック状の機械から伸びている管を固定しているせいか、四肢の先端側に取り付けられているグローブもブーツも触れ合うたびに等間隔で高い音を立て続けていた。それに対し、周囲では2人の辺り以外で動いているのは、ずっと天井の排気口に向けて伸びて行っている煙と、壊れた機械からはじけ飛んでいる火花だけである。
「気にするな、次はハリーとマナの番だ」
その言葉を終えた途端にがれきの中のへと手を掴み、息を止めつつ膝を曲げて腰を落とすことでその中の1つを持ち上げる。それと共に、砂煙の中へと投げ込むことで、大きな音を立ててしまっていた。そして、世古島はその場で強くため息を吐き、一度肩を落としてから次に手を掛けようとしていた。それに対して、コアラは自分の右手を口元に当てながら、何度もハリーとマナの名前を呼び続けてた。しかし、それに対して聞こえて来るのは、電気が小さな音を立てて何度もはじけ続けている音だけ。それに対して、コアラは自分の肘を体に押し付けてそこから避けるようにしていた。
その一方で、世古島は数回がれきをどかした後、次にどかす物へと手を当てたまま、腰を落としているにもかかわらず体の動きを止める。しかし、その姿勢で数秒間なにも見ずにいたと思い来や、その後目をじっと閉じたままになった。それに対して、後ろにいるコアラがそっちへと近づこうとするも、その体へと向けて世古島が手を伸ばすようにして制止させる。さらに、そっちに対しても、体の止めを継続させていた。
それをされた側が息を飲んで、左右を見渡すように視線だけを動かす。でも、その間も正面にいる体は全く動こうとしなくて、それのせいで胸元へと近づけている両手の指同士を重ね合わせるようにしていた。
そして、またコアラが口を開けようとした瞬間、目を閉じたままにしていた世古島が自分から数歩先へと飛ぶように動きだし、そっちにあったがれきを細かい物からどかし始めた。
「コアラ、この下にハリーがいる」
下を向いて作業を続けたままに真っ直ぐな声を出す世古島に対して、コアラはわずかに息を飲み込むようにしながら、その近くにあった物を1つ1つ持つようにして自分が出来そうなものを探していた。それに対し、世古島はすぐにさっきと同じような声を出しながら自分の側へと来るように伝えて、それに対して聞いた側は大きながれきの反対側に回り込んで、手を僅かな隙間に滑り込ませて、腕をまっすぐに持ち上げようとするそこにいる物はわずかに揺れて上に乗っかってた砂が落っこちるだけだった。
その後、世古島がすぐに歯を食いしばりながら口元を横に伸ばし、それから、足を大きく開けつつ腰を一気に落とし、息を吸い込むのと合わせるような大きな声を上げ始めた。それにより、そこにあった今まででも一番大きい物が、ゆっくりとその下へと光を入れさせるようにして、それと共に周囲へと一気に黄色い砂煙を立て始めた。
それから、それに続くようにだんだんと中で咳をする音が聞こえたと思うと、コアラも大きながれきから顔を出して姉御の方を見る。それと共に、補足するように口と上瞼を使って目を大きく開けた。しかし、それに対し、そっちはすぐに割と今まで以上に大きな声を上げると、それを支えたままにして、首を使ってそれを前に出すように。それを見た彼女もうなずいて手を離すと一緒に、その世古島が支えたままにしている岩の下へとしゃがみながら顔を横に向け、そっちにまた大きな声を出しながら一身に視線を向けている。その一方で、世古島は背中に背負っているバックパックから大きなファンの音を鳴らし続けていた。
それから、すぐにコアラが足を滑らせるようにして中へと入り込み、そのまま背中を曲げた状態で数歩だけ進むと、その間も、姉御は一瞬だけ喉を鳴らすように音を立てる。それを気にせず彼女はすぐにより背を低くすると、そこにがれきとは違う柔らかい感覚と温かみを僅かに残している感覚が合って、その直後にそっちへと首を大きく動かした。
「ハリー! 姉御!」
一度そこにいたハリーへと、上半身を起こすように背中へと両手を差し込み、その後すぐに振り返って上にいる世古島に声をかけるコアラ。その一方で、彼女は口の両端に力を強く力を込めてうなずく。そして、体を持ち上げられたハリーは力なく腕を落っことしていて、体が持ち上げられると共に、髪の毛を揺らすように動かす。しかし、それも数秒で終わり、すぐにまっすぐに垂れる。ただ、それに対してすぐに体を背負ったコアラが駆け足で穴の中を抜けた。
ハリーを背負ったコアラが外に出た瞬間、世古島が大きく息を吐きながらそれから手を離したため、周囲には一瞬だけ大きな風と砂煙が起きた。それに驚いたのか進行方向を向いたままにしていたコアラがすぐに振り返るようにしている。その一方で、持っていた彼女は両方の腕を肩と共におろしたまましばらくの間、その岩を見下ろすようにしている。しかし、それも数秒間で終わらし、コアラが細くしていた目を僅かに持ち上げるようにしたくらいのタイミングでそっちから振り返って来る。
「ハリー、しっかりしろ」
「姉御、私にやらせてください、エースが死んだの見て人命守るために勉強してたんすよ」
太ももを持たれたままわずかな力を前にある肩へと乗っけているハリーは、コアラによって一度平たい場所に寝かされると共に、そこで数を数えながら胸に強い力を込めて押し込まれ始める。それのせいもあって、顔や髪の毛も含めて埃まみれになってそれで染まりあがっている彼女の体の色に変化はない。さらに、その後、指で舌の位置を整えるようにしてから素早く魔を開けないようにして呼吸を吹き込んでいた。
そして、それに続いて世古島もそこを降りると、その場でしゃがみこんでたった膝の上に自分の肘を乗っけるような姿勢になる。それに対し、その正面にいたハリーは、目へ僅かに力を込めて、そこを振るわせながらだんだんと視線を姉御の方へと向けていた。そんな光景に、2人は動かずにいた。
「姉御ぉ……」
「姉御!」
ハリーが何度も繰り返す口からの呼吸の隙間を縫うようにしてなんとか出した声をかき消すくらいの勢いで聞こえてきた声。そっちへとコアラが顔を持ち上げて、世古島が振り返る。それと共に、後者は両手を強くそのままの位置で握りしめるようにしている一方で、前者は目を丸くしながら息を一気に吸い込んでいた。しかし、2人ともその場で体を動かせずにいるだけである。
一瞬で終わる短い単語だけだったせいか、ずっと同じ大きさだったうえに、伸ばすのもほんの少しだったせいで、途中で閉じなければハリーのよりも終わるのが早かったその声。それを出した北川は自分の左手だけを近づいてくる足に合わせて前後に動かしていて、それと共に、数秒に1度ずつ低い音を立てていた。それから、体の重心と腰骨を左にスライドさせながらそっち側へと手を乗せるポージングで鼻を動かすと、それと共にもう片方の手で持っていたマナの体をほんの僅かだけ前へと飛ばすようにそっちへと投げつけた。
「お前……」
両方の手と足を北川の後ろへと伸ばしながら、地面へと髪の毛を無造作に、不規則な向きへと伸ばしたままにしているマナの体へと視線を向けてから、その後に相手の方へと視線を向けるよりも前に、震えるような1つ1つを強調するかのような声を出す。その後、額をそっちへと近づけて、それによってできた影の中から正面にいる敵を見つめるようにしていた。しかし、その一方で、そっちへと肩を揺らして近づこうとするコアラに対して、制止するようにそっち側になる手を斜め下へと伸ばした。
それに対して北川は口元を大きく横に広げながら両手を同じ辺りに当てたままに、首の向きを変えて。右側の肩にそれを合わせるまでもいなないような位置に傾けると、そのまま頬を持ち上げて細めた目からその瞳孔を下におろすことで世古島の方を見ていた。
それから、一歩だけ姉御が前に出て、それと共に両方の手から一瞬だけ力を抜くようにしつつ首だけで顔の向きを変えてから目を閉じる。しかし、その瞬間、北川の方から軽くジャンプするような勢いで後ろへと下がりながら両方の手を胸元で広げて、平の方を相手に見せながらそこで細かく前後に動かす。
「待って待って。私はさ、筋肉馬鹿やあのサイコパスの仲間じゃないの」
最初は上下へと跳ねるような抑揚を付けて話していた声だが、一度止まったタイミングで鼻から息を出して、もう一度口元を横へと広げ直しつつ首と肩を使って自分の顔を地面側へと向けるようにしていた。
しかし、世古島はずっとそのまま同じ姿勢のままでいる一方で、コアラはわずかな声を出しながらすぐに振り返って数歩後ろへと戻り、ハリーのすぐ横へしゃがみこみ、向き合っている2人の側の盾になるその位置で足を動かないように。それに対してハリーは上半身を起こそうとするも、それから震えるようになってしまっていた。
「私の仲間は、私だけ」
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