第50話
boothにて新刊発売しました。
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またエレベーターに乗って、以前スーツの女性に連れていかれた部屋へと続く廊下と、前と同じ人と一緒に歩いていく足取りは、四肢を出来るだけまっすぐにするようにしながら両方の手を握りしめつつも、それの力を限界までは込めないようにしてて。外しながら入れたりを繰り返してちょうどいい箇所を探す。そして、歯を握りしめるかのように舌とそこを動かすのを何度も繰り返すようにしている間、何度か音が出るのを感じたら、すぐにそこに力を籠める。
その間、目の前にいるスーツの女性は出っ張るように壁から出ている柱の横やドアの前にいるあらゆるタイミングも含めて一切顔や髪の毛を歩くことによる体の上下以外ではほとんど動かしてないが、それでも私は斜め後ろで背中の骨が浮き出るかのような姿を見つめることになっている。
ただ、私はそれを辞めようとは思わなかった。それから、うさ耳パーカーの裾を強く握りしめてから、それに続いて部屋の中に入っていくようにした。当然のようにその面談室の様子は変わっていなくて、ほぼほぼ真っ白な汚れがほぼないその様子に、目を細くしてしまいそうになるも、もう一度パーカーのお腹の辺りを握りしめて手の動きを抑え込んだ。
そうしている間にも、女性は置いてあったカバンからまたパッドを取り出してて、それを見た途端に私は歯同士をぶつけ合う様にしながらパーカーを下に引っ張る。しかし、それでも女性がテーブルの上でセッティングをしている音が止まることがない。
それから、すぐに私も向こうがずっと準備しているのを横目にしながら椅子の上に座り込む。それから、座面の上に手の平を乗っけてそれから上下にすることでお尻の位置を整えるようにする。さらに、そこの側面と後ろ側を持ってほんの少しだけ後ろに下げた。
その頃に、向こうも準備が出来たようで。パッドの電源が付けられるとそこに私の姿が映り込む。その直後に、両方の手を膝の上に乗せて腕をまっすぐにしていると、唇に出来たへこみを整えるようにする。それから、太ももの上で拡げていた手を握りしめた。
「準備は出来ましたか」
その声がするまで、数秒間音がしなかったけど、その後も辺りからは空調が動いている音が一定間隔で聞こえて来るくらいだった。しかし、それに対して私は奥の歯を押しこむようにしながらお尻を少しずつ背もたれ側に近づけるように擦る。しかし、それに対して女性は何もせずに見下ろすような視線でこっちを見ていて、それと一緒んだけ視線が合うと私は空気を飲み込んだ。
それから、テーブルの上を見るように視線を下に向けているけれど、そこにある白い面には何も汚れている所なんかなくて、私のわずかに黒くなっている影がそこに出来上がっているだけだった。それに対して、銀髪が膨らみを失って頭の上へと張り付くように乗っかっている様子と、重力に従ってしわを何層にも作り続けている私のパーカー姿。それを未だ配信テストの状態で白い画面の中に映っている私と目線があった。
そのまま、もう一度だけ深呼吸をしてから、そのまままっすぐにカメラへと目を合わせた。
「……はい」
顎を使って顔を下へと動かすことでその声を発すると、その瞬間に体を前に出した女性が、指を数回だけ動かすと、周囲に高い送信音が流れ始めて。その瞬間に一気に呼吸を飲み込む感覚と一緒にお尻まで伸びる強い芯が通るような気がした。しかし、それを感じ取った瞬間に、私の動きが止まり、次の瞬間には真っ白な画面が急変すると、膝の上に前腕を、肘を太ももに乗せるようにしている倉敷さんが上から見下ろすようにしている姿が画面に映り込んでいた。
その足元を向こう側が使っているパッドで照らしている姿を見た瞬間、もう一度、一瞬だけ目線を右上に映っている私に合わせた。
「あなたなら、きっと戻って来る、そう信じていました」
画面が付いた2秒ほど後、頬を横へと広げるようにしつつ話されたその声は、先頭を強調するかのようにしつつ、一度呼吸をするために空けた後も、それと同じように続けていた。その一方で、その声が消えた後、私は一度だけ口を開けてそのまま数秒間考えている間はずっと同じようにしていた。
しかし、それでも向こう側は眼鏡のグラス同士の間のアーチに薬指を当て、残りをフレームの上辺に添え、親指だけは下側で支えるようにすることで眼鏡を元に戻していく。その間、そちら側の目は見えている物の、そこは指で出来た影のわずかな隙間からしか見えていない。
それに対して、私は少しだけ口を閉じるように動かそうとしたけど、それを始めた直後には、また向こうの顔が完全に見えるようになっていて。その直後に息を飲むようにしていた。それから、その中身を鼻から吐くように。その後に言葉にならない声を一瞬だけ出してから、話し始めた。
「はい、大事な友達がいるので……」
最初の言葉だけ声を大きく出そうとした私だけど、その直後に女性の目線がこっちに視線が向けられたのに気付いて、その後背筋を丸くするようにしそうになったのを元に戻すのをやって。それからゆっくりとさっきまでよりも落ち着いた声を出す。それに対して、倉敷さんは何もせずにただ首を僅かにうなずくように動かしているだけだった。
それで、私が話し終わったことですぐに向こうは話し始めてきた。それに対して私は少しだけ口を閉じつつ喉を引っ込めるようにする。
「安心してください。私と一緒にくれば、欲しい物を取り返せるはずです」
さっきと同じような口調で話すその声が消えると共に、口元を左側だけを伸ばすようにして笑みを作っているその表情は、それで顔の形がわずかに動いていても、それによって上に乗っかっているオールバックの髪形が変化することはない。そして、それは青色が濃い目に混じり合っているスーツの上の照明に照らされている箇所もパッドの灯りに照らされている箇所も一緒であった。
しかし、その腕時計だけが秒針を僅かに動かしているのが見えて、その無言の間、私はそこから視線をそらして、デジタルで表示されているパッド右端の時計を見ようと思ったけれど、それが動くことはなかった。
「あの、それで、私は……」
視線を倉敷さんがいる画面の側に向けようとしたのと同じタイミングで、声を出そうとした私は、最初に出た声が止まるかのように動いてしまって。その上に、それに続くのもわずかに小さく発するようにしているだけであったし、最終的には視線を左右に動かし続けることくらいしかできなかった。
しかし、そんな私が言葉を選んでいる最中にまた向こうが先に答えを出してきた。そうすると、それと共に私の視線もそっちへと引っ張られてくる。
「心配しなくて問題ありません。あなたはあの実験体001と共に施設を脱出してくれればそれだけでいいのです」
それを聞いている間、私は軽く両手を重ねてそれを握りしめる。そして、私は呼吸をより強くするようにして深呼吸をした。それは、顔のパーツの形は一切動かさないようにしていて、そのままに肩を上下にするように動かす。しかし、それに対して、画面の向こうにいる倉敷さんは近くで床に肩膝立ちをしている人と目線を反らして会話を続けていた。
そんな向こうの姿を見ている間、私は閉じたままの口の中で歯同士を擦らせていたら、そのデコボコした感じを自分の顔で感じ取る。しかし、向こうから視線を外すと、私の視界の中に入ってきたのは、白い全面の中に黒い点が描かれている仕切りやその前にある黒いボックスソファ、そして、女性とそれよりも少しだけ背が低い観葉植物が並んでいて。それを見ていたら私は顎を自分の顔に近づけるようにしたまま、太ももの辺りに改めて自分の両手を寄せるようにしていた。
その後、膝立ちになっている方の、黒いひげを蓄えている茶髪の男の人が、パットを操作すると、そこから一瞬で画面が消えて、それと共に聞こえて来たのはアプリで常設されているビデオチャットが閉じられる高い音だけで。それが聞こえた瞬間に、背筋を曲げている女性がパッドを回収していた。
それが終わった後、私は呼吸をほんの少しだけ開けている口からわずかに繰り返すことにしていた。それと一緒に両手を握りしめると、それで両腕にお腹が擦り付けられて。それのせいでまたお腹の傷の痛みを体感するけど、一度息を強く吐くことでそれを気にしなくなることになった。
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