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Lunatic  作者: コンテナ店子
第一部前編
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第4話

 瞑られた瞼の裏側を見させられたことで、自分の意識が飛ばされていたことに気づく。その後すぐに冷たい床の感覚で自分の位置がおおよそわかると同時に、そこに手を付いて力を込めようとするも、体が重くて中々やる気になれなかった。そう感じてから目を閉じたまま体の力を抜くと、周囲から沢山の人の話し声が聞こえるし、足音も私の体を揺らすような勢いで聞こえて来る。それのせいで頭が無理やり覚醒させられて、片手で体を支えながらなんとか起き上がるはめになった。


「あぁ、目覚めたかね」


 おでこを抑えながら目を開閉し続けているこっちに向かって二本の足が近づいて来ているのが音と視界の隅でわからされてから、横に広いふくよかな体格のおっさんが私のすぐ目の前でポケットに紙を仕舞いながらしゃがんできた。


「悪いけど、君たちには事情聴取のために署まで来てもらうよ」


「いっ、いや……。でも、みんなは……?」


「君含めて5人、全員無事だよ。大人しくこっちの言うことを聞いてくれれば痛くはしない。私も変態ではないのでね」


 目の前の男の頬が持ち上がるのを見てすぐに視線を左右にそらすが、やつと同じ月に溶けるような制服を着ている連中がそこら中にいて、部屋の中にある物を見ながら会話していたり、目に付いたものを袋の中に入れたりしている。そして、体から力が抜けてて手も床に伏せてたのは、いまだに電気が付いていないにも関わらず彼らが腰に付けてるのが見えやすくなってたからだって後から気づかされた。


「……何が目的なんだ」


 私が呼吸の合間を縫うように出した声が空中に浮かんでいくと同時に、おっさんは鼻で音が鋭く飛んでいくように笑うと右手を腰に当てながら顎の辺りを左手で何度も掻くようにしている。それのせいで、体に籠ってる力を下の方へ下の方へと動かして、それから全く動かさないでいると跳ね返って来た息が自分の顔に当たる。それはすごくしっとりしてて体温が籠っていたせいで、目を細めざる負えず、そしてその中では自分の息以外の音は何も聞こえなかった。


 と思ったその瞬間のこと、あの男の仲間と思われるやつが、電話が来たと言ってなぜかスピーカーのまま話している。一度わずかに目だけを動かして髪の毛越しにそっちの方を見ると、暗闇の中でパッドの画面から溢れる光だけが顔を照らしていた。


「まだ操作は終わらないでありますか?」


「お前ら……!」


 手を強く握りしめながら正面の方を見ると、さっきのソファの座面が私の方に向かって転がってた。そして、背もたれから背中に向かう丸みを帯びたカーブが行きついた先では九十度に曲がり切っている。それから自分の腕の方に目を戻すと前に力を抜いてた時に見た時と同じ色のまま、最近膨らみ始めて来た肉だけしか見えない。と思った。でも、私は見逃さない。手のしわに出る青と赤が混じるような一瞬の光を。


「これは警告だ。お前たちには発砲許可が出ている」


「先輩⁉ 流石に……」


「これは上の決定なんだ」


 おでこで床を擦るように何度か動かすと、やつのいる方に伸びてる床板の隙間がぶつかって痛みになる。


 だが、その板が私の体に触れた瞬間に感じた、摩擦で起きた周囲の冷たい空気とは真逆の熱さ。それが私の体へ痛みのように訴えかけられた時、そっちの方に瞼が一気に持ち上げられて、四肢が同時に体の中心へ一瞬だけ寄せられる感覚があった。


 頭が自分の物に戻った時でも、まだ心臓の音とリンクする激しい呼吸音が聞こえてきて、それで掻いた汗が体を何度も落ちて行くのに全然冷たい感覚はない。それどころか、体の中で様々な臓器が動いているのがまるで手の平に伝わってくるようになって、そしてそのせいか体内で何かが蠢いているような感じだった。


 今までにない感覚。それらを全部合わせた瞬間、私の息の音は少しづつ整い始めた。


 敵が私に向けて何か言ってる声が聞こえたが、そんなことよりも、私の方に伸ばされた銃の方に眼を向ける。あいつが一つずつそれの動作を進めているのを見て、私も鼻から一回息を吹いてから両手で数回冷たい床を擦った瞬間。人生で初めての銃声を聞くことになった。


 だが、それは私の作戦が全部終わった後のことだった。宙返りするように回転させながら敵を蹴り飛ばし、相手が倒れるよりも先に体がまっすぐになった瞬間に足を空中でばたつかせて着地。その瞬間、勢いよく周囲に真っ赤な衝撃が角を立たせるような波が立った。小さいが何度もはじけ飛ぶような音とそれに連動した赤い光が私を取り巻くように弧を描きながら上へと向かっている。それがおおよそ止んだ頃、やつが持ってた銃の音が明後日の方向から聞こえて来た。


「……ふざけやがって」


 しゃがんで銃を取ってから呟き、私の方に振り向いてそれを構える男。その後に手へ力を込めて、体の中に籠った熱を少しづつ外へと吐き出そうとすると、口の中でも出て来た空気が唾液と触れ合うと同時にその中を切るように熱さが質量をもつように走った。


「やるのか?」


「少しくらいサービスしろ」


 銃の持ち手を叩いてからもう一度狙いを定める敵に合わせてこっちも脇を締めながら両方の手を肩のそばにまで寄せてから体を逸らして、その後の戻る力を利用して一気に貯めた力を吐き出そうとすると、限界までそった体に付いて行った手から放たれてしまった電撃が上の方に飛んで、歯を食いしばってそれを止めようとした瞬間、やつも狙いが定まったのかこっちに向けて銃を放ってきた。


 その弾丸が迫ってくるのにまっすぐその動きを見ようとすると一緒に、力が抜けたのを向こうは全く見逃してなくて私の足と地面が離れて、それに驚いた体は空中で斜めにずれて、それと同時に靴から重力が逆転したかのように天井へ向かって飛ばされ始めた。しかし、もちろん向こうも銃を扇子の骨組みのような形で弾を放ってくる。


 素早く思いついた三点着地を決めようとしたが、早く天井に到着した手が衝撃を受けてひじに体の体重が乗っかかるような体勢になってしまう。そのままで傷ついた体を気遣うように支えながら立ち上がろうとするが、一瞬目に見えた普通の床にいる敵が片目を瞑りながら銃を構えているのが見えた。すぐに四肢に力を込めようとするがそれに呼応するようにより痛みが反発してきて、顔を私の足がいる天井の方に向けながらそっちの方に向かって息を吐こうとすると、それがすぐに戻りそうになる。


 だが、それのおかげで体の中にこもった熱の方に意識が集中してそれを体の隅々の方にまで移動させていくと、それが通った後は炎が散るように体温が上昇していて、もう一度腕を動かそうとしたら後ろに伸ばすような位置まで一気に回転してからその勢いのままに火花が床まで散って、そこを焦がしていた。そっちの方から意識を元に戻すと、もう手を伸ばせば届きそうなほどにまで銃弾が迫っていた。あっちが迫ってくるスピードを認識しきってから、両方の人差し指と中指を絡める。


 指の動きを見て同時に想像した通りに、敵の攻撃は鋭い炎によって切り裂かれた。私の方を見て腰を落としている敵の部下のやつら。私よりも数年年上の連中と視線を合わせようとするだけで、近づこうとするだけで、向こうからどいてくれる。こんなことは学校ではありえなかった。


「ひひっ、じゃあ、今度はこっちから、いくぞ……!」


 尻餅を着いたやつも腰を落としそうになってたやつもみんながみんな銃を構えて来るが、その頃にはもう私のクロスした手の前には二つの三角を重ね合わせた魔法陣が出来上がってて、それに手の平を合わせながら指にも強い力を込めるとそこからこぼれた小さな火花の糸がそっちに向かって飛び出し始める。


 その一方で正面に目を移すと回転する魔法陣から他の魔法の色よりもより濃くなったような球体が色んな方向へ走り回っているやつらを追うように何個も飛び出す。そしてそれらは床に到着する瞬間に弾けつつ周囲に衝撃波を放つとやつらを転ばせて、その走ってた勢いのままに転んだ連中は硬い床の痛みを感じたのか、口を大きく開いていた。


 だが、こっちの攻撃から逃れた連中もいて、そいつらは床に落ちた銃を拾っては構えてくる。それに対して私の体も、手を引っ張って魔法陣を握りしめさせると、一回クロスさせてから斜め前の方に投げ飛ばして、そこから私の体を覆うような大きなバリアを作り上げると、通りのいい音と共に奴らの攻撃を一切受け付けなくなった。


「勝負あったとはこのことだな。この場所も中々いい」


 フードは重力に従って下に向かって垂れ下がってるが、それと一緒におりている髪の毛がバリアとぶつかってまっすぐにならない姿が私の視界の隅の方にいるが、そんなことよりも今は連中の様子が優先。五人しかいないので、次々に武器を落としている姿を一人一人見極めなくては。


 そっと天井を蹴ると体は空中へと投げ出されて水の中にいたかのような速度だと思った次の瞬間には乾いた床の上にお尻をぶつけていた。


「お前らごときに使う魔力などもうない。私の前から消え去るがいい」


 すぐに立ち上がり、連中がいる方に肩を向けながら首を向けて喉を軽く動かす。そしてさらに追い打ちをかけるように握りしめた手の甲を連中の方に見せると、そこら中に出来た家具や物の瓦礫をかき分けながら慌てて脱出していった。目の前にいる仲間のはずの人を押しのけるようにするやつや、最年長の男が一番最後に出て行く様子をちゃんと柱を一つ折れたテーブルの上から見下ろしておく。一人になったことで音が外から聞こえて来る蛙や鳥の鳴き声だけになった時、自然と口から高笑いの声が溢れて来た。

読了ありがとうございます。

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