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Lunatic  作者: コンテナ店子
第一部中編
31/216

第31話

 唇を動かしながら歯を噛み締めて。コンクリートでできた壁のへこみに手を当ててそこを掴むようにする。そうしていると、視界の右側のうち半分くらいが広場からやって来る光に照らされている一方で、私もいる中央と左半分は、部屋もある通路が続いてて、影になって暗くなっていた。


 口を動かすたびに下瞼を意識して下に伸ばすようにするのと一緒に、広場の方ではゴンドラが鈍い音を立てながらこの階層に降りてきていて、それに続くように高い音が等間隔で聞こえてくる。それに対して、前者の時には私は一瞬だけ息が止まって、でも口は上を持ち上げるようにして開いていた。でも、それも後者のに合わせて数回心臓が強く動くのを感じると共に、眉間の辺りにしわを寄せるようにするけど、それも数秒間の間だけ。向こうの音が聞こえなくなると共に、息を一回吐きながら床に向けて行った。


 その後、顔を下に向けたままほとんど動かさないでいるのに、周囲では一切音がしない。目線だけを広場の方に向けるけど、そっちに見えているのはわずかな範囲だけで、中央へと繋がっているすり鉢状の階段も見えていなかった。


 もう一度心の中で杏の姿を思い浮かべる。私の隣に座ろうとして正面に移って行った杏。その時の表情をその中で作っていくと、両手を壁に突いたままの状態で、頭をそっちに向けて近づけていく。でも、髪がつぶれる音がわずかにするだけで、それ以外には壁の冷たい感覚が感じ取れるくらいで、何も感じないし音も出ない。そう思ったその瞬間のこと、明るくなってる方から動きがあった。


「決まった、ということでいいでありますね」


 東雲の声がしたと思った次の瞬間にはその声は聞こえなくなってて。それに気づくよりも早く私の顔が持ち上がって口を強く噛み締める。意識して呼吸を繰り返して体の中に空気を入れるようにしたけど、それで少し胸が膨らんだような気がしたくらいで、それから少し左右におろした手を振ってから吐き出して。足の裏を滑らせるようにして向きを変えながら、目を瞑って顔だけで下を向いてから前を向いた。


 それから体を軽く前のめりにしながら駆け足で進んで行くと、両方の腕を半分だけ曲げた状態のまま、前後に振って足を大きく開くようにしながら走る。その度に足音がして、そのせいか、私が通路から出たら広場に差しかかった瞬間にそこにいた全員が全く動いてないのにこっちを見てるのに気付いて、すぐに足を止めようとするけど、その瞬間に滑って予想よりも前に出てしまった。


 その後、足を曲げた状態で膝に手を突いて一旦ため息を吐く。それと一緒に髪の毛も頭にぶら下がるようにゆっくりと落っこちてきておでこを撫でた。そのくすぐったさに息を少しだけ吐く。でも、目が動きそうになった瞬間におでこを自分の方へと近づけるようにした。


 それから、何回か息を吸ったり吐いたりを繰り返して、それと合わせて背中も上下に動くのを感じてから、意識を前の方に向けると、向こう側にいる女子たちがわずかに動いている気がして、実際影も少しだけ動いている。しかし、それでも声とかは一切聞こえてこなくて。その数秒間を味合わされると、膝を掴むようにしている両手の指を全部押しこむようにする。そして、顔を持ち上げた。


「待て……!」


 鋭い息を吐きながら、顔だけを動かすと、私を見下ろすようにしている姉御の人やハリーや東雲の姿。おでこを少し上に持ち上げながら口を少しだけ開いてる私に対して、姉御の人は閉じながら唇を少しだけ中に入れるようにしている。しかし、その一方で、ハリーは目が合った瞬間に、体がわずかに横に傾いて顔の半分がその後ろへと隠れてしまった。そして、東雲はいつも通りのまま。


 他の姉御の人の仲間もこっちを見ていて、それに対して私も回すようにしてその1人ずつと目線を合わせるように。その後、メンバーたちがいる広場の中央とは違う、階段の上となる壁際に集まっている女子たちの方も見てみると、少し体を後ろにするようにしていた。


 その様子を数秒間見てから、息を止めるようにして体を持ち上げる。まっすぐに立った。そのタイミングで息を僅かに吐きながら東雲を見ると、すぐに視線が合う。その後に口を閉じて上のと下の唇同士を合わせて力を籠める。でも、向こうはいつも通りのままで、でもしばらく喋らずにいる私をじっと見ていた。


「私も、やる……!」


 両手を握りしめながら、言葉の一つ一つを強調するように話していった。それが終わった後も、歯を噛み締めるようにしながらじっとそっちの方を見る。でも、東雲は相変わらずのポーカーフェイスのままで。それが数秒間経ったあたりで、背中を向けてエレベーターの方へと進んで行った。




 東雲の後ろをついて歩いていくと、すぐにその手下がこっちに手招きしてきて、姉御の人とハリーとその仲間数人と共にゴンドラの中へと乗り込む。それと一緒に、息を飲みながら私はまた自分の腕を体に付けるようにしながらいると、すぐに上へと持ち上がり始めて、その瞬間にわずかに足を拡げるようにすると、パーカーの下に着てる制服の中にも風が入り込むようになって体が冷たくなるのを感じる。それのせいで上瞼が少しだけ持ち上がるようになるけど、すぐに歯を噛み締めるようにして元に戻す。


 でも私の前だけ開けたパーカーはフードが頭にぶつかって来るけど、その一方で体の側はふわりと持ち上がるようになっている。でも、そこに力を籠めることでその動きを止めるように。でも、周囲のゴンドラは止まって行こうとはしなかった。


 それは何度も大きな音を立てながらそれと一緒に辺りを振動させて行く。でも、その度に息を飲むようにして、少し上の方を見るけど、そこにあるのは硬そうな鉄の柱だけで。角ばった角を四方向に向けているそれが横へと延びるように続いているだけだった。でも、それも私たちの頭上を囲う様に長方形を描いてて、それは私だけじゃなくて姉御の人も東雲も全員がその中にいる。しかし、それもゴンドラの一部であるせいもあって、それが揺れるたびに一緒に動いている。


 私たちが乗っているそれの外側は、地下室からずっと続いているコンクリートの壁があるだけで、灰色の中に少しづつ汚れのように黒い箇所もあるけど、それはどれもこれも素早く視界からいなくなるせいでとても見ていられない。でも、そっちを奥にしている目から眺めるようにしているせいか、次に流れてくる模様が視界に入って、それは水をぶちまけたようにさっきとは全然違う見た目をしていたと思ったけど、また同じような物がすぐにやって来る。それをまるで無限に繰り返し続けているよう。でも、そっちをずっと見続けている私の耳元にはやはりゴンドラが揺れる音が聞こえて来るだけだった。


 それが止まったのは、一層大きな鉄がぶつかるような低いのがした瞬間で、その瞬間に私の体が一瞬だけ一気に鳥肌が立ったようにすらも感じ取って、息を強く吸い込みながら数回瞬きを繰り返す。


 でも、そのすぐあとに東雲が私の真横を通っていくのと共に、わずかな風が起きたのと、鉄の床を叩く高い音が等間隔でするだけ。それ以外には音も何もしなくて、すぐにその進行方向とは違う方、姉御の人やハリーを始めとしたその仲間らがいる方へと腰をひねって振り返ると、姉御の人は口を吸い込むように左右へとえくぼを作りながら、喉を飲み込むように動かしている。


 それから、私と目が合うと首を動かすようにうなずいてきて、それから歩き出していた。そして、こっちはすぐにハリーの方へと向こうとするけど、そっちはその後を少しだけ前かがみになるように歩いて行っている。でも、私を通り越して2秒くらいで姉御の人のすぐ後ろに付くとその歩幅も小さくなっていた。


 その後を数人の仲間が後を追っていくだけで、私が視線を向けている方には、両足を開くようにして立っている東雲の部下の男だけになって。フードを引っ張りながら私も小刻みでそっちの方へと向かおうとした瞬間、赤色の本体と金色の四角く角が出ている大きな手すりを持っている分厚そうなドアに顔を向けながら、ヘッドセットに触れた東雲が何かを口にする。


 それと同じタイミングでドアが大きな音を立てたと思ったら、それと全く同じタイミングで外から男たちの低い大声が何度も繰り返し聞こえて来た。そして、そこから入って来る砂煙に混じった黄色と赤が混じり合ったような色の光で、瞼を薄くしながら左手を顔の前に持って行きながら右肩を下げるようにさせられた。


「お姉さま、お待ちしてました」


 そこで口を横に広げて目を細めつつそこを輝かせている私よりも少しだけ背の高い黒髪の少女がお腹の少し上辺りで頭を下げている。2つのどちらも語尾を上げながら話した彼女は数秒間下げたままにしていたけれど、その直後にその黒い瞳を東雲の青いのと合わせるように。それから、すぐ横を歩いて行った姉の背中を追いかけて行こうとしたけど、視線だけにしていて、すぐにこっちへと振り返っていた。


 その瞬間、横に広がるように私と姉御の人の仲間がその前に立ち止まると私は小さく開いてる口からわずかに息を吐き出しそうになるけど、それと同じタイミングで口を締める。それと一緒に頭を正面に向けて脇を強く締め付ける。そうしていると呼吸で体が上下に動いているのを感じ取ったから、足に力を込めてわずかに足を曲げるように。でも、東雲の妹がいる方から聞こえてくる歓声がうるさすぎて、周囲から音が聞こえてこず、でも下唇をもっと上に持っていくようにしていることで気持ちを抑え込んだ。


 それに対して、妹は両手を組みつつ首を肩の方へと曲げるようにしながら上瞼を下ろしつつ、口を開けて状態で見つめて来る。それと正面にいる私が視線を合わせることになるけど、その次には顔はそのままに目線を左右へと動かし始めていた。でも、こっちは引き続き肩を持ち上げながらそっちを見続ける。


「お前らはこれからお姉さまが用意した実験材料と戦ってもらう。ルール無用。どっちかが死ぬまでやる」


 さっきとは違う低い声を出して話し始める少女はこっちを見る目線を持ち上げるように顎をこっちへと向け始めている。それを見て顔を右に反らしそうになったけど、すぐに髪の毛が擦れたのを感じたのに合わせて目を瞑ってから正面にそれを戻す。しかし、その数秒の間に向こうはそのまま一切変わろうとしなかった。肘の硬い場所が自分の体を締め付けてきて背筋が冷たくなるのを感じる。でも、それに対して、妹の背中側からやって来る熱い空気のせいで額の辺りを汗が一滴落っこちそうになって、頭が痛くなりそうだった。


 それに対して、また妹は頬で口元を引っ張るようにするだけで。それによって歯を見せているだけだった。でも、それを数秒間見ていた私は、口を僅かに開いて顔全体から力が抜けているのに気付いて。すぐにおでこの辺りにしわを一気に作るようにするけど、それと一緒に息まで止めたのにすぐに元に戻って行きそうになってた。


 すぐに後ろに振り返ろうとするけどそっちにあるのは止まったままになっているエレベーターの四角い鉄でできた外装だけで、そこに乗っているサングラスをかけた黒服2人が後ろに両手を合わせるようにしながらまっすぐに立っているだけ。そっちを見ているだけなのに、ただ肩を同じ方向に向けているのもあって、足が一度そっちに滑りそうになるけど、そっちに視線が向くと一緒に、姉御の仲間の人たちがそっちにいるのに改めて気づいて、すぐにまっすぐ前へと向き直った。でも、そっちは妹の人が同じポーズのままでいるだけだった。


「死ぬ準備は出来ましたか?」


 一瞬だけ顎を上に押し付けるようにしたまま、そっちの方を眺める。でも、向こうは相変わらずそのままの体勢でこっちを見つめてるだけだった。それに対して、こっちは周りの足音を一回だけ聞いたタイミングですぐに口を開けて、喉から言葉にならない声を出しながら、整えてもう一度喉を開く。それから、数歩だけ前へと進んでその背中へと向けるようにした。


「……あぁ」


 言葉を私が言い終わる前に、話し始めた瞬間に妹の人が振り返ってもう先へと進もうとしていた姉御の人たちの跡を追いかけていくように早歩きで進んで行こうとするけど、その間をすり抜けていくように体をねじりながら歩いてた。それの後に彼女が先頭に立つと、ペースを普通に歩くくらいの速さになってて、私もその後を追いかけていくようにすると、その眩しい光の中へとこっちも入っていった。

読了ありがとうございます。

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