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Lunatic  作者: コンテナ店子
第一部中編
29/216

第29話

今日から可能な限り書けたら投稿していこうと思います。

 エレベーターに乗って上に行っている間、私の2倍はありそうな大柄な男たちに左右の後ろに立たれてて、体が振動で揺れるたびに腕同士に力を込めて自分の体に押しこむようにする。それと一緒に鼻から息が出たり、小さな声が出たりしたけど、それもすべて周囲の振動の音にかき消された。そしてそのまま、体の中でも特におでこの辺りに力がこもって、その度に目をつぶったり口に強い力を籠めたりしたけど、その間も後ろにある気配は消えなくて。


 その姿勢のまま私は腕で体を抱えるようにするくらいしか動かせなくなっていったと思った時、後ろから低い声で「まっすぐ立て」と言われて、それと一緒に私の頭がびくっと小さく反応したけど、言われた通りにはすぐには出来なくて。でも、出来るだけ体を動かさないようにしながら視線だけを向けて後ろを振り返ったら2人のうちの1人がこっちを見てて、口元を軽く緩めるようにする。


それを見てたら、すぐに目を閉じながら肩を持ち上げるようになってて、鼻を数回吸う様に動かす。でも、それでもエレベーターは全然到着する気配がなくて、周囲の揺れだけをただただ数えているだけだった。


 そして、エレベーターの動きが止まった時にようやく、肩が重くなったのに気付いて、後ろにいた人たちが歩き出した瞬間、一瞬だけおでこの辺りを触ってため息をつくと、少し横に広がった肘が男の人たちとぶつかって、それと一緒に体をまっすぐにして私も歩き出した。




 メアリーたちと会った時以来に会ったカウンセラーの女性と一緒にまた同じ部屋の中に戻ると、仕切りの中央より少し下の辺りにガムテープで閉じられた箇所があって、それのせいで丸を描くように作られてた点の集合が半欠けみたいになっている。そして、それは灯りが向こう側のしかついていないせいで、暗い中で座ってる私が、わずかに黄色と白が混じり合ってるそこを眺めるようにするけど、その穴たちの上部が透明の中でもわずかに黒くなっているよう。


 それから視線を戻すと、わずかに赤と黒と茶色が混じり合ったカウンターが私の目の前にあって、そこに触れようとすると、その瞬間に冷たい感覚が伝わってきて、でも、瞼を少しだけ降ろすようにしてそれをただただ見つめるようにしている。肩よりも少し下くらいにあるその位置に触れるには、腕を少しだけだけど持ち上げないといけなくてそうしているだけで腕と肩が余計に重くなって、降ろした時にはそれらがわずかに前のめりになるように。その間も後ろにいるカウンセラーはただただこっちを見ている姿がわずかに反射して映っているのに対して、私の方は垂れたうさ耳を乗っけたパーカーを被っている姿が斜めになっていた。


 両手を腰の辺りで重ねて立ってる仕切りの中のカウンセラーを見つめている時、向こうにあるアルミで出来た硬い扉が大きな音を立てながら開いてて、その音を聞いた瞬間に、斜めになって体が一気に持ち上がって、椅子をずるずると音を立てるようにしながら足で後ろに動かす。そして肩を床と平行にするのを意識して立ち上がったけど、そこにいたのは警備員の制服を着ているおっさんで。瞼と口をいつもの位置に戻すように動かした。そのつもりだったけど、口の中が乾燥してるせいでその中で舌を動かしつつ下におろした握りこぶしをちょっとだけ軽く力を抜いてからもう一度握りしめた時、中から顎を少し引いておでこごと、丸い目を上目遣いにしているようにこっちを見て来てるメアリーが出て来た。


 それから片手で一瞬だけパイプ椅子を掴んで力を籠めると、こっちとは背もたれが斜めになるような位置で勝手に止まったそれの上に座るメアリー。それから腕を組み終えたと思った瞬間、また同じような角度の視線でこっちを見たと思ったら、すこしだけ口を開けるようにしてた。


「メアリー……」


「私、それ渡しに来ただけだから」


 私が顔を肩の方へと引っ込ませるようにしながら、膝の上で両手を組み合わせるようにしていると、口を開いた瞬間、言葉が上手く出なくて視線を下に向けながら、もう一度開けて話す。でも、最後を伸ばしながらだんだん消そうとした途端、メアリーが少し早口めに言葉を発して、それを聞いた途端私の口の中からも言葉が消えて顔を持ち上げながらそっちを見る。


 メアリーが軽く出した指の先には、私が外にいた時に使ってた赤色のスマホがあって、その画面が何もない天井を映しているのが見えた。それを私は椅子から一回だけ音を立てるようにして、それの上をかぶせそうな位置に手を出しながらゆっくりと立ち上がった。


「あんたの親が渡せって言ってたから、動画見といて。それじゃあ」


 私が完全に立ち上がるよりも前にポケットに手を入れたままメアリーは立ち上がって、そのまま背中をこっちに向けるようにしながら口を動かす。そこから出た声は、ほぼほぼ抑揚のないままに話して。肘が内側に曲がって前のポケットに伸びて行ってるせいか体のふくらみに沿って腕が進んで行ってた。


 でも、その少しだけ茶色に染まってる髪の毛のほとんどはその座ったままの姿勢でいるとガムテープで覆われた個所に隠れてしまっている。それに、そっちを目線を向けようとすると、上にある照明が眩しくて目がかすみそうになった。


 しかも、いつの間にか足が座面の角の所に重なってて、さらにその上に強く握りしめた手があったけど、それが太ももの中に押しこまれるくらいになってて、その上にスカートのしわが出来上がってるけど、膝にはわずかな痛みしかない。


 そこから視線を逸らすと、私やカウンターの影が出来上がってて、そこに丸い黒色の点がいくつもあるのが分かる。そして、その中に少しだけ茶色が混じり合ってて、それを見てるだけでだんだん背筋が冷たくなった。


「めっ、メアリー……」


 目に力を込めながら、最初と最後を上げるように言葉が出た。でも、それだけで喉が痛くなるような感覚があって。咳き込みそうになるけど、学校のセーラー服に覆われた背中を半透明な仕切り越しに、顎を引っ張りながら見つめる。そして、しばらく息も出来ないくらいの間があって。でも、メアリーはその瞬間に足の動きを数歩進めながら振り返ってきて、それが終わったのと一緒にこっちの言葉も止まった。


「なに」


 最初を持ち上げるように、低い声を出してくるメアリー。それを聞いてから私も話そうとするけど、口から出たのは言葉になってないわずかな音だけだった。目あら力が抜けるようになると、向こうはもう既に開いたドアの冊子の向こうに行ってて、その体がある場所は上部から明るく照らされているせいか一切影もないのに、こっちからはその姿がしっかりと見えてて、それを見てるだけで目が痛くなりそうだった。


 それに対して、そっちはカウンターの下でそこで影が混じり合ってて、足元のしか見えない。膝に乗っかった腕がだんだん滑って落っこちて行くのを感じる。それと一緒に、肩もそっちに落っこちて行くのを感じると、汚れで黒くなり始めてる上履きもいる地面に向かってどんどん視界が暗くなっていく。でも、その間もメアリーが靴で地面を叩いていく高い音がこっちにも聞こえてきて、そう思ったけど、だんだんドアが少しづつ重い音を立てながら締まって行くのが大きくなっていく方が大きくなってて。爪が引っかかる音と一緒にかき消した。


「木月さん、もう次の人が順番を待ってるのよ」


 数秒後、しばらく何も音がしないはずだったのに、全然経ってないうちに、いきなり後ろの方からカウンセラーの声がした。それはゆっくりと話しているようではあるけれど、語尾は下げるようにしてて、そっちの方を歯を少しだけ食いしばるようにしながら眉に力を込めて膝に付いた手を握りしめてから勢いよくそっちを見るようにするけど、向こうは腕を鼠径部の辺りで重ねているだけで。眉を持ち上げるようにしながら少しだけ底を前にするようにしながらこっちを立って見詰めてた。


 それと視線が合うと立ててた腕の肘がわずかに曲がって、左側の肩が滑るように下を向く。それで溜まってた息が喉から溢れるように音を立てて出て来ると、そこから視線を自分から反らして、足の辺りを見ることになると、その黒いスーツで包まれた体とまっすぐに膝の辺りにまで伸びていくスカートを見つめることになって、自分のスカートのプリーツを握りしめてしわを作った。


「あのね、信じたくない気持ちはわかるけど、今は集団生活に慣れて、ゆっくりと現実を受け止めることが最優先なの」


 もう一度両手の肘を膝の上に乗せるようにして、ゆっくりと下を向く。それと一緒に爪を立てながら手を組みなおす。さらに、そのまま膝を押し込んでもう一度椅子の上に座り込む。目を細めて、頭を前へと出すと、カウンターの角にそれが髪の毛とフードを挟んでぶつかって小さな音がする。でも、そのままそこに重さを押し付けるようにしてると、暖房の勢いが変わる音が1回だけした。


「勝手なこと、言わないで、ください……」


 木で出来てるせいか少しだけえぐれたカウンターはフードを介してとがった先端が私の方にぶつかってきて、その熱さに耐え切れなくなって目を強く瞑ると、声がだんだん震えだして、思ったよりも声が大きくなってしまう。


 でも、それに気づいたのは言葉を言い終えてから少しした後で。その後に喉が痛くなる気がする。それでも頭の下で組ませた両手の指の間同士がぶつかり合うのが痛くて痛くて仕方がなくて。でも、そこに込める力をより強くした。


 私の目を思い切り開きながら息を思い切り吐こうとした瞬間、私の後ろでもドアが閉まる音がして。それに続くように聞こえて来た廊下を叩く音も耳に入った瞬間、目が大きく開いたと思ったら、一緒に息を強く吸い込んで。また目の前の仕切りに移った私と目が合った。


 そこにいる私に触れるように手の平を限界まで広げた状態で少しづつ近づけていったけど、その結果触れたのは、ただただ冷たいだけの感覚で。それ以外には何もない。

読了ありがとうございました。

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