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Lunatic  作者: コンテナ店子
第一部中編
27/216

第27話

 誰もいない自分の部屋で腕を曲げながらそれを枕のように頭を乗せて。そのままベッドの上に体を投げたままにしてた。その姿勢は若干下を向くようになっていたせいか、視界の先には肘と膝がくっつきそうな位置に並べてあるだけ。そして、それら2つの先にはコンクリートでできた灰色の壁があり、部屋の灯りが外から入ってくるのだけなせいで、ほとんど黒くなっていた。


 外からはわずかに声や人が歩く音が聞こえてきて、でも数秒間でそれも消えてなくなる。そして、また来たと思った瞬間にも一緒だった。それが居なくなったのに気づいたのはもう周囲から明かりもなくなった時のことで、そうなったのはドアを開けながら大きくため息をついたハリーが現れたからだった。


 その音を聞いた瞬間、私の目も上の瞼が反応したのに気付いて、口も小さく開く。でも、そのままいたら、向こうは体をまっすぐに伸ばしながら鼻から息を吹き出しつつ、腕を一気に降ろしてる。その音を聞いてたら、私は背中側に向けてる右手を動かして小さな言葉にならない声を出してから話し始めた。


「あっ、ハリー……」


 小さく声を出してみた物の、向こうからベッドの上に体を投げ出してバウンドした音がしたせいか、まったく返事はなく、そっちをしばらく見てたけど言葉を何も発せずに聞こえて来たのは息の音だけだった。その様子を数秒間眺めてたら、顔が下の方を向いて、息をゆっくりと吐くようにするとそのまま瞼を下ろすようにする。それだけで、肘のみを頼りにして体を持ち上げているような体勢をしてたせいか、体が重くなったような気がして、ゆっくりと下を向く。


 しばらくそのままでいたけど、その後布団を上から被るようにしたら、体が震えあがるように背筋がまっすぐになって、両手で握った布団を自分の体に強く引き込むようにした。


 




 上履きを脱いで靴下一枚だけで床に触れると、それと一緒に息を止める。でも、その直後にハリーの寝息が吐き出すのを感じたから、両手を下にむけて関節を曲げるようにしながら慎重に進んで行く。でも、向こうは静かなままで、私が部屋から出て行こうとした時も、やっぱり動こうとはしない。そのままドアを閉めたら、一旦そこに背中を押し付けながら息を吐く。首を曲げて下の方を見ると、自分の黒いだぼだぼなうさ耳パーカーに包まれた体があって、その右腕を左の手でつかむと、それだけで両方の指が重なった。それから、口を紡ぐようにして、背中をそのままにおでこを僅かに前に出すように。気づけば、足が少しだけ前に出てて、足首より上は斜めに伸びてた。


 しばらく歩いて行ってる間、周囲はほぼ真っ暗で、まれにある天上の照明がある場所も含めてドアがない方の壁に手を突きながらそれを滑らせて進んで行く。そうすると、そこにある目にも見えないほどの凸凹が指へと存在を訴えてきて、その度に辺りを見回す。でも、そこに見えてるのもコンクリートに出来たわずかな汚れだけ。それも私が進んで行く間に視界の外へと消えて行ってしまった。


 ただ、それと一緒に反対側へと視線を戻すと、ずっと数えてたドアの数が求めてたのと一緒になる。その冷たそうな様子をじっと見つめながら、歯の奥を噛み締め視線をそらした。でも、私の左側には来た道と同じようにドアがいくつも並んでるだけで、それを見ててもただ暗い中にたまに照明があるだけでそれ同士の間は何も見えない暗闇だけだった。


 一回自分の中で喉を鳴らすように動かしてから、小さく「よし」と語尾を上げながら伸ばすようにつぶやいて、部屋の中に入って行った。


 そうすると、1個だけあるこっちに足側が来るように置かれたベッドの上に座って両手を組んだまま頭と髪の毛を下に向けてる姉御の人がただ1人いた。その背中は少しだけ曲がったまま、私がドアに片手をかけたまま立ち尽くしても一切動かないままでいて、その手を下ろしてからゆっくりと電気も付いていない部屋を進んで行く。そうすると、部屋の中でも上履きが音を鳴らしながら床を叩くのが聞こえてきて、それに眉毛をちょっとだけ動かすと、唇を中へと動かすようにして力を入れた。 


さらに、ただ真っ直ぐ進み続けて姉御の人の斜め前辺りに立つ。それと一緒に両手の動きも止めたせいか、パーカーとフード全体が私の体に乗っかるようにわずかな重みを与えて来る。そして、髪の毛も私のおでこに張り付いてくるみたいでその先端が引っかかった。


「やっぱり私は魔女、ルナティックだ。でも……」


 言葉が1文字ずつ出していくようにするけど、それでもちゃんと声が出なくて。何度も繰り返すことになる。そして、最後の方は小さく息を吐くようにしながら話した。そして、それと同時進行で視線も斜め横に反らす。でも、そっち側には外から入ってきてる本当に僅かな灯りだけが出て来てただけ。そして、そこに私のそれよりも薄い影が出来上がってる。でも、向こうの体はただただ闇の中に入ってて、どこにも影はなかった。


 そして、私が言葉を話しても、向こうは微動たりともしなくて、髪の毛の先端が地面へと落っこちながら空中に伸びて行ってるのが見える。その隙間から口元を見ると、唇はわずかに開いてるのに対して完全に閉じてる歯。それは眺めてるだけで力が相当に籠っているのを分かった。でも、瞼が小さく震えるだけ。すぐにまた視線を元の斜め下に戻した。


「それは私の中だけの話なんだ」


 目を強く瞑る。そうすると、視界が真っ暗の中に赤くてギザギザした線が通り始めて、それが点滅するようになる。でも、私は皮膚の前にしわを深く作っただけだった。さらに、線がない場所には輪っかのようなものが動き出して、その中にぼやけた何かが映ってて。脇を締めるように腕を体に押し付ける。


 それも数秒間そのままにしてると、苦しくて少しずつ鼻を吐いていく。さらに体を下に動かしていくのに対して、それが終わった後はそのままにしてた。


 少しだけ瞼を開けると、姉御の人は太ももの上に肘を置きつつ両手の指同士を組みながらその人差し指におでこを押すようにしてる。そのまましばらくいるせいか、髪の毛が他の指の上に乗っかってた。そうしている間は、だんだん指同士の隙間がなくなっていくように少しづつ指の関節が持ち上がっていくのが見えた。


「……私も年貢の納め時だな」


一度大きくため息をつきながら肩を落とす姉御の人。その直後に髪の毛の乗っかっている場所が少しだけ広がる。さらに、その数秒後に一度だけ声をどもらせてから、言葉を出した。それを聞いた瞬間、音を鳴らしながら私の首が息を吸って、そのまま止まった。目も大きく開いてて。すぐに近寄ろうと足が一歩動いた瞬間、そのまま動かないながらも、こっちに大きく尖った肩だったり、何より手と顔の隙間から見える目がまっすぐに姉御の人の顔の正面を向いているのが見えた瞬間、止まった。


「……どうして、なんだよ」


 一度途中まで声を上げながらも、いったん止めた後はゆっくりと落としていく。肩を落としながら頭を斜めに傾ける。限界までじゃないけど、目を強く瞑る。息を口から小刻みに吸うたびに、鼻を動かす。その音がするだけで、周囲からは音も消えてなくなって。上の方を僅かに見つめようとするけど、そっちにはコンクリートの天井があるだけで。そこは陰で暗くなった灰色がわずかに見えているだけ。その姿勢のまままた同じ動きをした。


「後は頼んだぞ」


 私と姉御の人しかいない部屋の中で、その言葉は消えてなくなりそうで、聞こえた瞬間にはっとしてそっちに視線を向けなかったら逃してしまいそうなくらい。そっちに近づこうとするけど、でも、手が持ち上がって先端が向かいそうになったと思ったのに、結局地面を向いたまま。口が閉じてるせいで息が苦しいけど、それもとても開けられなくて。手を強く握ろうとしたけど、爪も肌に引っ掛かるように。それが痛いけど、歯が一瞬だけ擦れるように動いただけだった。


 ゆっくりと顔を持ち上げながらも角度を変えるだけでまだ伏せがちにしながら向こうを見るけど、あっちもあっちでベッドがわずかにきしんだ音がして、そっちを見ると長いスカートに包まれたお尻の周りにいくつものベッドのしわが出来上がってる。そこが黒い影になってて何も見えなくなってる。それと一緒に背中が後ろに向かって動いて、より頭が下に向かうようになった。


 それから、私の方から進んで肩を落としながら振り返って、地面を見ながら小走りで進み始める。ほとんど足が持ち上がらなくて、擦れそうに。でも、無理やり持ち上げようにもそれが出来なくて。体が転びそうになりながらも部屋を出る時にはいったん足を止めた。


「やれるだけのことはやる、お前も気が変わったら来い」


 部屋のドアに付けた手に力を込めながらそれを利用してまっすぐ来た道を戻ろうとする。それと一緒に体が前へと進もうとしたけど、足が前に進まなくて、体のバランスが前のめりになったのに気付いてから急いで大股で足を前に出す。でも、それでも体の勢いは抑えきれなくて、顔が下を向いた。そして、髪の毛も一気にフードと一緒に落っこちて来る。さっきよりも瞼が震えて、口を思い切り勢いに任せて開いたら、それとに合わせて唾液が飛び散った。


「メアリー、セレニア、クラリッサ……」


 何度も咳き込んでから、その勢いで体が地面に落っこちる。そのまま体を支えるために立てた手も曲がって。地面へ手を強く握りしめるように押し付けると、おでこもその上において。小さな砂利が擦れるのを感じながら膝を自分の方へと近づけるように動かす。歯を前に出すように口を開けて力を強めるけど、それと一緒におでこを腕の上で擦りながら顎を持ち上げるようにした。


「……杏」


 小さくそう呟いたけど、周囲からは音も何もしなくて、周囲の寒さがパーカーから出た肌に突き刺さる。それと一緒に息が漏れるように出て来ると、歯を擦るようになっていた。でも、それらの音は私から聞こえて来て以降はどこからも聞こえてこなくて。ただただ何回か大きく呼吸を繰り返してから、片方の膝だけを立てるようにしてからそこに力を込めて立ち上がって。腕を前に出すようなポーズでいると、頭をそのまま下に向けてて、その直後に体を姉御の人の部屋があった方の壁とは違う方へ進んで行くと、そこに寄りかかるようになった。瞼を少しだけ降ろしながら、周囲を僅かに力を籠めたり外したりを繰り返す。でも、頭がそれと合わせてわずかに動いてたけど、だんだんそれも消えてなくなった。

読了ありがとうございます

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