第212話
ハンと別れてから数分体重を壁の方に預けながら小刻みに動かす足取りで何度も呼吸を繰り返しつつ前のめりになって進んで行っている間、両方の手をそっちにくっつけながら足を滑らせるようにしてて。それが突き当りにまで来たら、勢いよく体を前のめりにしながら歩き出し、そのまま反対側の壁にまで行くと、ほとんど体の重さにだけ従って進んで行くことになる。
ただ、そっちに体が行った瞬間、まずは両方の腕を前に持ってくる感じのままおでこを壁にくっつけて何度も呼吸を繰り返す。一方で、それに対して横の方は私のところまでは今も残っている物の、上の方が誰かの攻撃のせいでデコボコと不規則な側面を見せている物の、それは確実にすこしずつ下の方へと向かっているようで、一方でこっちもこっちで頭を下に向けながら目を細めるようにしているだけにしておいて。そのままにしてようとするけど、ただただ後ろの方で漂ってる魔力だけを感じてしまって喉を締め付けるみたいにしながら目を細く開こうとして、また顔をわずかに上へと上げながら杏の名前を呼ぶ。でも、わずかに息を吸ったり吐いたりしながら辺りを見渡すようにするけど、それでも、わずかに上の方から斜めに月の光が入っているのが見えるくらいで。それを体を振り返らせるようなポーズのまま見つめるけれど、それに対して辺りでは何かが反応することはない。
それからまた片方の手だけを付けて一瞬だけ離したり戻したりを繰り返すみたいにしながら先へと進んで行くけど、私の周りにはただ手で擦るザラザラした感覚と、それ以外だと足元でたくさん転がっている細かい砂や靴で蹴飛ばせるくらいのがれきくらいで。それにつま先が振れると、乾いた音が繰り返し聞こえると、どこかへと落っこちて行って、それが小さく聞こえるかのようであった。
しかし、それを聞いてたと思った数秒後、私が足を止めながら体を下へと向けている間に、急に大きな地震が起きたと思って体を反射的にかがめながら目を瞑る。しかし、それと共にやって来た揺れで辺りが次から次へと砂を落としながら揺れるのに気づいたら、いきなり通路を通って突風と砂ぼこりがこっちに吹き起こり、その勢いで体が突き飛ばされたと思った次の瞬間下から床がなくなったのに気づいてそっちの方を一度見ると、建物たちが赤く燃え滾りながらもそれと砂煙が交じり合った夜の闇よりも黒いのがそっちの方から広がってて。息を吸い込みながら目を大きく開いて。何度も顔を振ってから体が重力に引かれて落っこち始めるのに合わせて下へと向かい始めるのに気づいた瞬間、体にない力を無理やり入れることで電気の縄を作り出して壁のところに投げつけることで振り子のように前へと出ると体をさっきよりも数個下の階へと転がり込んで、その勢いのままに壁にぶつかるまで横に進んで行くと、そのまま壁に激突。唾液と血を一緒に飛ばす咳を背中から噴き出す。
その音は、何度も建物の中を反響していくこともなく、何度も何度も私の方へとだけ聞こえて来るようで、それに対してこっちはわずかな目を開けながら体を横に倒したままにする。そして、それに続いて髪の毛をまっすぐ前に、地面と平行にしている顔と同じ方向へと垂れている。さらに、上側の顔の方の髪も重力に従って私の頭にくっついたままにしてて。顎を上へとくっつけるようにしていて。ひっこめながら鼻を小刻みに上へと持っていったり戻したりするのを何度も繰り返すみたいにしてた。
ただ、じっとして体から力が入らないままずっと寝ころんで両方の腕を頭とほぼ同じ方向で肘の所だけをほんの少しだけ折り曲げたままわずかに口を開けてたら、近くからほんの少しだけ泡があふれるような音が聞こえて来て。そっちの方を見たら、わずかな息と一緒に上半身だけを腕で持ち上げながら首を横へと向ける。
一方で、一糸もまとわぬ姿のままただただ培養ポッドの液体の中で体を上下にしている杏は数秒に一度程出てくる泡の音を私の方へと聞かせていて。それは体の上をすべるようにすらもなっていて、一切形が崩れることはない。さらに、そこで浮かび続けている体がそれのせいで動く形が変わったりはしないでいた。
私はずっと杏の方を両方の膝をまっすぐに並べて正座する体勢のままそれよりも少しだけ前の方に両方の手をずっと床の上にくっつけたまま、暗闇の中に交じり合うような青白い色と交じり合うような色を壁や床の私には届かないところで照らし続けていた。
また、その体がずっと浮かび続けていて左右の人間の皮膚が残っている部分とそうじゃない機械の腕になっている部分のどっちもをこっちの方へと見せている杏がずっとそれらを同じように機械に繋がれた管に引かれるように両方の腕を斜め上へと伸ばす形にしている。それに対して、ずっと光をいくつも違う色ごとに並べている機械が培養ポッドの前に安置させていて。それだけが水の色を含んだ光に照らされるまま、ゆっくりと聞こえて来る機械の音と溶液がわずかに揺れる音だけを私の方へと聞かせてくる。一方で、こっちはこっちで近くの壁に手をくっつけたまま立ち上がると、何度も何度も体を上下させる感じで動かし続けているのと、すぐに体のバランスを崩しながら足を落っことして高い音を立ててる物の、杏の方をすぐに見ても向こうは一切動かないでただ顔を下へと向けるまま上下に水と一緒に揺れ続けているだけ。
そっちをほんの少しだけ口を開けたままにして見つめてる私に対して、また近くから大きな地震のような音と一緒に当たりが揺れ始めて。こっちの体は一気にバランスを崩しながら壁に体をぶつけてしまう感じに。しかし、それで終わらず天井から砂煙が漏れ始めたと思った瞬間、歯を噛みしめながら顔を地面へと向けるようにして歯を食いしばって。一方で、その直後に後ろの方からすごい音がしたと思ったら、砕けた天井と上の階の床が抜けて一気にこっちの階へと落っこちた音で、私が息を吸い込みながら背中をまっすぐに伸ばしてそっちの方を見てるのに対して、辺りではどんどん下の唇を上のにくっつける感じで見てる。
でもさっきのおっきいののほどじゃないけど、また次から次へと辺りから落っこちてくるものが多い中で、私の方にその落っこちてくることで起きる空気の動きすらも感じる距離に来るものすらもあって、息を吸い込みながら喉を締め付ける感じにしながら顔を上に向ける。両方の手を上に持ってきて地面から離すと、何度も呼吸を繰り返しながら目線を左右に繰り返し動かす感じにしてる。
それから、頭を勢いよく正面に持っていく感じで頭を前のめりにして、数秒感じっとおでこを前に持っていくまま動かない。
「杏……」
ほんの少しだけ声を出しながら体を前に進めて。その跡また天井が壊れて私の近くにもそれが落っこちて来るのを感じるし、それだけじゃなくて、上から落っこちてくる衝撃に耐えきれなくなったのか、床が壊れてまた下の階へと重なっていた物が落っこちて行くようになっていて。そっちの方から砂煙がこっちの階に上がってきてる。
一方で、私はおでこをずっと培養ポッドのグラスにぶつけてると、その冷たさを髪の毛越しに味わう感じになって、ずっと口を小さくすぼめるみたいにしながらその感覚を味わい続けてるけど、それに対して、そっちの温度が変わることがないせいもあって、ずっと表情をそのままにしてる。
ただ、私がただただじっとしてる間も、ポッドの中では気泡がわずかに動いてるのが上に向かって持ち上がっていく姿が視界に入る。でも、それが私の頭の前の所を過ぎ去っていっても、私の方は何も変わらない。ただただ、ビルの振動を感じ続けてるだけだった。
「なんで、こうなっちゃうんだろうな……」
息を大きく吐きながらずっと同じ姿勢で言ってたけど、でも、ゆっくりと体を回して、体を落っことすと、そのまま背中を滑らせてまだ残ってる地面に背中とお尻をくっつける。さらに、片方の足を持ち上げながらもう片方を伸ばして、前者の方に腕を乗っけるまま、そっちから上の方は放す感じで猫背になる。そしたら、いつの間にかもう1回鼻からため息を吐いた。
それに対して、未だ聞こえて来てるのは外でハンと東雲が戦ってる激しい音と、これのせいで辺りから何度も置き続けている振動のあまりに激しい動き。それでも、後頭部を目の前の機械の上にぶつけるまままた口から息を吐いてて。それが形も作らないでどこかに消えて行きそうなのを眺めてると穴が開いた天井の上の方にまで、杏のポッドの中からあふれてきてる光が届いてて。それ以外の箇所は暗がりしかないけど、そっちのさらに上の方ではほんのちょっとだけど星の姿が夜の闇の中に浮かび上がってた。
「こういう時、杏だったらどうする」
ほんの小さな、私の声は一度溜めるみたいな感じで出たけど、それも辺りの揺れる激しい音のせいでどこからも聞こえなくなってしまってて。でも、それでも私はずっとただただ辺りで揺れ続ける音をずっと聞いてるだけにしてると、また床が抜ける箇所が増えているのが視界の端っこの方で見えてて。でも、私の視界のほとんどを占めてるポッドの中の気泡も杏自身もほとんど揺れないまま、私の体だけが左右に揺れている感覚だけを味わうけど、でも、こっちはその流れにずっと合わせてただただ体が動いてるのを味わったままにしてるせいで、ただ肩を左右に動かしてるだけになってる。
でも、一方で、天井のその先にいる星は今も一切動かないまま私の上で四方に光の線を伸ばし続けていた。
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