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Lunatic  作者: コンテナ店子
第一部前編
21/216

第21話

「負けたのか」


 その言葉を聞いた直後、私の息が吸い込む音がした。それからしばらくの間、誰も話さない間があるだけ。姉御の人からは呼吸の音すらも聞こえてこない。目をつぶりながら逆方向に動かそうとすると、私の下にある小さながれきが動いて、それと一緒に頭が凸凹の上を滑っていく。それによって起きた二重の痛みに耐えるために目をつぶりながらうさ耳パーカーのフードを引っ張った。


「お前は負けたのか」


 私の髪の毛のとがった先端とそれを覆いかぶすように私の前へとやって来る。そして、頭にフードがてっぺんに押し付けられて、それと一緒に顎を引くようにしながらフードを持ってない手に込められた力をちょっとだけ抜く。そうすると、それで指が動いたせいかそこにあったがれきの隙間になってる砂利が転がっていくのを感じた。その音をちょっとずつ感じてると、しばらくしたら小さくなっていく一方で、それらのタイミングに統一感はなくて、ばらばらにゆっくりと落っこちていくのを感じた。それから、自分の両の手の平を目と眉毛の間くらいにフードの上から押しつけて、その力に従うみたいに顎を上へと見せつけるようにする。そしたら、頭の下側でも同じような音を感じて、それと一緒に、背筋と頭の間のフードがピンと伸びているのと、それと首の間の隙間の冷たさを感じ取った。


「そうだ、また、負けた、負けた!」


 小さな言葉にならない声なのか首が鳴る音なのかもわからないようなのを吐き出して、一拍分開けてから、明らかに差をつけるようにだんだん声をだすようにして、最後のが言い終わった時には、喉が痛くなるのを感じる。さらに、私が言い終わるのと一緒に周囲の音が私の背中を転げ落ちる砂以外なくなったと思ったけど、それはほんの一瞬の事で、次の瞬間にはもう静寂なんかない。


 敵たちの声はもちろんのこと、周囲からも歩いている足音。それが天井にまで響き渡ってた。


「……ただの、思い上がりだった」


 それから、さっきの最初よりも小さい声で、数文字ずつ言うように言葉を止めながら自分の顎を上部に押し付けた。でも、そうしたはずなのに、勝手な体の動きでそこが中々締まらなくて。喉を押しこむように空気を飲むけど、それが止まったのはその瞬間だけだった。


 それから、真横にいたはずの姉御の人の服が擦れる音がして、一回ため息がつかれる。ただ、それがだんだんほんの少しだけ大きくなっているような気がして、脇を締めるように動かすと、自分の体の冷たさを改めて感じ取って背筋をほんの少しだけ曲げて頭を上に持っていくと、ぴんと張ってた服がちょっとだけ和らぐ感覚があって、それを感じた瞬間元に戻した。


「お前がそういうんなら、そうなんだろうな。お前の負けだ」


 唇同士を押しこむように動かすと、頭が戻っていく時に髪の毛が擦れる音がする。その一方で、姉御の人は声を進めるのを辞めなくてただ一定に、スピードも大きさもほとんど変わらないままただただずっと喋ってるだけだった。


 それに対して、私は手をそのままの位置にしておきながら自分の両方の腕を自分の体に押し付けるようにする。それと一緒に、足も膝同士を近づけるようにしながらその後にそれをこすり合わせるようにすると、力を入れる度に小さながれきが崩れ落ちる音がしたと思ったら、今度は多きめの低い転がる音がして、それで体が引き締まったと思ったら、右足が滑って曲がってたのがまっすぐになろうとしていた。


「あたしも一緒だ。自分から負けだって言ったんだ」


「そっ、それは……」


「もういい、この前も言ったろ」


 声のトーンを一切変えないような言い方で私に向かって言葉を話している。でも、それはちょっと早口だったせいで聞き取りにくくて言葉を言い終わってから、手首に込めてた力を抜いて、手首の辺りを自分の顔の上に置くようにする。でも、それと一緒に顎を引くようにしながら目を下に向けるようにするけど、そっちにも当然のようにフードと髪の毛があるだけ。それと一緒に体から力を抜くと肘をゆっくりとおろしていこうとするが、ただ、それでも喉が苦しくなるのを感じて眉を動かした。


「でも、私のせいで……!」


「違う、お前のためじゃねぇ」


 その言葉を聞いた時、口の中に冷たい空気が入ってくるのを感じて、それから、フードに込めてた手の力を僅かに緩めると、その顔とそれの間にほんの少しだけど隙間が出来て、そこから相手の事を眺めると、しゃがんで肘を置いたままこっちの方を見下ろしている姉御の人の姿があった。その顔は、眉を下ろしているような恰好のまま、顔の角度をかえると、その表情を覆ってた影もより濃くなって、その周りを隠すようにしていた髪の毛も転がるように重力へと従って落っこちるけど音はない。


 そして、下唇を少しだけ中へと入れるようにしてから、目線を僅かに反らしつつ鼻から音がギリギリ聞こえて来るか来ないかくらいのにして、息が吐かれた。でも、それから数秒間、唇の周囲に小さなへこみを作ってから、元の向きに顔を戻した。


「あたしが誇り捨てたら、あいつらが今まで積み上げて来たこと、もう何も残らねぇんだよ」


 それと一緒に、手の平にあの時と同じような冷たさが手に宿った。私の体を覆ってるうさ耳パーカー。それとその奥にある学校で来てた学生服。それを強く握りしめる。そうすると、体が小さく震えるのと同じタイミングで、目と唇に力が入って、それのせいで顔のパーツそれぞれが中央へと集まっていくのを感じた。


 それからも、私の体を沿うように火傷しそうなくらい熱い温度の涙が頬を伝ってきて、一滴流れたらそれを押し出すようにまた目をつぶる。そうすると、私の意思に従う様に、次から次へと流れてきて、腕はフードに軽く添えるようにしながら、その先端をおでこへと持ってくると、目は限界まで開けたままに。そうしてるだけでしゃっくりの動きがたまにくるのが止まらなかった。


「お前らならわかってくれる、信じてた」


 言葉を聞いてから、腕に込める力をほんの少しだけ強くする。そうしてるだけで胸と顔で息の動きを感じ取る。さらに、頬の内側をちょっとだけふくらますようにした。そうしていると、姉御の人は私の胸よりもちょっと顔よりも上の辺りに手を伸ばしてきてて、それは、その指全部がくっついてるみたいで。そのうち側が膨らんでいるせいで皿のようになっていた。


 そっちの方を見るように顎を僅かに上へと持っていくと、その瞬間に姉御の人と目が合って。その眉毛を目にいつもより近づけるようにしている様子を見たら、歯の奥側を強く噛み締めるようにしながら、眉毛を同じようにする。そして、鼻から一気に息を吸い込むようにすると、肩も合わせて落とすようにした。それから、姉御の人が行った言葉を何度も頭の中で繰り返しながら目と口を閉じる。


 それから目を開けると、変わらず手が目の前にあって、それを見ているだけで口やおでこに入ってる力が抜けそうになって、さらに息がゆっくりとこぼれそうになる。でも、喉を強く押し込みながら両方の手を握りしめて、それのせいで顔のもさらに入りそうになったけど、喉を飲み込むようにして抑え込んだ。


 私が両手の握りを辞めて地面に置こうとすると一緒に、またそこにあったがれきが転げ落ちていく音がしたけど、それは、数秒後にはもう聞こえない。


「違う、私は……」


 背中を一度押しこむようにすると凸凹した側面がぶつかったと思ったけど、その瞬間にそこから熱くなるのを感じて、それから体から力を抜いて両腕を体から遠ざけるようにすると、それと一緒に軽いまま腕が体の前に円を描くように回って、それが頭の先で重なるのを感じてから目を開けたら、私の顔の前に紫色にうっすらと輝く魔法陣が出来上がっていた。


 それを見てたら力が緩むのと一緒に頬が小さく持ち上がって、口から小さな言葉がこぼれた。でも、それを確認するよりも先に、両腕を立てるように肘を曲げて上へと向けると、そのまま体が飛び上がって、それと一緒にすかさず片腕を伸ばして天井に着くと、それを追うように足も膝からそこへと着地した。


「魔女」


 着地した音に消えそうになったけど、でも、口は一文字一文字をしっかりと発するように動かす。そうすると、周囲から電気が燃え上がる音を感じて、体にもそれが引っかかるようなわずかな痛みを感じるけど、その場所、腕を一回反対側の腕で掴むようにするだけにする。


 それから、顔を一度下に向けるようにしながら、口から出そうになった言葉を噛み締めるように歯を一度噛み締める。そのまま数秒間いて、顔を上へと向けると、そっちには反対側から見ている敵とその取り巻きたちの姿。全員が首を上へと向けるようにしてて、それ以外何もしていない。ゆっくりと手と膝を離すようにすると、その瞬間に体を少しだけ止めて、そこで見開いてた口と目を元に戻すことを自分で意識しながら顔を強く力を込めた。


「ルナティック、だ!」

読了ありがとうございます

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