第18話
でも、それも数回しゃっくりを繰り返している間、辺りから音がしなくて、それに気づいてから目を軽く開いてみたら頭を傾けたままだと思ったけど、数秒間もしないうちに上を見たら、口がちょっとだけ開く。でも、その後私の視線と姉御の人たちと目が合う。それと一緒に、何もない物を飲み込むみたいに口の中が動いて、左右へまた視線を動かそうとするけど、それから元に戻した後も向こうは何も動いてなくて。上から尻もちをついているこっちを見下ろすような視点をしている連中は、何の表情もなく真顔でこっちの方を見て来た。歯を強く締め付けながら猫背になってた背筋が思った以上に真っ直ぐになって。気づいたら口が動いてた。
「えっと……」
でも、それでも続いて出て来たのは言葉になってないただの小さな声で。それが出て来る時に体のどこも動かないような感覚があって。目だけで床を1回見てからもう一度メンバーの方を見るけど、またそっちも同じようにこっちを見下ろしているだけ。その顔は髪の毛が作る影に覆われているようで、唇を僅かに持ち上げているようなもので、全員ほとんど一緒のまま。
それを見てると、私の心臓が小さくなるように体が押し込んできて、それのせいで背中が反対側に開くような動きをしてから、目を開く。そして、それと一緒に舌が上側に押し付けられるような感覚があった。
円を描くように並んでいる連中の様子。座り込んでるこっちからは、天井のわずかな光を浴びるようにいるせいで顔が影になってる。それに全員の足から体までまっすぐに伸びたままで。それが互いを見合う様に目線を合わせ合ってた。
「かっ……!」
一度大きく口の中の空気を飲み込むように動かす。でも、それと一緒にわずかに後ろに下がった背中が硬い壁にぶつかるだけだった。それから、手をもう一度握りしめようとすると、その中の体温の熱さを感じ取って、手を離そうとしたけど、それと一緒にまた目から涙があふれてきて、今度はそれがすごく冷たくて、頬の体温を奪っていく。
そして、それに合わせてわずかな小さな声が溢れて来ると、口を強く噛み締めて、目を大きく出すように力を込めた。
「勝手なこと、言うな!」
喉が震えたまま、小さく声が出たと思って、文字同士の隙間を一切無くなるかのように早口になってた。一度言葉を止めて、それからは一回で吐き出すように言った。それから後、肩で息をするように体を動かしながら、息を吐いて体を前のめりのままおでこと目をあげると、その後すぐに視線が下に向く。それからも、まだ涙が止まらなくて、それに合わせたしゃっくりも続く。そして、周囲からはその音しか聞こえなくて、下を向いたまま目を閉じた。
「私だって……好きでこんなこと、やってない……」
歯を滑るように息を出す音を一緒に含みながら出た言葉。単語を1つ1つ言うたびに息が苦しくて 高い音がする。それから次々と出て来たのも、一緒に涙も溢れて来るみたいで、その度に動いた体に合わせて、先ほど何度もたたかれた場所が痛みを主張してきて、お腹を支えるように。全部言い終わってから鼻から息をしながら瞼が震える感覚を味わう。
その間、ずっと周囲からずっと音が聞こえなくて、砂が擦れる音がしたせいで、顔を上げてそっちを見た。それと一緒に顔が冷たくなるのを感じると、姉御の人が同じ姿勢のまままっすぐにこっちへと進んでくる姿が目に入る。そのペースはもう普段と一切変わっている様子がほとんどないのに、いつまで経ってもこっちまで来る気がしないし、そのせいで息が苦しかった。
「おい!」
尻をちょっとだけ持ち上げようとした瞬間、姉御の人がつばも飛びそうなくらいの勢いで体を少しだけ前に出しながらこっちに向かって大きな声をだしてくると、それに合わせてそっちと顔の向きが合わさるように変わりそうになる。でも、そうしようとした瞬間、姉御の人が長いスカートの中で膝を曲げながらその上に両方の肘を乗っけるようなポーズでこっちの真正面の目線と合うようになった。
「ごっ、ごめんなさ……」
「甘えんじゃねぇ、お前が自分で決めて感じてやったことだ」
こっちの体が後ろに下がるみたいに肩を張るような動きをするけど、それと一緒に姉御の人の口が動いたと思ったら、髪の毛をそっちに向けるみたいに顎を引きながら目を閉じて、その声は私のよりも小さくて。それに対してこっちは瞼が何回か動くのを感じてから小さく開けつつ正面を見る。向こうでは、姉御の人がまだまっすぐにこっちの方を見てて、その目は特別に開かれているわけでもないけど、その瞳の丸が全部見えてるくらいで。こっちがわずかに頬を膨らませるようにわずかに動かすけど、それでも向こうの目線が動かなかった。
そうじゃなくなったのは、向こうの方から一旦視線を何もない床の方へと向けてから膝に力を込めて手を押しこんだ時だった。それに対して私はその間もほんのわずかな呼吸が細く喉の中を動いているだけだった。
「お前らも、これからの身の振る舞いはよく考えろ」
一度口の動きを止めた時に、歯を噛み締めるように動かしていた。それから、その後に続く言葉も一回口に出したと思ったらそれはすぐに止まる。でも、それも一瞬の事で、すぐに続きの言葉が出て来てた。
そう話してる顔はこっちの方に頭を向けたまま床の方を向いてて、そのせいで私の方にはその顔が見えてたけど、わずかに下唇を上唇に押しこむようにしていた。でも、それも短い間で、すぐに背中から順番に動かすように立ち上がると、一回だけ手に力を込めて顎をちょっとだけ引いてからハリーたちの間を無理矢理通るように進んで行った。
そして、その足はメンバーを通り過ぎて数秒の間に止まった。
「そんなこと、わかってるっすよ!」
肩を上に向けて張りながらおでこを私の側に向けて、姉御の人に背中を向けたまま、ハリーが一度切った言葉を言い続ける時に大きくなるような声で姉御の人に反論。それから何度も息をゆっくりと繰り返すように音を立てて姉御の人の方へと振り返る。その後、広場の中央へとつながる階段を下りたその背中の方へと視線を向けることに。それに対して、姉御の人は私やハリーたちに背中を向けたままそれと一緒に顔の向きを変えて正面をまっすぐ見たような形で両手を握りしめるようにしていた。
「あたしらのこと、人間扱いしてくれるの姉御だけじゃないですか」
その言葉はほとんど抑揚を付けずに、一定のペースでただただまっすぐに喋ってた。それから数秒間、全員がただただまっすぐに立ってるだけで、それが終わったと思ったら、姉御の人がまっすぐに歩いていく姿があった。それから、残されたメンバーはお互いに目を合わせるようにしながら、一斉にため息をつく。それから肩を落としながら下を向いていたまましばらく動かなかった。
それを見てた私は、瞼が震えるのを感じながら左右に視線を向けてて、何度も瞬きをしながら、体育座りをした膝の上に両方の腕を重ねる。膝の内側に自分の顎を置き、そこを頂点にして両方の足が重なる。それから、心臓が重くなるみたいにお腹に脂肪が集まるように背中を丸めることになった。それのせいでいまだに震える瞼を下へと堕とすことになった。
トイレの前で体育座りをしながら、両膝の上に重ねた鼻から目を出して見つめようとすると、食事時間の五分前くらいに広場から食堂へと向けて歩っていく姉御の人たちの姿を反対側の壁に寄り掛かるくらいの位置から見ていた。まっすぐに背筋を伸ばしたその姿の数歩後ろからハリーたちメンバーが追っていくような形になっている。その人たちの眉間にしわを寄せるようにしながら両腕の動きを小さくするようにただただ足を一定のペースで動かしながら進んで行っていた。
それに対して、ずっとそこにいた数日前は一緒に飯を食べていた人たちが小さく握りしめた手を自分の胸に当てるようにしながら小さく声を出しながらもすぐに口を紡いで数歩後ろへと下がって道を開けていた。その後、全員が正面を立ち去ると、その女子は他のメンバーと顔を合わせながら顎を引いて声で笑っているようだった。そして、それはその2人だけじゃなくて、他の人たちも同じ。手を口の前に当てて顔を近づけながら話すのとか、肩をかばうようにしながら横目にハリーたちを見ているように去っていく姿など。そこにいる全員がそっちを見ているけど。けどだった。
そんな様子を見てたら、下瞼に力がこもって、下の歯を擦らせるように動かすと、足を何度か動かしてから黙って立ち上がって髪の毛に手を入れるようにしながら前腕を耳に当てる。それから喉に力を入れながら、小さな足取りでまっすぐにトイレの中へと入って行こうとしたけど、それと一緒に口から小さな言葉になってない声がただただ一定に流れてきて、それが心臓をひっかいてるような感覚のせいで痛いから肘を使って体を小さくした。
それから、トイレに入って洗面台に両方の手を突くと、その冷たさをジンと感じて、前へと出した肩がびっくりするように前に出る。それと一緒に目がわずかに開いたせいで鏡の中にいる自分と視線がぶつかる。そのまままっすぐにその様子を眺めていると、眉毛が若干下の方を向いているのに気付いて、自分の手に力を込めてそれの向きを直そうとした。でも、すぐには戻らなくて。それからすぐにまた心臓のひっかいているような感覚を感じたけど、洗面台の方に戻した手に力を籠めると、おでこが広がるような感覚があって、勝手に動くのに逆らう様に顎を引きながら目に力を込めた。
それから、頭の頂点からひびが入るような痛みをまた感じて、今度は自分から眉毛を下に下げる。でも、その間もトイレには誰も入って来なくて、周囲からは音が何も聞こえてこない。そして、じんわりとおでこの上を汗が滑ると、脇の下も湿ってきているのを感じ取ってそこを開けるようにする。でも、それと一緒に見えて来たのは、私の掃除で取れてないタイルの隙間に出来た黒い汚れだけだった。
それから、首を上へと向くように曲げていくと、それが限界まで言った所で目を開けたら、天井にある汚れている上にかすれるように付いたり消えたりしている電球が、眩しくてもう一度目を細めつつそのすぐ上に腕を重ねるようにする。それから、ため息をつきながらもう一度鏡を見る。私の背中は左側に個室の壁があるせいで光が入りにくくなっているから暗くなっている一方で、右側は入り口が空いている物の、三方向を覆っているせいでより暗くなっていて、その中に白い便器だけが何とか見えているように感じる。そっちを見てからもう一度左側を見ると、少し行ったところに開いたままになっていた掃除用具入れがあって、その中にあるモップの金属になっている部分が外から入って来るわずかな光を反射しているのが分かった。
しばらくその様子を見詰めた後、目を大きく開けるように見開いたら、その表情を見てすぐに下を向いて自分の口を抑えようとするけど、そこに向かって1回だけため息をつくと、もう一度同じ表情で、眉毛を上へとあげながら頬と目を同じようにする。それを数秒間続けてから、わずかに視線を下へと向けてため息をついた。
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