第17話
周囲から音がなくなって数秒。さっき姉御の人たちがいた場所から足音が聞こえたと思った瞬間、目が大きく開くみたいに動いたのと一緒に私の視線が正面を向いて、喉を動かす。それから、上唇を前に出すように下のの上を滑らせると、ぼやけてた視界が元に戻った。
そっちでは、頭を床に付けたまま両方の前腕と握りこぶしも同じように付けている姉御の人とそこへと体を傾けながら手を出そうとしているが、それと一緒にそこから言葉にならない大きな声がして。周囲の女子たちもそれを聞いて体をまっすぐに近づけるような姿勢に変えて、互いを見合っていた。それから、周囲からは音が少なくなり、どこからか水滴が垂れおちる音が等間隔に聞こえてくるくらい。壁に取り付けられたわずかな灯りはグループの方へは届いてなくて、その暗がりの中で影の部分がより濃くなっている様に見えた。
それから気づけば私は自分の部屋がある廊下とハリーたちの方を視線が行ったり来たりして。それを何度かした後、息をのむようにしながら数歩ずつ進もうとしたけど、かかとが弧を描くように動いただけ。それから、後ろに体が動いてしまったから、それと一緒にバランスを取るために足が後ろに動くけど、それでも建物内に音が響き渡ることはない。ただちょっとした砂が動いただけだった。
「言ってんだろ、頭に二言はねぇ」
「だからって! ハリーがもし早く戻って来なかったら、姉御死んでたっすよ……!」
姉御の人の声の小さい物と真逆であるかのように、仲間の人が発した声は大きなもので、まるで部屋中に響き渡っているみたいだった。ただ、それも最初の方だけで。だんだん消え入るように同じような大きさになっていく。でも、それらが消えた瞬間、前者の歯を噛み締めるような音が聞こえてきて、それと一緒に、立っている全員がそこから目を背けるみたいに視線を斜め下に動かしていた。その向きは全員が別々。それも、小刻みに震えるように動いているくらいで、視線すらもそのままだった。
「そうまでして生き残っても、何も意味なんかありゃしねぇ」
もう一度歯を食いしばりながら姉御の人は数秒間片膝立ちの姿勢をキープすると、そのまま目を鋭くするように細くして、それから立ち上がる。それと一緒に、姉御の言葉を呼ぶ声が数回聞こえて来た。だが、それも長いスカートを叩く音によってかき消されれそうになっている。
「じゃあ東雲はどうするんすか!」
そんな中で、ハリーが出したその大きな声。最初から最後まで大きさが変わっていない。ただ、それを言い終えた後のその背中はわずかに猫背になっていて、肩で息をするように上下している。でも、それと一緒に、鼻の音を立てながら何度も動かしているようだった。
と思ったその瞬間、ハリーと私の目が合った。
「お前……お前!」
「あっ、あの……!」
1回目が小さくいったのに対して2回目は喉が切れるようなほどで出て来てて。ハリーはそれと一緒に肩を前に出すような姿勢でこっちに走ってきた。それから尻餅を突いたまま私は足を前に出すようにしながら両手を後ろで立てて、そのまま後ろに下がろうとしたけど、その数秒後には背中の半分と右手が壁に触れて首から上もそれにくっつけるようにまっすぐ伸びた。それに対して左手は爪をひっかくような形で何度もそこを擦り続けたけど、ある程度脇が開いたところでもう進まなくなってしまった。
それでも、そっちを見ながら息を何度も激しく繰り返したと思ったら、背中から服に引っ張られて体がえびぞりになって、さらに首元が硬い物にぶつかった痛みを感じた瞬間に、ハリーの顔が目の前にやってくるし、その表情は暗闇に包まれているようで、歯に力を込めながら目も限界まで大きく開いているようで、大きな声と普段とは全然違う低い声で叫んできた。
「殺してやる!」
それと同じに、限界まで振りかぶったと思った手が一瞬止まったと思ったら、その直後には私の歯と向こうも拳の骨がぶつかって。横に向いた口から唾液が飛び出て。すぐに手で痛い箇所を抑えようとしたけど、その爪先にまた拳がぶつかってきて今度はその箇所が痛くて手を振るう。目を強く握りしめるけど、それでも抑えきれてない目の間から何度も繰り返す涙。それを出すのと一緒に、首を頭の方へと持っていくように動かすけど、でも、それを元に戻そうとすると、その勢いで鼻水が溢れてきて、それをすするようにした。
その直後、私の胸倉をつかんだ手が離れて、左手の指を抑えるようにしてる右手を頬に添えるようにしてたら、それと一緒に体をもう一度重力に従わせるみたいになってた。でも、それも一瞬で、腹が力強く蹴られたのに気付いたのは、みぞおちを蹴られたせいで息が苦しくなった後だった。それのせいで地面へ芋虫みたいに丸くなった体にも全然辞めてくれなくて。何度も丸まった背中を蹴られ続けた。
「死に、たくない……すみません、でしたぁぁ……!」
苦しい息の中で、かすれるように出た声。それに、何度も涙をひねり出すように出てくるしゃっくりとけられる衝撃に耐えるだけで精いっぱいだった。それを言い終えてから、私は頭を抱えるように、左手の指を支えた両腕を添える。そして、頭も首が縮こまるみたいに動いて、そこも足の衝撃がないタイミングでも震えた。
「お前、いつも謝ってるお前の謝りなんか、いらねぇんだよ!」
それを一緒に、私の背中とお腹の間くらいに足を添えられて転がされるようにされると、一瞬両方の腕同士が開いて顔が露わになったけど、目は閉じたままだったから何も見ないまま、もう一回同じ位置に戻す。息を鼻と口の両方から吐き出すようにしていると、お腹も動いて痛みが増してくると思ったけど、もう一度そこに足が押し付けられて何度も力をねじ込むように動かすと、私の背中が床にたたきつけられてその痛みを感じ取ると、喉を傷めるような声が弾けて出てくるみたいでそれが反響して自分の耳にも聞こえて来るみたいだった。
「すっ、すみませぇえぇぇ……すみませぇん!」
その後も嗚咽が何度も溢れてきて、それに続くように咳も何度も出続けて。それでも止まらないよう。喉が痛み続けるのを感じたら、息が上手く出て行かなくなって、高い音を繰り返し吐き出されるように小さくなり続ける。仰向けになって倒れている状態から、体を回転させてハリーがいる方に体を向けると、下側になる右側の肘と腕を地面に押し付けながら体を持ち上げようとするけど、その瞬間に体の痛みがやってきて、力が抜けると肩をぶつけるように倒れる。
それから、自分の体に足をしまい込むように曲げて、両手の拳を握ろうとしたけど、それと一緒に平たくなって地面と平行になるようになる。お尻を持ち上げるようにしながらおでこを擦り付けて、目を強く閉じた。そうすると、向こうから聞こえて来た足跡が靴の裏を踏みしめるようなもので聞こえて来るけど、それと同じタイミングで、私も顎を引くように頭を動かす。でも、それだけじゃ収まらなくて、歯も強く握りしめた。
それから、靴の音が聞こえなくなってから数秒間、しばらくそのままでいたけど、何とか一度開けた目を細めながら震える下唇を抑えようと力を込めながらそこを上げる。そっちには姉御の人が両腕を組みながらハリーと目を合わせてて、その後ろを仲間が付いてくる姿があった。
「あっ、姉御……!」
「時間の無駄だ」
「こいつは、けじめっす! こいつは私の責任っすから!」
足を後ろに回すようにしながら振り返って、そのまま一歩前にもう片方の足を出して体を姉御の人の方に近づけるハリー。それと一緒に、二の腕は体に沿わせながらも肘で曲がった腕をそっちに近づけながら手を握りしめていた。その一方で姉御の人は下を向くように瞼を下ろしていて、わずかに眉同士を近づけようとしている。
それをしばらく見つめると、一度両腕を勢いよく降ろして、もう一度手の中に入れた指を強く握りしめて、肩を張るようにする。そして、それに対して私の胸が自分の体に吸い寄せられるように動いて。鼻がまた何度か動いて喉が痛くなっていくけど、わずかに指が動いただけでその場所から体温が一気に抜けていくような感覚があった。
「お前だけは許せねぇんだよ! お前のせいで姉御が……!」
それだけ言ってから、息を吐きながら音が出そうなくらいの勢いで腕を何度も振り下ろすと、それと一緒に両腕が押し込まれてるのと一緒に、喉から力が緩められると、私はハリーのシャツ一枚に覆われた背中を見つめることになった。それは、肩の辺りは無造作に伸びた髪の毛の間から見えている場所が揺れている一方で、背中全体はそうなっていなかった。
そして、その動きが止まって姉御の人たちと同じ場所に行った時、音を立てないように息を吐きながら頭を下に下げる。それから、瞼がゆっくりと落ちていくと、それと一緒にまたしゃっくりが止まらなくて、さらに肌が痛くなるくらい熱い液が溢れてきて、ドロドロした勢いで肌の上を滑って行くのを感じる。でも、それは肌が震えてるのにいつも同じ場所を通り続けてて、歯を使って肌を押しこもうとするのに全然その動きが止まってくれなくて。自分の手を握りしめるけど、私の腕と体の間に出来てる隙間が寒いだけだった。
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