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Lunatic  作者: コンテナ店子
第一部前編
14/216

第14話

 それからすぐにその場を離れようと、目を前に出すような顔つきのまま一歩ずつ後ろに下がって行こうとするけど、そうしようとして数秒後に、ハリーたちが姉御と呼んでた人が遠くにいるのに目が合った。そう思った次の瞬間に、顎と首を動かして、天井の方を眺めるけど、それでも一瞬で見えた白のブラウスと長いスカートとサンダル以外を身に着けていない姿を思い出すと、下の歯を動かすようになって、私は目を左の方へと動かそうとする。


 でも、そうしてる数秒後に、声や音がどんどん減って行って、それに気づいて、数秒間瞬きをしながら顔をそのままに目線を左右に動かす。でも、上部の方に広がっているコンクリで出来た壁は、本来の灰色と黒い染みくらいしかなくて、何度かあっちやこっちへ動き続けているだけで、唇同士を押し付けるようにする。


 それから、一気に動かすみたいな勢いで、視線を正面に戻すと、少し離れたところで広い場所が出来てて、そこではもう片方の腹におう片方が肘をぶつけてそこを抑えながらうずくまりそうになっている相手に対して、げんこつをぶつけると、倒れ込んだ頭を踏みながらこっちに近づいている。そして、その正面にいる人たちは、そこに道を作るように後ろへ進みながら、相当体格が良さそうなその人と姉御の人との間に道を作ってた。


「こんなんが目的じゃねぇだろ」


 2人が顔がぶつかりそうな距離にまで近づくと、姉御の人は顎を相手に見せつけるように上から腰骨に手を当てる姿勢をする。その一方で相手は髪の毛を見せつけるようにして、顔に影を作り、下から姉御の人を見るようにしていた。


 そして、その様子を見ている周囲の人たちは、目をいつもよりも少しだけ大きく開くようにしながら、呼吸すらもしていないかのように見える勢いで体を微動たりともさせない。そこからは音すらも何もしなくて、ずっと何度も反響し続けていた先ほどの乱闘のもどこかへと消えていくようであった。


 私は、それを体を一切動かさずに見ていた。


「これ以上あたしの舎弟を東雲に持ってかれたら困るだよ、なぁ、姉御よぉ」


 姉御の人が一切抑揚をつけないように、まるで消えるような声で話していた一方で、相手は後ろ側をだんだん大きくしていくように話していっていた。そして、そっち側は話が終わると共に、鼻から息を出しながら、口を横に広げるようにして頬を前へと出していた。しかし、その間も姉御の人は一切動こうとはしない。


 そのせいで、周囲にはまた沈黙が訪れる。それは私や周囲の人も全く同じだった。地面に転がっている小さな砂利すらも、微動たりともしなかった。


「何とかいったらどうなんだよ、なぁ!」


 しかし、その沈黙は、相手の側が正面の胸倉をつかみながら大きな声を出したせいで、私の首が座るみたいに顎が体にぶつかって。それと一緒に目がつぶった。それから、息が一気に飲み込まれて喉にぶつかると、一瞬咳き込みそうになるけど、さらに自分でも喉を押しこむようにしてそれを止めた。


 肩と腕を体に押しこみながら目を数秒間瞑ってたと思ってたけど、開けたら周囲にいた人たちは未だその様子を一切動かないまま見守っているようで、瞼をもう一度開くように動かす。


 そうしたと思ったけど、さっきまでずっと見てた天井の方から大きな機械が動いたような音がして、それと一緒にそこにいた東雲が縁の上に乗っかってたと思ったらそのまま自分から飛び降りてきて、地面に付いた瞬間、そっちの方に一斉に視線が向くと共に砂煙が吹き飛んだ。


「そこまで、であります」


 数歩あるくと共に、動いていない人たちを肩でどかしながらまっすぐ進んで行く東雲は体の向きを一切変えずに、2人の所にまで到着する。そうすると、姉御の人も唇を押しこむようにしながら顔をまっすぐに向けて汗を一滴たらしつつ、顎をほんの少しだけ引いていた。その一方で、相手の人は何かを大声で足を一歩出しながら言っている。しかし、東雲はただただ真っ直ぐに顔とそのパーツを向けているだけ。


「お前たちはただの実験材料、その体はお前の物じゃないってこと、忘れるなであります」


 それを言うと、そのまま翻ってちょうど辿り着いたエレベーターの方へと歩いていくと、中にいたスーツ姿の部下の大人たちが両端に並んだところでそのまま両腕をも曲げずに進んで行った。それから、東雲や戻っていた大人たちを乗せたエレベーターが、床の部分すらも壁に隠れて見えなくなったところで、周囲から一斉に大きな声を伴ったため息が聞こえて来た。そして、それと一緒にたくさんの女子たちが近くにいる人同士で顔を見合わせ合ったりしている姿は、地べたに座り込んでたり両膝に手をついてたりして、その顔は斜め前を向いてたり正面を向いてたり横を向いてたり全然違ってたけど、みんな私以外は他の誰かと顔を見合わせているようだった。




 各部屋にあったベッドを作って使ったバリケードを通して、通路側から暗くなった広場の方を眺める。わずかな灯りによって照らされた位置には、昼間の乱闘で出来た血の跡がまだ暗くなった闇に紛れて私の視界に入り込んできている。その一方で並んで立ってる私とハリーの影はそこに出来上がっていなかった。


 横を見ると、ハリーは顎を目の前の縁に起いた両腕の上にのっけながら背中を僅かに丸めて、目を細めつつそっちに唇もとんがらせてる。その様子のまま、たまに顔のパーツのポジションを整えるかのように動かしている時や足が動いているせいで顔の位置がずれるくらい以上に大きな動きはしない。そして、それと一緒に、まだむき出しになってる頬に出来た大きな痣も一緒くらいにしか動かなかった。


 それが向いている先と私の視線がぶつかりあうと、喉が引っ込むみたいに動いたせいで、瞬きを一回してからそこから目線をずらす。でも、その動きに気づいたのか、ハリーがこっちの方を見てきて、それのせいで、肩を少し後ろにやると、向こうは口を横へと広げるような顔つきをしてきて、小さく息を鼻から吐くような音が聞こえて来た。


「こんなもん、けがのうちになんか入んねぇよ。お前もいつか慣れる」


 頬を指で何回か押しながらそう言うハリーは、おでこを天井に向けるみたいに傾けて、それから視線をこっちに向けるようにしてきてから、さらに歯を見せるようにする。それに対して、こっちは目線を斜め下に向けるようにしながら鼻を少しだけ動かして口をわずかに横へ広げて、それからそっちの方を見た。


 そうしたと思ったら、すぐに聞こえてきた音で私の頭は真っ直ぐに戻される。そっちを見ようとするとハリーも同じように見てるのがわかって、それから、その視線の先に外の世界へとつながるエレベーターがだんだん音を立てて降りてきているのが見えてきた。それと一緒に靴を動かそうとすると、それだけで砂利のせいで足音が立って、唇をかみしめるようにする。でも、エレベーターが到着した大きな音がした瞬間、体が勝手に大きなマットレスの後ろに隠れて、ドローンが彼女の周囲を飛ぶ音と、その足音がこっちにまで聞こえて来たと思ったけど、それは東雲のだけ。それを数秒間聞き続けてから両手で抱えた頭を僅かに動かすと、ハリーも反対側で体を縮こまらせるみたいにしゃがんでた。


「なんでこんな時間に……?」


「あたしが見張ってる、お前は姉御にこのこと報告に行け」


 そう言いながら向こうはマットレスの縁からわずかに視線をだすようにしながら、こっちに顎で指示を出すみたいに顔を動かす。それを少しの間見てから、背中を向けて歩き出すと、喉を押しこむみたいにしながら目の真ん中側になる先端を開くようにする。そして、足をほとんど曲げずにまっすぐ歩いてたと思ったら体を少し前のめりになるようにした。そして、それと同時に、周囲から私の上履きが音を等間隔に鳴らすのを感じ取ると、頭を下に向けて地面を見たけどそっちではただだんだん黒さが増していく影の様子しか見て取れなかった。




 姉御の人の部屋には出発してからほんの数分もしないうちに正面へとたどり着いて、壁に頭をぶつけそうになったのを髪の毛で感じ取って数歩後ろに下がる。それから一旦後ろに振り向くと、そっちではハリーが小さく見えて、また両腕を縁に置きながら広場の方を見ているのがわかる。そして、その背中はこっちからでもわかるくらいに前のめりになっている。それから体を姉御の人の部屋に向けながら、顔もそっちに向けて目を数回瞬きさせたら、下唇を動いてたせいかちょっとだけ口が開いてて。それを戻すようにしながら、顎と体がぶつからないように顔を斜め下の方に向けた。


 目の前にあるドアはスチール製で出来ていて、白色の塗装が剥げてる箇所が散見しているせいか赤茶色が見えている。それらはどれも不規則に出来ていて、境目は大きなデコボコが出来上がっていた。しかし、私が何もしていないせいか音が当たりから一切なくなって、服からむき出しになっている左手首の辺りに右手を添える。そのまま、腰の辺りは同じ姿勢で猫背になってた背中。それと一緒に私の手が目の前のドアノブに触れると、その冷たさで一瞬動きが止まった。


 手に力を込めてから手首を回そうとすると、それと一緒に天井の方で、いきなり物音がしたせいでそっちの方を見るけど、何もなくて。それどころか、勢いよく頭が動いたせいで、また頭が痛くなって、昼頃の時と同じようにそこを抱えるのと同時に、瞼も同じようにひそめて。それからもう1回正面にあるドアを見る。それをほんの少しだけ押そうとすると、一気に周囲が寒くなったような気がして、体を持ち上げるようにするけど、何度か呼吸を繰り返していくうちに肩をゆっくりと降ろすと、歯を1回だけ擦らせるようにして動かした。


 それから、もう一度ハリーがいる方を見ると、その姿はかなり遠くにあるけど、その赤毛は影に混じりながらも見えてた。




「戻ったか」


「……あぁ」


 ハリーの声を聴いてから数秒間視線を反対側へと映して瞼を普段の位置に戻すみたいに開くのを数回繰り返す。それから、唇を尖らせるようにしながら、それと鼻の間を触るようにした。




 それから、代わりの人が来たら私はすぐにベッドへと潜り込んで、体全体をブランケットで覆うようにすると、壁に掛けてあったうさ耳パーカーを両手で抱えるようにした。

読了ありがとうございます

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