第136話
駅へと背を向けて歩き出した数秒後、自分の足音しか聞こえてこないのに気づいて足をゆっくりと遅くしている私は、一度両方の膝の上に手をついた後に髪の毛を掻きむしるように動かしてからもう一度腕を上へと持っていってから少しだけ曲げた膝の上に落っことそうとした。でも、それでも杏は未だベンチのすぐそばでただただ立ってるだけで、そっちへと行こうとしたらその瞬間に私の体も勢いよく滑って転んで行ってしまいそうになっているのに気づいたら慌ててそっちへと向けて反対側の足を一歩出すみたいにすることでバランスを取ろうとした。
それなのに足が重いし気づいたらそこに入ってたのが魔法の力じゃなくて普通の力でしかなくて。これのせいでそのままそっちへと転がっていってしまう。息を吸い込みながら重力の勢いに従って体が落っこちて行ったら、肩の硬いところを先端にしてぶつかったら、勢いのままに体が先に向かって滑って行っているのを感じて肌が地面の細かいでこぼこを感じて、それのせいで強く目を瞑る。それから体を起こさずにただただそこにいる私に対して、杏がこっちへわずかに近づくみたいな足音を立てているけれど、間違いなくその間から金属がこすれる音が聞こえてきてて。それのせいで下の唇を上のにくっつけたままずっとただただ鼻の下を丸めるみたいな表情でじっとしていた。
そのままうさ耳パーカー越しに地面の細かい段差を感じている間、だんだんと体の向きを変えたくて全体を転がしたらうつ伏せになるみたいな体勢になってしまって。顎を自分の側に近づけたらそれのせいで息が通りにくくて、ただただ何度も咳こんでしまう。
周囲は近くにあった丸い街灯に照らされてるはずなのに、私の体と重なるような形で出来上がってる杏の体が作る影がこっちに向けて伸びてるのに気づいたら、体中に魔力を込めながら両方の肘と握りこぶしを地面へとつけたまま体を起こして膝を自分の側に近づけるみたいな動きをする。
でも、そう思った次の瞬間、肘が急に曲がったと思いきやそれのせいで頭から体が倒れてしまって、その場に手も明後日の方向へと飛ぶと共におでこを地面にぶつけてしまった。それから、体勢を同じままにして目を強く瞑ってるけどその中がどんどん熱くなっていくのが変わることは一切なくて、口を開いたのとほぼ同タイミングでその中にこもってた息をが勝手に吐き出されたのに気づいた次の瞬間には唇の周りにも出てきた唾液の冷たい感覚が味あわされた。
「そこの人、困るよ、こんなところで寝られたら」
言葉を止める直前の所だけ伸ばす低い声が聞こえた途端、振り返りたいけどその力もないままになってしまって。その状態で魔力をかけて体を持ち上がらせようにもそれでもお腹の辺りがほんの少しだけ持ち上がるくらいで。それのせいでお腹についてた肉が戻った時にうさ耳パーカーと制服越しにぶつかったのに気づいたらまた高い声が出ることしかない。
同じ姿勢でいようとしたけど、ほとんど時間の隙間もないままに私のお腹に丸い棒が当てられたのに気づいたらその勢いのままに私の体がほんの少しだけくねりながらひっくり返されて。それで自分の顔の周りが風に吹かれるみたいな感覚を味わうけど、それで一瞬だけ肌が冷たくなったと思ったけど、さっき唇周りが唾液で冷たくなった時ほどでもないし、今度は一瞬で消えてしまった。
「とにかく、駅のそばからは消えてくれない?」
一度ため息を付きながらしゃがんだ警備員の人の方へと視線を向けると、傷が散見してる眼鏡をかけた小太りのニキビや染みが見えている顔が私に覆いかぶさるみたいな感じでこっちを見てきてて。それらの顔はほとんど影になっている物の、だんだんその濃さが増して行ってもその様子が見えにくくなることはない。
一方私は一度ひっくり返された後も胸を呼吸に合わせてわずかに上下させている間も、おでこの向こうの方から聞こえて来る街頭モニターがずっと話しているシャドの動画を見ているおじさんおばさんの声は消えないままでいて。でも、私はただただ両方の腕を自分の耳と同じくらいの高さに置いたまま曲げてて、目に力を入れないまま瞼を下ろしてた。
数秒間そのままにいたけれど、口を開けたままにした状態で上下に口を動かし続けているけれど、わずかな咳を一度だけ出すままにして、それから声の伴った息を出そうとしたけど、それの音が自分の耳にも一度だけ聞こえて来るのを感じたと思った次の瞬間、もうそれがかき消される。
「いいからとにかくここから消えて」
その少し早口目の声が聞こえた途端、語尾のたびに声を高くしているその声がして。でも、私の心臓の動きが低くなったのを感じるけど、でもそれでも遠くから聞こえるシャドを非難する声も杏の様子が街灯の光を後ろに受けながらまっすぐにただただ立ってる様子も全く変わらなくて。
それのせいで喉の震えに合わせて声が出たり消えたりを小刻みに繰り返しているのを感じさせられる。音も最初は本当に干からびたままただただ出ているようなものであったものの、それから顎に何とか魔力を込めることで歯同士がぶつかる音にして。両方の手に爪を立てて平にへっこみを作るままにしているけれど、それに対してわずかに腕の裏側を上へと向けているようなポーズのままに体を持ち上げようとするけど、ほとんどそれが上手くいかない。
「でも、私は、もう……」
「知らないよそんなの、俺には関係ないから」
声が終わった後に息を吸ったり吐いたりをしていようとしたのに、それに対して警備員の人はすぐに今までとおんなじ感じで話しているままで、5本の指の腹で警棒の持ち手の先端を持つままにそれをこっちに近い側へと90度上へと弧を描くみたいな感じで振り回してた。
繁華街のコンビニだったりカラオケだったりのいまだに開いているお店の灯りを浴びながらただただ歩いて行っている私は、近くを歩いている若いお姉さんたちがスマホを見ながら盛り上がって歩いて行ってる声だったり大声で笑いながらたむろしている髪をいろんな色に染めてるホストの男の人たちが話している姿を通り越すことになる。
色んな人たちの横を通り過ぎている間、私は左の手を真下に落っことしたままそこの肘にもう片方の手の平をくっつけるままにいるけど、顔はずっと顎を自分の体にくっつけたま下を向かせる。それのせいもあって、視界にはわずかな体が着てる袖だったり先端だったりからわずかな紫色の光を持っている姿が消えたりつけたりを繰り返しているのが見えるけれど、でも、それを私はただただ見ているだけ。
さらにその向こう側には私たちのことを追い越して歩いて行っている様子はもちろんのこと、逆から私たちが来た方に進んで行ってる足の様子も、私の黒いローファーと似てるような感じの物はもちろんのこと、それ以外の白の中にわずかな赤色が交じり合ってるスニーカーを履いてる人もいるし、真っ赤なハイヒールの人もいたり。様々な上に足を動かしてるペースも人によって全然違ってたのに、それぞれのペースが私の視界の中にいる間にその勢いを早くしたり遅くするとこはない。
私は目を強く瞑りながら足を止めて、そのまま鼻を一度すする音を立てて肩を下におっことしたまま左手の指と体を触れ合わせるか触れ合わないかくらいの位置で行ったり来たりを繰り返しているのを感じている間、口を小さく開けたり閉じたりを繰り返してる。
その間も近くを歩く人たちの足音だったり3車線ある車道を飛ばしてる車のタイヤが進む音。そのほかにも少し離れたところにあるさっきとはまた違うところにあるモニターから聞こえて来る流行の音楽のサビが次から次へと周囲へと響かせていた。それらを聞いてる自分は唇を下へと向けながら眉のあたりにしわを作るけれど、それに対して髪の毛を揺らしながら顔を左右に振って頬に手を数回当てる。
息を吐いてしばらく体をそのままにしながらいたけど、口を閉じて体を回すことで後ろを振り返って。でも、そっちには人が行ったり来たりを繰り返しているのが見えるだけでいたら、すぐに体を前のめりにしたままそこにいた人たちの行ったり来たりを繰り返している間を縫うみたいにそっちに戻ろうとしているのに対して、体を斜め前へと進めようとするたびにそっちへと行き過ぎてしまいそうになってしまって。
それのせいで体がそっちを歩いてた人とぶつかった途端に、息を吸い込みながら顔を上へと向けるけど、そっちはもう通り過ぎてそこには誰もいなかった。
私が両方の腕をほんの少しだけ横へと伸ばすみたいにしたまま足を肩幅に開いてただただそのままでいようとしたけど、息はほとんど口から勢いがないままになって出たり入ったりを繰り返してしまっていて。数回それをした後肩から落っことして顔を斜めにして肩事落っことす。
それから今度は体を全体をまっすぐに落っことしたまま目線だけを上へと向けてそっちに近づけることで杏の元に寄って。そのままじっと顔を下へと向けたまま目を細くなって、唇をずっと閉じたまま瞼を落っことした形でいる私に対して、杏はただただそこから何も音を立てずにいて。周囲からは聞こえて来るのは全部ずっと同じままでいた。
「杏、ごめん、ごめん……」
自分のおでこを杏の体に押し付けるみたいな形で上の方から下へと滑らせるままにして。それと同じ形で膝も曲げながらいるし、声もいつも以上に喉から何とか出すような形で相当高い物になってしまっていた。それのせいで、喉が痛くなっているのを言い終わった後も感じてて。でも、そのまま腕を杏の体と平行にしたみたいな体勢のまま足裏を横へと伸ばすまま足は内股にすることで体を小刻みに震えるままにしてて。
その間でも目元にいくつものしわを作ってるけど、でも、それでも杏の体の中から感じる鉄特有の冷たさは、ずっと周囲の空気と同化しつつある私の体温にもしっかりと突き刺さっているのが一切変わることはない。でも、それでも私は杏のシャツを重力に従わせて引っ張り続けていた。
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