第135話
唇と目に限界まで力を込めたまま、雨に濡れたせいでおでこにくっついた髪の毛をフルフラットシートにこすり続けるシャドに対して、コメント欄ではしばらく新しい物を表示するのを止めたままになっていたものの、そこに表示されている視聴者数の数はほとんど変化しないどころか、次から次へとその数が増えるのを繰り返した。
しかし、配信主であるシャドはずっと背中を丸めるような形でずっと顔を自分に近い側へと向けたままにしているにしている上に、それが映しているのは瞼の裏側だけなので、その様子をシャド自身が見ることはない。
さらに、そのブースの外側から見えている様子は引き戸の下側にあるわずかな隙間だけで、そこからその様子が見えているのは体にぴったりとくっついているせいで、ほとんどその色が見えている。その上に薄汚れた灰色と元の緑色と、青くなりつつある肌の色が交じり合っている姿が薄暗いその中で見えている他、スリッパの凸凹がいまだに残ったままになっているその様子と黒く汚れてしまっていて水虫のせいで皮が破れてしまっている足の裏をずっとそっちへと見せ続けていた。
しかし、シャドがいるブースの上のところはすべて開きっぱなしの空洞になっているせいで、建物そのものの屋根以外には上部分を覆うものは何もない。しかし、その仕切り同士よりも離れたところにある場所にしか常設された灯りがない上にシャドがいるブースは入り口が曲がりくねっているせいでそこにまで灯りが届いていない。
周囲ではいまだずっとどこからか男のいびきが聞こえ続けている他、通路の近くで店員同士が軽口を言い合っている声であったり、ソフトクリームマシーンが動いている低い音が聞こえていて。一方で、シャドは今もずっとただただ体を震わせながら両方の肘を曲げたまま横へと伸ばすような体勢で何度もしゃくりのような高い音を出しながら肩を上へと動かし続けていた。
しかし、そのままでいたシャドであったが、息を強く吸い込むままに喉へと力を込めたまま顔を一気に上げたのは、近くから1秒2度ほど聞こえて来る比較的早歩き目の勢いで歩いて行く音が聞こえた時で、顔をモニターと会い向かうような角度にするも潤いを限界までまとわせたせいで視界はほとんど保たれていない状態であった。
だんだんと足音が大きくなっていくのをシャドはじっと待つようにそのままの姿勢でいると、その間まっすぐにシートへと着いたままにしている腕から震えが一切消えている一方で顔から水滴がこめかみのすぐ横をゆっくりと落っこち続けている。しかし、その勢いも肌の上を少しずつ落っこちた数秒後、顎でずっとそれが止まったままになっているも、それを感じさせられている当の本人は顎をほんのわずかに上下へと動かし続けていることしかできない。
それから、小さく声を出し続けているものの、それも外から聞こえて来る音とは全く比べ物にならないほどの大きさでしか出ていなくて、それのせいでシャド自身にも聞こえているのかいないのか怪しいほどであった。そのまま音に合わせるように少しずつ顎を下へと下げた動きを繰り返していたせいか。ついにそこについてきた一滴が落っこちてしまい、本人の指へと落っこちたのに気づいたら、そこから息を吸い込んで上瞼を動かしたらその視界が開けていたようで、その途端にまた一度息を吸い込みながら眉毛を使って顔を上へと持ち上げる。
その途端、喉を鳴らすような汚い音を鳴らしながら目尻にためていた涙に青や緑や赤など様々な色をした光が吸い込まれていて、それはどちらの側の物も全く変わっていないようで。そのまま息を吸いこんで勢いよく腕を前へと何度も回転させながら体を引っ張るために持っていくままな形で繰り返す。
カウンターを叩く大きな音がブースの外にまで響いてしまいそうなほどになっていたものの、シャドは喉を潰すような力を入れたまま足をほんの少しだけシートの上を滑らせて。この動きによって顔をモニターのすぐ近くにまで、目にその光が反射するほどの距離に持ってくると、コメント欄に次から次へと流れ続けるスパチャの文字をシャド自身も読むことになった。
まじかの距離から今も増え続けるスパチャには「シャドさんのおかげで社会が変わろうとしています、ここであきらめないで!」というコメントや「シャドが俺たちチー牛の希望」や「シャドさんに勇気をもらって私も同級生刺しました。捕まる前にシャドさんにお礼言えてよかったです。あとは全財産シャドさんに託します」という物、「俺も明日上司殴ることにした。これは決意表明」「この人たちに続け、みんなで革命起こそう」。次から次へと別の人が数百円ずつスパチャがたまり続けている様子をずっとシャドは半開きの口をそのままにしたままじっとその光景を眺め続けていた。
それからも、「警察はパワハラを取り締まらないくせに、俺たちにとってはあなたがヒーロー」、「シャドって東京住みでしょ? 俺匿うよ、氷河期にも夢見させてくれ」とシャドがわずかな声でお礼をただただ言いながらカウンターに乗っかっていたキーボードを払いながらそこに両方の肘を置いてさらにその上におでこを乗せるせいで視界が見えなくなっている時も、コメントが止まることは一切ない。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ずっと、ぼーっとしてしまって……ただ、ただ、ありがとうございます……! 絶対、木月流那を倒してやる、あいつがいる限り、木月流那は、絶対生かしておけない……」
呼吸を通すために何度も息を吸ったり吐いたりを繰り返している間、それに合わせて肩を動かしていて、そのまま鼻をすすっている上に顔も下へと向けているせいで、その画面にシャドの姿は全く映っていない状態が続く。しかし、その何とか息やしゃっくりの隙間からずっと聞こえていた声は、相当に高い物になっている物のそれが途切れ途切れで聞こえていた。
そのまま一度強く目元に腕を押し付けてからその手を下ろすことなく角度だけを変えてから手を強く握りしめて鼻から息を吸って目を大きく開きながら口に力を入れて紡いでから、流那の名前を呼ぶ。もう片方の手も握りこぶしにしたまま前腕をカウンターの上に乗っけたまま顔を下へと向け、目を瞑っているその姿に対して、その間もずっとスパチャの勢いは止まっていたものの、通常のコメントでシャドにエールを送るものが次から次へと溢れ続けていた。
一方で、話を一度終えてからもう一度流那の名前を小さく呼んだ後、顔を下へと向けたまま目を開けてその視線をわずかに左右へと動かし続けているまま、広く開けた鼻の穴を吸ったり吐いたりしているがために、配信の方を見ていない。
でも、それも短時間に済ますため、一度髪の毛を左右へと振り回すような動きをしてから正座したままの姿勢で顔へと手のひらを数回叩きつけてその景気のいい音を響かせると、また顔を正面へと戻す。
モニターは未だ配信を続けていて、それに気づいてからシャドは一度体を伸ばしながらも口はずっと半開きのままにして腕も同じくしてカメラを手に取ると、それの様子を一度手の上で回すままに確認すると、それがモニターを見たままでも顔が映る位置に置いてたつもりだったが、それでも見切れてしまったがために足をスライドさせて後ろへと下がる。
それからもう一度シャドはコメントを上へと戻ることを数秒間繰り返してスパチャを読むと眉を上へと持っていくままにしていた。一方で、コメント欄は未だシャドが何も話してない間もずっと先へと進んでいて。口を開けたままに数秒後にそっちへと戻っていた。
「あっ、ありがとうございますみなさん、もっと、早くからね、皆さんと出会っていればよかったなって思いますよ、本当に。スパチャしてくれてる人は、すみません、初めての方もいるみたいですけど、それだけ私も有名になったのでしょうか」
その言葉を話している間、シャドはまた言葉をだんだんと小さくしているようにわずかな声だけを出していて。それから鼻をすすって一度息を一気に吐き出すと、ずっとそのまま顔を下に向けて目を閉じる。
その姿のほんの1メートルにも程遠いような距離にブースを仕切っている壁があって。それのせいでモニターの光が入っていない曲がった背中側は頭が低くなっている物の、ほとんど暗いまま。その様子で、ただただ一度下に向けたままずっとそのまま体を固めたままにしていた。
「えっと、シャドさん警察に見つかってたりしないでしょうか、いえ、とりあえず今のところは警察とは遭遇することはない感じですね。一応人に見つからないように狭いところだったり灯りが届かない狭いところにいるようにはしてますけど。とりあえず、警察には見つからないように気を付けないとですね。せめて、木月流那を倒すまでは、必ずやつを殺して見せますよ。こうして、皆さんに応援された以上ね、警察に捕まるよりも先にやらないわけにはいきませんから」
早口で一気に話し続けた後に口から強く息をカウンターへと向けて一気に吐きながら肘をついて目を閉じるシャドは、またそれから数回息をしてから体を起こして同じペースで言葉を話して。さらにまた同じ話し方を繰り返す。
その間もコメントが警察の悪口が次から次へと増え続けていて、それを見ている間シャドもわずかな口を横へと伸ばすような形で意識して頭を繰り返し小さく頭を動かし続けて。それからまた次の話を繰り返す。
その後、一度謝ってから体を回してからしゃがむような姿勢になって、そこをばねのようにしながら床の上に足を付くと、それからサンダルを履きなしたら、それの音をならないように慎重なペースで足を90度折り曲げつつ、肘をまっすぐ下へと落っことしたままそこを限界まで曲げて。さらには両方の手のひらを前へと出して喉を締め付けつつ口も閉じて一歩ずつ足を進めて行っていた。
しかし、数歩先へといった、受付にも伸びてる外の通路へとつながる曲がり角へと着た途端、一度口に両方の手を当てたまま、半開きの息をそこから吸ったり吐いたりを2回繰り返すと、それによって生暖かいその感覚が本人の手のひらにも付いていたものの、それをすぐに服の上を滑らせるようにすることで拭きとっていた。
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