第128話
周囲に私以外誰もいないロビーの中で、ただただ何もついてなくてその黒い画面で私のうさ耳パーカーの汚れたままになっている生地を映しているだけの姿を眺める。しかし、それは倉敷さんの部下の人が歩いて行った方でまっすぐに伸びている通路の方にしか明かりがついていない上に、そっちは私がいるソファがいる角とは真逆の場所にあるせいでほとんど見えないままになっていた。
私がいる場所からは何も音がしないものの、通路の奥の方では何かが動いている音がしているし、反対側のガラス張りになっている個所の向こう側では道路が遠くにあるせい視線を向けるとわずかに明るくなっている場所があるものの、その音は一切聞こえてこなくて。
しかし、そっちを見るとガラスに反射して見えている私の背筋を曲げたまま腕を膝の上に乗っけたままになっている様子を見ることになるものの、その表情はほぼほぼすべてうさ耳パーカーの影になってしまっているせいで何も見えないままになっていて。それに気づいてからスマホを持ったまま自分の手をフードのところに持っていくものの、目を閉じてそこで手を止めたままにしていたら、喉から息を吸い込むままにもう一度引っ張って改めてそれを深くしていた。
私がいる部屋のロビーはカウンターがあるものの、もうそこには誰もいる様子はないし、少し前の辺りにあるこっちの背をも超えそうなほどに高い身長をしている植木にある葉のほとんども暗く染まったままになっている上に、それらの下にある石たちは明らかに偽物であることを隠してはいない。
そっちに一瞬だけ目線を向けるけど、でも、それもすぐに元に戻す。それから、頭に巻いてある包帯の段差に触れると、その柔らかな感覚を味わうことになるけど、でも、その中で確かにシャドが私にぶつけてきたことで作られた傷から出る痛みを味わうことになって。唇を強く締め付けながらただただその体勢のままでいた。
それから、廊下を叩く高い音が聞こえたままにそっちへと視線を向けたら、いつも通りサングラスをかけたままになっている倉敷さんの部下の女性がこっちへと向かって歩いてきているのが見てて。顔だけをそっちへと向けたまま私はわずかな声を出す。
一方で、向こうは一瞬だけ顔をこっちに向けたような気がしたけど、通路に従ってまっすぐ歩いているだけで、それが終わってロビーの中へと体が入ったタイミングでこっちへと進行の角度を変えているようだった。
「木月さん」
私のすぐそばに来た女性は、腰のあたりにまたクリップボードを持ったまま鼠径部の辺りを隠した状態でこっちに来て名前を呼んだ時、その1文字1文字がしっかりと聞こえているのに一瞬で消えてしまうような速さその声に対して、私は中腰になって背中を丸めつつ膝を曲げたままに数秒間いた。
そして、向こうが何も話さずにいる状態を数秒間続けているのに対して、私はわずかな声を出しながら体をまっすぐに戻してその斜め前辺りになる椅子から立ったばかりのところにいる。それに対して、向こう側はこっちに体の位置を変えることもないので、私は全身を斜めに向けるようにしていた。
「あの、杏は……」
一言目と二言目の間を相当に開けるみたいにして話していくし、その声が消えていくのを自分の耳でも感じながらわずかに顔を上げてから目線を上に向けてそっちを見る。一方で、女性の方は髪の毛をほとんど動かさないままに顔の向きを変えていて。それでも、後ろ側からしかちゃんとした光が入ってこないせいで、その顔のほとんどは影になったままだった。
それを見ていた私はしばらくわずかな声を上げるようにしているそっちを見ながら喉を締め付けたままに。一瞬だけそこから視線を逸らしたけれど、それに対して向こうはわずかに足を曲げるように膝を動かしている物の、ほとんど背の高さは変わっていなくて、ただただ私を見下ろすような目線の角度を一切変えないままにいた。
「今は、自分のことだけ考えて」
その言葉を聞いた途端、私は口から息を吸い込む音を立てながら強くそこを噛みしめるみたいにして。それで頬を膨らませる感覚を味わうけれど、そのまま眉同士を強く近づけて唇を前へと向ける。それから、また逆の方へと視線を向けるみたいにして横を見るお、そっちには何もなくて。ただただ夜の月明かりに照らされることもなく家具や私たちの影になったせいで暗くなったままの光景をこっちへと見せていた。
それから目線を女性の人へと戻したら両方の手を強く親指を握り締めるために力を籠めるけど、それに対して向こうはサングラス越しには一切見えていなくて、顔の皮膚がわずかな動きをしたことで向こうから動いたのに気づいたら、目を見開きつつこっちを見る。
一方、こっちは目を一度だけ強く力を込めながら閉じて顔の向きを下へと向ける。
「あなたも、それですか……」
一度言葉を止めてから自分の顔を撫でるみたいにそっちへと手を近づけてからそっちの向きも下へと向ける。でも、それに対して喉を強く力を籠めるままに下の顎に力を込めてからまた顔を一気に上へと持っていくことで、目線が女性の顔を通り過ぎてしまう。
でも、その勢いもすぐに戻して相手の表情を見るような位置に整えてから向こうの様子を見つめる。でも、こっちが肩で息をするように上下にしているのに対して、女性の人は相変わらずにクリップボードをもったままこっちを見下ろしている。しかし、それに対してこっちは鼻からわずかな息を出すのにとどめていた。
「杏は、返してもらいます……」
最初はゆっくり出していったその声に対して、途中から急に早口になったら、言葉が終わった後は小さな声を伸ばしていくみたいに。それに続くタイミングで周囲の家具や壁のところに紫色の光が一気にほとばしったのに自分の視界でも気づいたら、喉を締めるのと一緒にそれを押さえてるみたいに両方の腕で反対側の二の腕を掴むと喉の範囲を狭くするように体を一度背中を丸めながら小さくした。
そのまま顔にも強く力を籠めると、私の足元の影が暗くなったのに気づいて、そっちを見たら女性が私に一歩近づきながら首を折り曲げて見下ろしてきているのに気づいて。その途端に向こうは一度ため息をついてた。
「悪いけれど、今のあなたにそれが出来るだけの力はないわ」
声に気づいた途端に私は体勢を一気に持ち上げた途端に、背筋をまっすぐにしたら喉を強く籠めて眉を大きく上へと向けるままにしていると、息を一気に吸い込んで、周囲に雷が吹き飛ぶみたいな高い音を聞いたら、目を限界まで大きく開いて相手の様子を見る。そっちでは、わずかに一歩だけ女性が後ろへと足を動かしてて。私もそれに気づいた途端、両方の腕を斜め下へと伸ばす見たいに。
周囲の熱くなっている空気を感じたまま電気を使ってわずかに体を持ち上げるけど、向こうを見下ろしたら、いまだ腰を落っことしたまま片方の腕の肘を曲げたままにこっちへと見せてくるみたいにしてて。それに気づいてから私は一気に体を飛ばして通路の方へとその頭の上を走っていくと、靴を滑らせてその中へと入っていく。
その音を立てている間に向こうがこっちへと近づいて走ってきている音がしたのに目を開けてそっちへと振り返るけど、その端に反対側からも銃を持った相手が現れたのに気づいた途端、息を吸い込むみたいにしていて。その途端に口を強く噛みしめていると、膝をばねのように体重を乗っける感じで足を曲げる。
一気に体をねじったのを元に戻す勢いで飛び上がりながら回転して周囲に電気をほとばしらせながら相手の背中側に回り込む。その瞬間に後ろにいる2人も倒れて床の上に落っこちて行くのを音で感じ取った。
「杏!」
等間隔で並んでいるドアがどちら側の壁にも取り付けられているのに気づいてからそっちをきょろきょろと見渡し続けている私。しかし、それに対して向こうからは何もしてなくて、それはこっちが大きな声を出した後も同じ。その声が何度も反響を繰り返しているのがずっと聞こえているだけだった。
それから、すぐ横にあるドアについている窓の中を確認するために近づいていくと、そこでさっき体を回したことで前髪が激しく乱れてしまっている姿が反射して映っているのを見ることになる。
そして、それが目元はもちろんのこと、その先までも一部の物が伸びてしまっている姿があって。脇を締めながらそっちを見つめるけど、天井にあるシーリングライトが揺れながらその灯りを何度もつけたり消したりなっている。
「杏はどこだ!」
そこからすぐに振り返って、近くにいた男へと顔を近づけながら胸倉をつかんで大きな声を出す私に対して、警備員は目を大きくしながら高い声を出してて。その途端に震える手で指を奥へと向けてさしているのに気づくと、そっちへとしゃがんだままに顔を向ける。でも、そっちにもたくさんのドアがあり、一度息をわずかに吸い込んでから立ち上がって小走りで近づく。
「木月さん! 待ちなさい!」
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