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Lunatic  作者: コンテナ店子
第二部中編
123/216

第123話

 ワゴン車の中に乗せられて瞼をわずかに下ろしながら顔と視線を下へと落としている私に対して、近くで待機していてくれた杏は両方の膝の上に握った手を置いたまま坊主頭を車の揺れに合わせて動かしている。そっちを一瞬だけ見た後、肘を膝の上に乗っけてため息をつこうとしたら、わずかに音が出てしまってすぐにそれを止めてから、少しずつ吐いていく。


 車が急にペースを落としてその動きを止めると、一瞬だけ視線を上げることで信号のせいで止まったことが車の中全体を光らせている赤色が入ってきてた途端に気づいて。左右に座ってる杏と星田さんの体は、それぞれ正面に部下の女性が両方の手を組みながらいるのと、運転手の男の人がいるせいで、全くそれに照らされそうにはなっていない。一方で、私の前にはただ車のフロントガラスがあるせいかその光が入り込んでいる。


 それを数秒間見てたけど、信号の色が変わった途端に車が発進したせいで、それが青色に染まったのはほんの一瞬で、その後には周囲の夜の闇に入り込んでいく。そんな姿を見ている間、私は両方の膝同士くっつけたままに握りこぶしを太ももの付け根に押し込むことで背中をまっすぐにしていた。そのまま口の中を限界まで狭くしているせいか、舌の根本と口の上の部分をくっつけそうに。それのせいで、まっすぐに座っている杏の方も、反対側にいる星田さんとも触れ合うことは全くない。


 そっちがわずかに明るくなったのに気づいて、目の中だけ動かすようにして右側に目線を向けると、星田さんが足を組みながら体重をドアの方へと寄りかからせつつ、窓のところの出っ張りにそっち側の肘を乗っけながらもう片方の手でスマホを起動してTwitterを見ている姿があった。


 そこでは、タイムラインでシャドや私たちにさっき起きたことを外側が角ばってる黒いかっこで朗報と報告しながら流しているのを確認してから、それが次々にいいねやリツイートされていく様子を通知画面で見ていた。星田さんは次から次へとツイートを見ている間、鼻から息を鋭く吐く音を一瞬だけさせるような笑い方をしながら口元に右側の手を当てて、そうしながらただ「草」とだけ「あいつは障碍者だから何やっても責任能力なしで捕まらないから…」というツイートにリプライを飛ばしていた。


 もうそれを書き込んでいる時には手もただ親指と人差し指をそれぞれ左右の頬へと添えるように当てているだけのポーズをしているその様子を見ている間、私は喉を強く締め付けるみたいにしかできなくて。両方の手も親指を握り締めるみたいに。しかし、それで、向こうが一切動きを見せないと思った矢先に、こっちの視線に目を合わせる形でそれを斜め上へと向けてくる。


 私はそれに対して上唇を下唇で押しつぶす表情をすることになって。それに対して星田さんはまたスマホへと目を落っことしていくと、Twitterではまたその仲間たちが次から次へとシャドの現状を聞いてくるようであったが、「今日の夜はまた雨降る予報出てるからこのままだと本気で凍死するのでは?」という物や「あいつまたガイジ特有のこだわりや謎理論で防寒するからガチ死にもありえる」という物が次から次へと流れていて、しかし、そのタイムラインにはシャドの物は1つもない状態がずっと続いていた。


 そんな様子を体を前のめりにしながら眺めている私に対して、星田さんは一度ため息をつきながらスマホを閉じてポケットにしまってから、頬杖をついている右側を当てたまま体の体勢をもこっちに向けてきて。その途端に私もわずかに体を後ろへと動かしそうになりながらお尻を杏の方へと持っていこうとするけれど、シートの段差が引っかかってしまったせいでそれ以上は動けないままになってしまっていた。


「あのさ、木月さん、自分がキモがられてるの、アニメのせいじゃないからね?」


 一度言葉を止めたと思ったタイミングで鼻から強く息を吸い込んでしまい、視線をすぐ横へと向けるのに対して、そっちにはただ後ろ側のトランクがあるだけで。しかし、ただそこには何もない空間があるだけで、斜め上に伸びている背もたれを見ても、それはほとんど角度を作っていないようにすらも感じた。


 上半身は星田さんの方へと向けたままに、もう一度顔を下へと向けるとそれのせいで背筋が曲がってしまい、杏の腕に触れてしまってそこが揺れたのを風の動きで感じ取って、そっちを見る。でも、杏も杏でいまだに車の揺れに従って、鏡についているストラップほど大きく動いてはいないものの、それと形だけは同じものになってしまっている。


 数秒間誰もしゃべらない中でそっちを見ていたら、星田さんが口からゆっくりと大きなため息を吐き、その途端に顎をひっこめることで口の形を変えたままにしてそっちへと一気に首を使うことで視線を変えた私は、また背筋をまっすぐに伸ばすことで視界の隅へと視線を入れたままにその様子を見続ける。


「障害だって、努力をしない理由にはならないっしょ」


 さっきのため息と一緒に体を下ろす星田さんは頬杖がぶつかっている個所を握り。こぶしでつぶしながら背筋を曲げて、またTwitterのタイムラインを再読み込みしていて、そこへとたくさんのツイートが一気に表示されているのを、流し見している。それに対して、目線もほとんど動かさずに、1つ1つのつぶやきもほんの1秒見えるか見えないかくらいのペースで進んで行くそれに対して私は奥歯同士を噛みしめながら体勢を最初に戻そうとしていて。それに対して向こうも何もせずにずっとTwitterをただ眺めているだけだった。


「体だけ中学生になって、未だにお子様気分のやつは、ほんとかわいそうだよ」


 そのわずかにつぶやくみたいに出ていた声を出した星田さんはこっちを見ることもなくスマホを見たままに顔の角度も変えていた。そのまま鼻と口を近づけるけれど目も太ももの付け根辺りに置いたそれへと視線を向けたままに。


 しかし、それに対して私は上瞼を落っことしたままに腕と体のスペースが出来上がっているような感覚がしてて。唇と歯の重みでだんだんと口が下の方へと向いていく。けれど、その一方で鼻から少しずつ息を吐いていくけれど、横にいる星田さんも逆側にいる杏もほとんど何もせずに動くことはなくて。でも、私もただただ車が揺れる音をほぼほぼ等間隔で流れるの感じている上に、他の車が反対側を数秒ほどで通り過ぎていくのとか、わずかな灯りが暖かな色を出していて、そこに人の影を作り続けている物、それが黒くなっているのしか見えてなかった。




 星田さんが泊まっている施設の前に車が止まると私のすぐ横からそそくさと降りると一緒にポケットに手を入れたままにステップを踏むみたいにして等間隔で歩いて行っているのを横目に見ることしかできない。


 しかし、私は口を強く締め付けるみたいにしながら瞼を下ろしたままの姿勢でいて。そのまま周囲の何も見ないままにずっとただただ自分の体を見ていた。しかし、それに対して施設に近い側にいる杏も全く同じくしているせいで、エアコンで温められていた空気がどんどん星田さんが開けていたドアから入り込んでくる冷たい空気に支配されていく。


 しかし、それでうさ耳パーカーや制服の奥にある肌もそれに反応してだんだんと冷たくなるのを感じている間、そこが鳥肌の立つ感覚を味わう。そして、それはだんだんと曲がっていく背筋のところも同じで、でも、それに対して唇を小さくする力を込めている様子は一切変えないまま。ただ、私の遠くで星田さんが入り口の重いドアを引っ張って開けている音が聞こえてきてたし、その途端に目を瞑って首をさらに自分へと近づけるみたいにすることしかできない。


「001を自分で守ると決めたんじゃないんですか?」


 わずかなため息の音と一緒に聞こえてきた部下の女性の声は、ゆっくりとだけど一切止まることもなく私の元へと届けられて、唇を閉じたままに力を込めながらいた。でも、視線でそっちを見ることもできずに一度だけ瞬きをするけど、それで向いたのはさっきまで星田さんがいた方で。そっちの道は夜の青色に染まりきっている一方で、車の前と後ろにあるライトが何度も点滅するのを繰り返していて、それで黄色い色に染まるのを繰り返してて。


 そんな姿を見てから、視線を女性の方へと向けると、そのタイミングで体を動かしているのか、シートの上へこっちに向けた肘を乗っけながら振り返っていた。でも、それに対して、私はわずかに声を出すことしかできなくて。口を開けると一緒に無理やりそれを出したら想像以上に高い声が出てしまう。


 その途端に顔が口の開く動きに引っ張られるみたいに上へと向けたせいか、そっちにいる女性と私の顔の位置が同じくらいの高さになるけれど、そのまま私は口を閉じて肘を落っことしてしまう。そっちは顔をまっすぐにじっとこっちを見てきている体勢を一切変えようとはしない。


「私は……ただ、昔の生活に戻りたかっただけで……」


 もう一度声を出すけれど、それでほんの少しだけ出たと思ったらそれと一緒に喉の音も出てしまって、それに気づいた途端に小さく開けていた個所をだんだんと小さくしていくみたいにすると、一緒に瞼を落っこちそうになってしまってて。でも、その表情のままに声を続けて出そうとすると、すぐに震えた声がでてしまって。それもいつも以上に抑揚が出てしまったのに気づいたけれど、もうとても止められなかった。


 私が言い終わったら、また周囲には遠くで走ってくる車の音と風で木々が揺れている音だけが聞こえて来る状態に戻る。女性もしゃべらないし、車も動く気配は一切ない。そんな中で私は意識して呼吸を繰り返すことでその小刻みに止まりそうになるそれを何度も繰り返している間、体もそれに反応して動くのを繰り返していた。


「杏は……もう……」


 息を少しずつ出すみたいにしている間、口をゆっくりと開けてから一文字一文字を唾液のわずかな音と一緒に出して言っていると、瞼を閉じることになるけど、そこにはほとんど力を入れないままでいて。しかし、それでなくなったはずの瞼同士の隙間から熱いものがあふれ出てくるのを押さえられなくて。それのせいで私は何度も目元をぬぐうために腕を動かし続ける。


 でも、そこが濡れるのを感じるけれどそれで服が重くなることもなければ温度を肌で感じることもなくて。でも、それを考えている間にも次から次へと涙があふれるのは止まらなくて。その上に両方の手を当てるままにして下に向けて肘を出すみたいに。


 しかし、そのまま背中までも上下に動かすようにしたままでいたかったけれど、また施設の方から足音が聞こえてきたと思ったら、それは思ったよりも重いしゆっくりとしていたもので。敢えて見ないようにしていたけれど、しばらく後にはもうそれが杏がいる方のドアを開けたのが音だけで感じられた。


「あの、すみません、先生がもう木月さんを受け入れたくないって言ってるんですけど」

読了ありがとうございます。

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