第117話
わずかな声を何とか喉から振り絞るみたいな形で出し続けていた私は、ずっと膝を杏の側に向けるように曲げ続けているのに対して、そっちから風が動く音がしたのに気づいて上を見ると、ただただ体と同じ向きへと顔を向けたままにしていた杏はだんだんと顔の向きを変えるためだけにそこを動かしてて。肩に近い角度に首を向けてるのを見たら、声を高くするみたいにしたままにわずかな声で杏の名前を呼んだ。
一方で、その視線が向かう先にはハリーと志田さんの姿があって、前者が両方の腕をわずかに横へと伸ばしたままに両方の腕を強く握りしめつつ顎を噛みめてて。そのまま1歩前へと足を出すままに膝を曲げた態勢でいた。そして、さらには「くそっ」とわずかな声を出したままにおでこを前へと出す。
一方で後者は体をまっすぐにするままに胸元で両方の指同士を絡ませる位置で止めて口をほんの少しだけ開けてて。そのまま目線を隣の人の側から杏へと戻してた。
そっちを見てから私が杏の少しだけ後ろの辺りに等間隔な感じで足を動かしていくと、そっちもそっちで体を首と同じ方へと体を向けていて。それに私が気づいた途端、足を浮かしたと思った矢先に体を前のめりにするみたいに。それの次の瞬間に一瞬だけ瞬きしたらもうハリーの首元に右手の平を当てたままその流れに沿って指をあててて。
やられた側もわずかな低い声を出しながらそのままの勢いに靴を地面の塗装されている場所を滑らせてそこから砂煙を噴き出してて。壁に叩きつけられると目を大きく開けながら杏の側に向けて唾液を吐き出してた。
「心愛さん!」
「ハリー!」
私も志田さんも勢いよく足を前に出しながら体全体をそっちへと向けて出すみたいにして。でもそのまままっすぐに見ている間にハリーは足を地面につけたままにそこをばたつかせながら、数秒に1度勢いよく息を吐き出してた。それから握り締めたこぶしを何どもその手で殴り続けているけれど、それで音すらもしない状態で。
それを見ていた後にはっとすると、それからわずかな声を出そうとした途端に、志田さんが近くにあった箒を手に取って思い切り振りかぶってから叩きつけるけど、それでもその先端同士がこすれ合う音がしただけだった。
でも、私はわずかに小さな声を出すことしかできなくて。それから手をわずかにそっちへと手を出すみたいにしているけれど、でも、口を小さく開けていることしかできない。
そう思った直後、何度も箒を杏にぶつけ続けてた志田さんが顔事下を向いたままに何度か呼吸を繰り返しているのに気づいたら、髪の毛を下に向けたまま視線を横に向けてて。それから息を噛みしめているのと一緒にこっちを見ているのに気づいた。
「杏! ごめっ……!」
「おい! 心愛さんを離せ! 僕の中ではその人は今でも心愛さんなんだ!」
数歩2人の方へとゆっくりと近づきながら手も交互にそっちへと出す私へと、志田さんがとびかかってきて。そのままの勢いに首へと両方の手を押し付けてくると、向こうが倒れこんだこっちの体に馬乗りになってて。その勢いのままに頭をぶつけてそれが痛みをまた響かせてくる。
でも、そんなことよりも私は喉に込められてる力のあまりの強さで何度も咳こむ。そのままの勢いのままに顔を前へと出すけれど、目を強く締め付けているせいで周囲の様子が見えない。それから、一度口から高い音が出るのと一緒に目を大きく開けたら、私に乗っかる志太さんが振り返っている姿に対して杏は未だに同じ場所にいるままだった。
「あっ、あ、あぁ……杏……! 杏!」
喉の隙間からようやく出したみたいな声に続いて、志田さんの手が私のところから力を一瞬だけ緩んだタイミングで、もう一度声を出してきたらそっちから振り返ってきたのに気づいて、ハリーが背中を滑らせてしゃがむと膝を立てたままに何度も大きな音を立てて呼吸を繰り返してた。そのまま両方の手首を地面へとおっことしたまま胸を何度も上下に繰り返す。
一方で私も私で顔とお腹を上へと向けたままに後ろ側全体を地面へと落っことし、また何度も呼吸を繰り返して。わずかに頭を上へと向けたままに目を細めてた。
しばらくそのままでいようとしたけど、志田さんの足音でハリーのすぐ横にまでかけて行ってるのに気づいたら、わずかに息を吸い込んでて。そのまま私も肘を立てるままに体をそっちへと向けてから片目を強く閉じながらそっちを見る。
それに対して、ハリーは志田さんの方を見ているし反対もそうで互いに目を見合っているようで。それをじっと見ている私は、ただただその場でずっとい続けることしかできない。
ずっとそのままの姿勢でいようとしたけど、2人とも振り返ってこっちを見てきたのに気づいた途端、下の唇を上へと押し付けるままに眉を下へと持っていくけれど、口の中を小さくしたままに目線を横へと逸らす。
その体勢でいたのに対して、ハリーがわずかな息と共に立ち上がったら、それが完全に終わるよりも早く視線を横へと向けるままにしていると、そっちには杏がいて。そっちを見たままに口を閉じていると、志田さんも数歩後ろに下がって唖然としていた母親の方へと近づいていた。
「いかれてんのは、やっぱ東雲だ。あいつは、やっぱくるってやがる……」
わずかに足を動かしながらこっちに近づいてきているその姿に対して、私は口を閉じたままに下を見るように顔の角度も変えることしかできない。でも、それに対してその視界の中にあるのはスカートから伸びている自分だけで。そこには傷もなくて。それどころか汚れもなにもなかった。
「でも、世古島は……私たちに自分らしくやれって言ったじゃないか……」
わずかに声を出した私は小さく出すことしかできなくて、話して言っているうちにだんだんと声が小さくなっているのに気づいたら、顔がわずかに震えている。そのまま瞼を下ろすままに目を閉じてしわをたくさん作ってしまう。
スカートを握り締めている私に対してハリーの足音もだんだんと聞こえなくなっているのに気づいて上へと視線を向けるけど、それと一緒に口をわずかに開けている私は、その表情が何もないままに私をまっすぐに見ている姿を首を曲げて見てるのと視線を合わせることになって。でも、すぐにそれを元へと戻した。
「お前は、自分が誰なのか、忘れてないか」
1つ1つの文章を止めながら話して言ってるその声を聞いている間、私の周りでは周囲の冷たい空気に包まれていることしかできなくて。そのまま口を閉じたままにいる私は目も細くするみたいに瞼を落っことしている。
一方で、ゆっくりと普段よりもだいぶ低いままに聞こえてきている声を聞いている間、ずっと頭の中が苦しいのが全然止まりそうになくて。だんだん息が苦しくなるのを感じていたら、目の中がどんどん熱くなるのを感じるけれど、それを押さえられなくて自然と涙として溢れてきてしまっていた。
泣くままに声も出そうになるけれど、それをそのままに出し続けている物の、周囲からそれ以外の音は一切聞こえてこない。
「私が東雲を倒せたのも、それよりも前になんとかやってけたのも、私が、私がルナティックでいられたのも……」
「全部、全部……」
わずかな声を1つ1つ出し続ける私に対して、目の裏側はわずかな赤と青が混じり合うみたいな渦がずっと動き続けているのを表現しているみたいなままで、呼吸が何も障害がないはずなのに通りが悪いのを体感させられて。でも、私はわずかな呼吸を繰り返すことしかできなかった。
それから、立ち上がって顔は下を見たままに目線だけを杏の方へと向けると、そっちではハリーの首から手を離した時のままに手を空気を挟んで地面に立てるみたいにしたままにそこの指を開ていて。その地面と平行になっている腕の一切曲がっていない様子をじっと見つめることになってしまった。
一方で、それを数秒間見続けている私がわずかな声と一緒に杏の名前を呼ぶけれど、それに対して向こうは一切動いてくれない。それに気づいてからもう一度声を大きめにしてから呼ぶと、それから振り返ってくれて。こっちに近づいてくるのを見てから首を前へと出すままにまっすぐ腕を落っことしたまま足もできるだけ歩幅も小さくして歩いていくことになった。
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