第110話
近所の漫画喫茶のフルフラットペアシートに座る志太とハリー。前者は正座した状態で体を前のめりにしながら腕を伸ばすことでそっちにあるスマホの角度を調整しているままに顔を斜めにしている一方で、後者は胡坐をかいたままにそのひじ辺りに両方の手を乗っけたままにしていた。
その表情は眉同士の間にしわを作るままに顎をわずかだけひっこめているのに対して、その前にも相手の体が来ているせいか、その体がスマホ側には映っていない一方で、近くにある小さい側のテレビを見る用のモニターにはその普段よりもより濃い茶色に染めた肩までストレートに伸びる長髪の様子がしっかりと反射して映っている。
一方で、志太のほうはスマホをもう一度固定したままにそこから両方の手を空気を挟んで包みこむように手を離すけれど、それに対してそっち側は何も動かないままでいて。それを確認してから息を吐くのと一緒にゆっくりと「よし……」と小声で言ってから相手の方へと振り返ると、向こうは同じ体勢のまま背筋をわずかに前のめりにするような姿勢でいた。
もうすでに胡坐を掻いている側のお尻の位置に合わせる辺りにもう片方もシートを持ってきて、その上に正座して座ると一度喉を押し込むみたいにして目を大きく開く。それに対して、ハリーはずっと同じ表情をしたままにただただ正面を見続けているし、その顔の位置は相手よりもわずかに下になるような場所でずっと固定されたまま。
「よし、それじゃあ、行くよ」
その声を出した志太の顔も、その横のハリーの物も、どちらもyoutubeのトップ画面のサムネが並んでいるところ以外はすべて真っ白になっているモニターのバックライトに照らされていて、薄暗い漫画喫茶の中でもその表情はしっかりと見えていた。それに、スマホのカメラの位置が上のところになって2人をそこから斜めに撮影しているような形になっているせいか、部屋全体の様子を大きくとらえているようだった。
それに対して志太が太ももに当てている両方の手を強くそこへと押し込むことでジーパンの上でそこがへこんでいるのも見えるほどになっていて。そっちへと視線を向けたまま顎を引く。一方で、視線をそっちへと瞳孔をスライドさせるみたいな形で見るみたいにしているのハリー。
視線に気づいた途端にそっちへと自身の手のひらを見せるみたいにしながら前後にそこを動かして口を小さく開けて息を吐いていて。それをされた側は肩を落っことしながら息を吐いているのと一緒に目尻を落っことす。
その後、志太の方からもう一度体を正面へと伸ばしてスマホの画面に指を一度だけ触れた。その瞬間、2人の体を包んでいる光が数秒間だけ黒くなる。そして、それと共に正座していた足や尻から伸びている体を大きく上へと伸ばすようにしている側と、その隣で一度顔を下へと向けながら顔へと両方の手を叩きつけながら姉御の名前をわずかに呼ぶ側がいた。
「シャド、あたしだ。もう別人のつもりだが、お前の中ではあたしは花笠心愛だ」
配信が始まってからも数秒間顔を下へと向けたままにしていたハリーが目線だけを上に向けるままにするも、そっちにあるのはパソコンのモニターで、そこに映っている彼女はだいぶ暗い表情になっていた。
しかし、その横にいる志太は一度だけ自分たちが映っているモニターの様子に視線を移してから顔と同じ向きに戻す。瞬きをしてから見たそこには、彼も首を使って視線をずらしているせいか、コメント欄へと一心に向く。
そして、そこに映っている2人のことを「気持ち悪い」というものであったり「正義マン」などの軽い誹謗中傷から長文で非難すもの、一方で「仲よさそうで草」というものや「おしゃれやん」などの感想を言うだけの物などの文字をまっすぐに見ながらいるせいか口を強く紡ぎ続けていた。
「心愛さん、これ、見て」
いきなり口を開くと共に、志太は一気にハリーの側へと振り返ると、それと共に画面の近い位置へと指を伸ばすようにしていて。しかし、彼が狙ったそのコメントはすぐに画面外へと消えて行ってしまう。なので、ハリーが目を大きくしながらわずかに前のめりになったのも無駄になってしまった。
それから、話しかけた側の方からすぐに体を前へと出し、マウスでホイールを動かし続けるも、最大までさかのぼっても狙いのコメントはすぐになくなってしまっていた。
「あの、見逃してしまいましたし、あなたがシャドさんだって証拠を出してもらえますか? 名前だけならだれでも出せるし、心愛さんはこうして顔をだしてるんですから」
それからもう一度息を吸い込んでから自身の口を閉じる志太。その横でハリーはまた同じ体勢のまま両方の肘に立てた前腕を肘が曲がるところまでまっすぐに伸ばすと共に、わずかに浮いていた足をシートにくっつける。
一方で、コメント欄の進みが急に遅くなることで、そこに出ている「ドキドキ……」というコメントや「シャドさんが逃げるわけない」というコメントの2つに2人の目の焦点が集中していて、それのせいで、漫画喫茶のゆったりとしたBGMの中に包まれているにも関わらず、そのバックライトだけで照らされている2人の顔は喉を強く締め付けるみたいになっていた。
そのまま顎の力で口を紡いでいた2人は、次のコメントが着た途端にそこを開けることになる。それから、志太がすぐにハリーの方へと体の向きを変えると共にポケットに手を入れるも、それでスマホを配信の撮影に使っていたことに気づいてから、わずかな声を出す。
それからハリーの物で改めてツイッターを開きなおすと、そのDMに自身の顔をかなり上から撮影したシャドの顎とその向こうにある顔が真っ黒な視界の中で映っていた。それを顔を寄せ合ってその間の正面に置いたスマホの画面を見る2人。口元を締めながら目を細めている同じ表情でいると、志太は自分の足同士を強く締め付けるし一度喉を飲み込むように動かしていた。
ハリーも眉間にしわを寄せたままでいようとしていた一方で、その2人の動きは一気に周囲に軽快で高い音楽が流れ始めたことで一瞬で崩れてしまった。体を大きく倒したその持ち主が左手でそれを支えるようにすることで少し上の方で取り付けられているスマホを見ると共に口を大きく開けてそっちへと体を慌てながら四つん這いになって進んで行くと、すぐにその着信に対応していた。
「ちょっ、ちょっと、お母さん、今は忙しくて、またあとでかけて! わかってる! わかってるから! 今大事な時なの! すぐかけなおす! それじゃあ!」
ものすごい早口でまくし立てる志太は電話を一方的に切断すると、肘をついてため息を大きく吐き出していた。それから、おでこに両方の手を強く押し付け、そのまま猫背の姿勢をしたままに。それからすべての指の関節を持ち上げるようにしながらだんだんと指とそれがこすれ合う音を立てて行ってた。
わずかな声で「お前……」と言った後に目をしわを作るレベルで強く瞑った後に肘をもう一度叩きつけることで一度鼻から深呼吸を繰り返すハリー。それから一度強く爪を立てるほどに膝を握り締めてから視線を正面へと向けると共に口で数回呼吸を繰り返した。
「しっかりしろ、まだ終わっちゃいねぇ」
息を吐くと共に出すようなわずかな声を聴いたこともあり、すぐに志太は膝へと両方の手を戻すと顔も真正面へと戻す。それに対して、目線だけを動かしてそっちを見ていたハリーは口をわずかに横へと伸ばすようにしながらまた画面へと向き直った。
そっちではまた次から次へとコメントが流れ続けていて、その分量は先ほどよりも明らかに増えているせいでとても追いつけないほどであった。しかし、彼女はそこではなく画面の方をまっすぐに見続けていて、顔の表情がしっかりと見えているのは志太の方だけ。
「腰抜け……木月流那はあたしの舎弟だ。あいつに用があるなら私を倒すのが先だ」
最初は僅かに出した声。それがだんだんと消えゆくのに対してハリーは数秒間待ってからまた次の言葉を出し始めた。それはただただまっすぐに出していくようで。言い終わった後とその前で表情が変化することもない。
一方、そっちを横目に見ていた志太は目をわずかに開けながらそっちを見たけど、その数秒後にはそれを彼女がいない側の横へと動かす。それと一緒に上瞼を落っことすみたいにしているのに対して、周囲では廊下を人が歩くことで靴がそこを叩いている音がわずかにしているだけ。
「最初に会った場所、そこに明日の18時に集合だ。1対1でだ。他のやつに手出しはさせるな、私もこいつには手出しさせない。いいな」
「それと、聞いておけ、お前がどこのだれかわからないけど、僕は心愛さんに手を出すなら、絶対許さないからな!」
同じトーンでしゃべり続けたハリーの言葉が全部終わって一度下を見てから元に戻した数秒後。歯を強く食いしばった志田がその肩に手を乗っけたまま彼女の体をのかしつつ前足を肩膝立ちになったままに目と口を大きくして発してた。
それが言い終わった後は顔を一気に下へと向けたままに何度も口で呼吸を繰り返してて。それで体が上下にずっと動き続けるの以外では一切他の場所が動いていないようにすらも見えている。
一方で、手を乗っけられた側は自分の左手の肘をそっちへと向けるみたいに前へと出していて、それに対して右側はシートに沿っている足と体を支えるみたいに肘をついていた。
2人とも数秒間そのままでいたけれど、志太がスマホを操作して配信を切ったタイミングでそれも終わり、ハリーの肩からも左手が離れていた。スマホに付けていた指を数秒間そのままにしている間、周囲からは何も音も動きもしなくて、それを落っことしてからまた数秒後に振り返ってわずかに笑うみたいにしていた。
「これくらい、覚悟の上できたつもり」
その引き締まった声を聴いた途端に同じ姿勢のままわずかに開けていた口を紡ぐハリーは、口をわずかに開けると共に立ち上がり、それから腕をまっすぐに伸ばしてこぶしを志田に向けて突き出す。そうすると、された側もそっちに向けて曲げたままにそこへとゆっくりと自分のを合わせるみたいにした。
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