第107話
自分の学習机に向けたまま頬杖を突きながらも、もう片方の手でスマホを持ったままにしている志田は、そこにある電話の着信履歴を眺めている間、何度も引っ張っては戻して引っ張っては戻してを繰り返している。やった数秒後にはまた同じ動きをしてを繰り返しているけれど、顔の向きは違う箇所に向かっている一方で視線は画面へとちらちらと向け続けている。
それから、濃いめの青色の帯に書かれている着信履歴の文字を隠すみたいに出てきた通知に対して目を大きくしてみるけれど、その中身を見た途端に息を吐きながら頬杖をついてた方の手を使って勢いよくそれを画面の横へと飛ばす。
またもう片方の手でスマホを操作して着信履歴を再読み込みしようとした途端でまた同じような表示が表示されて。その途端に頬杖側の手を握りこぶしにして机に叩きつけると、そこには広がったままになっている数学のワークブックとシャーペンがあって、後者が音を立てる。
さらに体を机へと少しだけ近づけながらため息をついて、それからまたスマホを見ると新たな通知が次々と表示されていて。ついに志田はそれをタップしてラインを開いた。そうすると、左側の白い吹き出しが続々と並んでいて、そのラブライブの女の子やポケモンのアイコンをしているのを軽く上へと動かしながら上瞼を下ろすようにして見つめた後、上にある三つの棒のマークへと触れようとした矢先、喉を飲み込みながら力を込めて鼻を動かしていた。
丸で囲われた三角形の下敷きになってそこにいる、小さな画像にいる流那の存在に気づいて、それに触った途端画面がyoutubeに移動する。それを見ていると、ただ肘を落っことしたまま何も乗せずにいた手から顔を離してスマホ側へと近づけるみたいにすると、すぐにそれと一緒に口から息を吸い込んでた。
一方で、画面では川辺で流那が飛んでくるサバイバルナイフを障壁ではじき続けている様子がずっと映っていて。その火花が飛ぶのと一緒に高い音が鳴り続けているのが聞こえていた。そして、志太はそれに対して右手の握りこぶしを自分の目にこすりつけると一緒にそこを閉じて。それを左側でも同じように。
そうすると、流那の前にある紫色の地細い直方体に、長い髪の毛を自身の顔に乗っけた水びだしの病衣姿をした人間が腕を振るい続けている様子が映っているのをじっと見ていて。それが見えなくなったタイミングで動画を止めたらすぐに上唇を下唇に押し付けながらシークバーを弄り始めていた。
足を素早く階段を靴でたたく音が一切途切れないように意識するかのようなペースで一気に駆け下りていく志太であったが、途中でそれが角度を1回転するようなタイミングでも、一段一段踏みしめているせいかそのペースが落ちることはない。それどころか、一度肘まで向かう途中で下がっていっている手は、そこのところで一度上がるみたいになっている一方で、そこからまた肩と平行になる位置まで手のひらが登っているのは全く同じであった。
そして、その足が階段を全部おり終えた辺りで近くにかけてあったコートに手を通してからそこに握ってあった財布とスマホをポケットにしまおうとしていて。でも、すぐ近くにあった引き戸が引かれた音がしたタイミングで、首だけだけどもそっちへと視線を向けようとしたけれど、そのタイミングで上着を着終えたようで、すぐそばにある靴置き場へと移動していた。
引き戸からは彼の母親がエプロンを付けたままに唇同士をくっつけた口を一度動かすみたいにしているけれど、そのままに足音を立てずにそっちへと近づけている。しかし、それで志太の前にもその影が入り込んでいたとしても、その体は靴ひもを縛りなおしている様子から一切動こうとはしない。
そして、その体は母親とは違う角度にあるのと、正面にあるドアの目隠しがついた窓からも外の街灯の光が入り込んでいるせいか、前側も後ろ側もオレンジ色に染まっているようである。そして、それはかかとを軽く数回床へと突くようにして靴を整えている間も一緒だった。
「陽、出かけるの?」
その高い声を出した後にそれに続いた声はだんだんと小さくなっていくみたいで、その体勢も自分の胸よりも少し下の辺りで両方の手を押し付けるみたいにしているがままになっているみたいで。それに対して志太は上着のチャックを締める手に視線を向けているようであった。
そっち側にあるドアは左右に2つの列を作るように窓が並んでいて、片方からはオレンジ色の光が出ている物の、もう片方は真っ暗になってしまっている。しかし、それを見ている本人は一瞬だけ母親の方に振り替えるもすぐにそれを元へと戻してしまう。
「心愛さん探しに行く」
すぐにほとんど抑揚をつけないままに言い放ったその言葉に対して視線は聞いている母親の方へと全然向けずにただただ歩いて行っている。しかし、聞いた側はわずかに開けていた口から息を吸う後に足を数歩進めてから置いてあったサンダルにすぐに履き替えて両腕を横へと振りながらそっちへと近づく。
一方で志太の方はもう玄関を押しながらすぐに外へと出ていき、また顔の右側だけが街灯の光に触れながらも、もう片方は夜の真っ暗な闇に触れ合うみたいにしている光景を表現しながら一瞬だけ立ち止まって目線で辺りを見渡すみたいに。
「あのね、気持ちはわかるけど……」
「緊急事態なんだ! 夕飯は後で食べるから置いといて!」
最初の母親の声は街灯からわずかに聞こえてくる音よりは少しだけ大きいくらいだったのに対して、外から聞こえて来る声はそれをかき消すくらい大きなもので。その声と一緒にすぐに近くに立てかけてある自転車に乗っかろうとすると、わずかにお尻の位置がずれていて漕ぎ出すと共に体がずれてしまう。
しかし、それもすぐに直すと志太は母親の方へは振り返らずに道路へとつながるわずかな段差を乗っかったまま下りていくと、道路に沿った向きへとすぐに角度を変え、立ちこぎでそこからいなくなってしまった。
自分の片手をわずかにお腹と胸の間辺りに当てている母親は目を力を籠めないままに開けてもう息子がいなくなってしまった道をただただ見つめている物の、その先では車がせわしなく行き来を繰り返しているだけで、そこにいる間もその音をずっと立てているだけだった。
志太はゆっくりとではあるもののずっと何度も口から息を繰り返しながら、足を動かさずにただただ自転車がわずかずつゆっくりになっていく様子を、立ちこぎで目線を左右へと向けながら感じ続けていた。
しかし、1分経つか経たないかくらいのタイミングで息の音を自分でも聞こえるくらいに強く吐きながら車道もある方へと首を向けつつ、足を片方だけ地面についてじっと暗くなっていてガードレールの向こうにある雑草と細い川の姿がほとんど見えていないその光景へと向け続けている。
しばらくそのままでいようとしたけれど、自転車の持ち手に右肘を置いたままに手のひらをおでこにくっつけている一方で、一度息を吸い込んでいた後に口からもう一度同じことをして、横へと広げた親指と人差し指の間に自分の顔を押し込むように力を籠める。
姿勢はそのままにスマホをポケットから取り出した彼は自分の体よりも斜め下の辺りに左手で持ったままにそこだけで操作して電話履歴を開いてもう一度再読み込みを確認するものの、そこには何も出てこない。それから、おでこを手のひらへと重く押し付けるように。しかし、その直後にバックライトが薄くなったことからその顔を照らす光も同じくなる。
川がある反対側には工場が一帯に並んでているものの、そこから灯りが見える場所はなくて、薄く黒くなった場所で四角形の建物や鉄骨が不規則に並んでいるようで、その姿は本当に表面側しか見えていない。その一方で、志太のすぐ横では時折車が走ってきているようで、そのライトで体も照らされるタイミングもあるが、それによって色が変化しているのは背中や肘の辺りだけで、その正面側や顔は一切それに照らされていない。
その間もただただ下の唇を上に当てながら目を細くし続けている表情を崩すことは一切なくて、そのまま鼻から小さな息を口返し続けていた。
「心愛さん……」
その言葉をわずかに出した後、もう一度唇に込める力を強くして。それから顔を強く前へと出しながら勢いで髪の毛も動かす。それから両方の手首を持ち手に乗っけたまま、両手でスマホを強く持って視線をそっちへと向ける。それに対してそこでは何も反応がなくただただそこで電話履歴を表示している画面がいるだけ。
同じ表所のままずっとそれを見つめていた志太であったが、それも数秒間続いたと思った矢先、その画面が消えてしまい真っ暗になり替わりとして自分の顔が反射して映っているのを見ることになって。それと同じタイミングで息を強く吸い込みながらその音をわずかに自分でも聞くことになる。でも、それに対して周囲では何も起きなくて車も通っていないせいか音もなくなってしまっていて。そのあたりを見渡しても頭を垂らしている雑草の姿や白い塗装が剥げて赤くなり始めてしまっている上に角度も曲がっているガードレールの姿しか見えないまま。
そっちの光景を首も目も一切動かさずに一度見つめた志太は、その間に手から力が抜けていたのか、少しずつスマホを持っているそれの角度がだんだんと変化していっている物の、その間はそれ以外の個所は一切動かさずにいた。
数秒間経ったと思ったタイミングで、声を口の中で出すのとも違う喉を動かすだけの音を立てた志太は、視線の向きを変えて正面を見ると共にもう一度スマホのスリープを解除する。そして、それから間髪入れないほどのペースで指を動かし続けている物の、ロックを解除した後にもう一度またアイコンで通話履歴を開いた時にそれは止まる。
目線を左右へと動かすみたいにしながらいるその光景に対して辺りは一切反応しない。そう思った次の瞬間、またバックライトが薄くなっているのに気づいて、その途端にそっちへと視線を戻しながら口を強く紡ぐ。
さらに、一度右手の親指だけを使ってハリーの受信履歴を触ると共にすぐにもう一度指を動かしてそれに続く発信を押す。その間、鼻でも口でもほとんど息をせずに押し込んでいた。
その次の瞬間、スマホから発信をしている高い音が聞こえ始めた途端、わずかな声と共に口から息を吐いて目も大きく開く。それに続くみたいに側面同士を親指と残りの四つの指をそれぞれの間に重ねるみたいにして持ったまま、同じ表情ですぐに耳へとスマホをつける。それと共にそこがわずかにへこむんでしまうのもあり、彼が聞いている呼び出し音が篭るような形に。そのまま口を紡いでスマホを持っている右手側の脇を締める。
何度もなり続ける発信音。それを数回聞いている間、目をわずかに瞬きしたりを繰り返しながらいる志太であったがそれ以外の個所はほとんど動かさず、音が切れるタイミングでわずかに息を吐いているくらいだった。
しかし、耳にスマホを当てたままいる志太は、だんだんと眉が少しずつ落っこちて行くのを感じたまま、口を小さくしていくような感覚があって。ため息をつきながら一度スマホを自分から遠ざけようとする。
それと共に、だんだんとそのバックライトが顔を照らしている範囲が少しずつ広がっていて。そのまま口から息を吐きつつおでこに両方の手を当てながら顔を下に向けるものの、右手は目元を落っことしている間もそのままにしているようだった。
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