第101話
木出てきたような細長い板が一直線に並んでいて、その表面がワックスに塗られているようで天井の光だけを反射している図書館の中、たくさんの本棚が並んでいる場所の奥にある角でシャドは床に尻を着いた体育座りのままに自分の膝の上へと手首を乗っけたポーズで背中を猫背にしていた。両方の関節でスマホを持つようなポーズのままいるその光景のうち、配信に映っているのは口元だけであった。しかし、彼はその部分をにやけさせるように先端だけを上へと持ち上げるようにしていたと思ったけれど、その中にある黄ばんだ歯は数秒後には見えなくなってしまっていた。
それから、一度離した片方の手で自分のかさついている髪の毛の中へと挿入し、そこで何度も掻き続けていた。さらに、同タイミングでそこからふけが何度も落ち続けていてその汚れが両方の肩へと落っこち続けているも、それだけでは終わらず、床にも落っこちているものの、手前側にあるガラス張りの壁から入り込んでくる太陽の光も少し離れたところにある天井の照明そこには届いていない。
もう一度シャドはそれが終わるとスマホへと手を戻したらその両端を手で支えるみたいな形にしている。その一方で、その背中のすぐ奥には本人の上半身のうち胴体となる部分全てを覆いつくせるほどの大きなサイズの本がハードカバーの背表紙を見せているようであったが、それらはすでに光が届きにくいせいで影になっているせいでシャドのそれが映っているわけではない。
「今日はWi-Fiが短い時間しか使えてないんですけど、緊急を有する事態ですし、手短に配信させてもらいます。もう要件言っちゃいますね。あのですね、今日はナヌナロさんからのDMで来た連絡の、栗林智花を成敗していきたいんですけど、皆さんの協力がないと今回はむずかしくてですね。もうTwitterには上げてあるんですけど、あいつが酒飲んでるところをインスタにあげてるのをね、発見したので、そのスクショを拡散してほしいんです」
その話を左右へと何度も視線の向きを変え続けるように首を動かし続けるシャドの動きのせいで、配信の中から本人の顔が映るタイミングが右から左へと移り変わるわずかなタイミングしかない。
しかし、コメント欄ではRTしたことを報告しているコメントだったり、複垢も使ってたくさんRTしたことも報告している人物もいる。それの流れるペースはいつもよりわずかに遅いものの、それでも数秒に1度は全く異なるアニメアイコンをしているアカウントがしているようで、それらが途切れることはない。
「あと、もしインスタのアカウントを持ってる方がいてもまだ凸しちゃだめですよ。ある程度燃やしてからでないと危機感が少ないですからね。栗林智花のツイッターも特定していますが、RTするのは私の捨てアカのスクショにしてください」
その言葉は最初はいつも通りのゆっくりとした低い声だったのに、終盤の辺りになると声のトーンが急にどんどん上がり始めて、それと共にシャド自身も反動をつけて体を起き上がらせるように。それから体勢をスマホの上に覆いかぶさるみたいなものに変えていた。
目を大きく開けながら汗を一滴垂らしていて、何度も指をそこへと叩き続ける音をわずかな喧騒だけが聞こえて来る中で少し遠くまで聞こえそうなほどに立てていた。しかし、それで本棚の向こう側にいる人たちが何かをするでもなくイヤホンをしたまま勉強していたり昼寝をしていたりのままの姿でいた。
一方でシャドは口をいつもの半開きの姿の時よりも大きく開けるみたいにしながら息をわずかに吸ったり吐いたりを繰り返す。それから、おでこを頭の辺りで何度も吸ったり吐いたりを繰り返すようにしていた。
しかし、音を立てながらそれを何度も繰り返した結果、息を吸い込んで口を強く閉じている一方で、肩を一度持ち上げるようにしていたものの、その数秒後には顔を斜め下へと向けたままに何度も息を吐くようにしていた。
それから顔の向きは同じく下唇を上へと押し込むみたいにするシャドは鼻から息を吐くとともに肩をわずかに前のめりにするみたいにして腕を下ろしたままに歩き始めるけれども、その横にあった本棚の数々が数個通り過ぎたところでそれが見えなくなった。
顎を自分の体へと近づけるみたいな鼻を数回動かして立ち止まりながらパソコンを叩いている受付の人の様子を目を細くするみたいにして見続けるのに対して、そっちの人はわずかに体を前のめりにしてただただそこを見続けるみたいにしていた。
しかし、シャドは土やほこりの汚れで色が薄れつつある自身の病衣をそのまま下げたのを強調するような腕と足をまっすぐに落とす格好でただただそっちを見ていたけれど、その数秒後に自身の胸へと両手の指を重ねるみたいにして進み始める。
「あの、すみません……」
カウンターの前へとシャドが着たタイミングでそこにいた係員がキーボードへと目線を向けるみたいにしているののままいたけれど、歩いていた足が少しずつ遅くなっていって最終的に止まってしまったタイミングでもそれは一緒。
しかし、それに対してシャドはわずかな声を出しながらもそれに意味を持たせることもできずに左右へと視線を動かしていて。それが数秒間続いたタイミングで顔はそのままに視線だけを係員がシャドの方へと向けた。
一方、本人は黙ったままでいるその目線に対してわずかに足を一歩だけ後ろに下げるみたいにすることしかできなくて、それから何度かまた言葉になっていない声を出す。
「やっぱり、身分証ないと、カード作れないですか……」
「はい、無理です」
何とか出したしどろもどろな話している本人の方ではなく斜め下の方を見たままに出たその声がわずかに消えようとした途端、その瞬間にかぶせるくらいの勢いで係員が声を出したと思ったら、早口で大丈夫と何度も繰り返していきながら声を小さく出し続けるシャドは、上唇を鼻に近づけるみたいな表情をしながら早歩きで外へと出ていくみたいにしてしまっていた。
しかし、その出口にあった自動ドアがすぐに開かないことで数秒間そこへとぶつかりそうになったタイミングで立ち往生になってしまっていた。一方で、係員はその様子を見ることもなくすぐに視線を近くにいた他の人に向けると、鼻から息を出しながら腕を曲げた状態のでシャドの背中へと指さすみたいにしている。そして、それに話しかけられた側もそれに合わせるみたいに頬を持ち上げていた。
シャドが図書館の中から出てから数時間後、大きなため息を吐くみたいにして、トイレ全体にその音を響かせていた。おでこに手を当てるみたいにしながら便器の上に座って膝を立てるポーズのまま髪の毛の中へと指を入れるようなポーズをしているせいかそこの上を指が滑る。
そして、その数秒後、少し離れたところから鍵を閉める音が外の吹き抜けになったロビーの中で響き渡るのをシャドも感じたのか、一度だけ手を頭から離すみたいにしながら頭を少しだけ上に持っていくみたいにしてから息を吸い込むみたいにしていて。それから数十秒してから個室の中から出ていく。
自動の蛇口に手を近づけるとともにそこから出てきた水で洗い流しているのに対して、体を照らしているのはすぐ斜め後ろにあるドアのない出入り口の外から入り込んでいる緑色の光だけ。水が止まるとともに、服に手を何度も叩きつけると周囲に水しぶきを飛ばしながら歩いていくシャドは、男女のトイレへとつながる細い通路を背筋をいつも以上に曲げながらゆっくりと前へと進んで行くようにしていた。
それから、ガラス張りになっている正面の壁の向こうで唯一止まっている車へと向かって歩いて行っている大人の人がそのカギを開けることで数回テールランプが点滅しているのが見えた数秒後に、シャドもその細い通路から少しだけ出していた体を姿勢はそのままに歩き出させる。
昼頃に来た道を戻るように同じ建物の中にある図書館へとつながる自動ドアのところまできたシャドは、そのまま数秒間自分の腕を体へとくっつけるみたいにして立ったままにしていたものの、それに対してドアは一切反応しないし、その細いわずかな隙間に手を入れようとしても、伸び切った爪がそこが引っかかるだけ。それを数回した後にため息をつきながら小さく「くっそ」とつぶやいていた。
また同じ個室へと戻ったシャドはスマホを開いて電源ボタンを押すも、それで電池の中身が赤くなってしまっているマークをそのままに表示しているその様子を目を細くするみたいにして見つめているのに対して、それを棚の上に一旦おいてからポケットの中に入っていた充電器をウォシュレットのコードを引っこ抜いてからそこに差し込んで。もう一度スマホの電源をつけると、黒い画面に反射して映っていた顔が消えてなくなるとともに、その黒い顔に白いバックライトが入り込んで、それと共に乾燥してニキビやシミが多数出来上がった顔がいた。
スマホの電源が入って操作もできるようになったタイミングですぐにTwitterを開くと、そのまま自分のプロフィールを開く。そうすると、そこには数万のリツイートがされている物が表示されていて、それを見たシャドは半開きになっていた口を横へと広げるように。さらに鼻から大きな息を一度吐いていた。
それから、来ていたリプライや引用リツイートを確認すると、そこには栗林智花の物はもちろんのこと家族の名前や勤務先も書かれていて、本人の進学先や家族の職場へとたくさんの通報したことを報告するコメントまであった。
しばらくただただ片手で持ったスマホを親指だけで操作していた彼女はわずかな笑みを浮かべながら声も出していたが、だんだんと元の口を半開きにした表情へと戻り、スマホを置きながらため息をつく。
まっすぐに足を延ばしながら頭を前へと出すように首を曲げていたシャドは数歩正面へと歩いた後、そのままおでこよりも少し先の辺りを思い切り正面の個室を仕切るドアへと叩きつけるみたいにして、両方の手の平もそこにくっつける。低い音の後にそのままの姿勢でいるシャドであったが、またもう一度そこを浮かせてもう一度叩きつける。そして、それを何度も何度も繰り返し続けていた。
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