第10話
そう思ったが、その瞬間には彼女の背後に例のドローンがホログラムのゲートと共に現れ、水色と緑の光を放ちながらプロペラを回すと天井の光を反射しつつ装備した銃を見せつけた。だが、その時、一瞬だけ発射するまでの間の隙があると、その時に姉御と呼ばれてる人の目が大きく開くと一緒に周囲の血管が浮き出るように形が露わになり、両腕を腰の上で構えるように曲げて手に力を込めた。
「姉御!」
「あたしがこんなので倒せると思ってんのか?」
その言葉を発し終えた瞬間、それと一緒に放たれた衝撃で一瞬にしてドローンたちがプロペラごと壁にたたきつけられ、その音がしたと思った数秒後には私も浮き上がった足の代わりに両手をトイレと外との間の壁を掴むために使う。それからも何度もやってくる突風で私の体は指が滑ったせいでそこでしかつかめなくなった瞬間、すぐに宙へと浮かび上がったと思った時には、遠くのコンクリートへと叩きつけられ、背筋を中心にそこへと貼り付けられる。さらに、その衝撃で口の中から唾液が吹き飛んで、それは胃の中すらも出てきそうなほどだった。
突風が収まるまで私はその場所から動けないままにされて、それが終わって地面に落っことされた時には何度も目をつぶりながら咳き込んでしまい、その度に衝撃が背筋に伝わってきて腕が激しい痛みを訴えて来る。それに耐えきれず、腕が曲がってお尻を突きあげながら地面に顔を付けるような姿勢になってしまった。目の前にはコンクリートの灰色が影になって薄暗くなっている姿以外には何も見えなくて。おでこをそっちに擦り付けようとすると、目に見えないほどの小さな砂利がこっちが動くたびに擦れて来た。
そのまま何度か口で息をしながら前を向くと、東雲と姉御の人がおでこを突き合わせるほどの距離にまで近づいていて、後者が変身をすでに終えた破れた長いスカート姿でわずかに顎を引いて髪の毛の影から上目遣いで見ているのに対して、前者は相変わらずただただ真っ直ぐに見つめていて、そのせいで視線がおでこの辺りにぶつかっている。お互いに動かずにいる一方で、周囲にいる女子たちは互いを見つめ合ったり手を出せそうで出せずにいる様子だった。
私は歯ぎしりをするように1回だけ口を動かしてから自分のお腹がある方へと目を移すとそっちの方ではパーカーが膨れ上がるように重力で垂れ下がっていた。
「今回は145番と204番と256番を連れて行くであります。早く出てくるであります」
その言葉を聞いた時私が顔を上げたと思ったら、東雲の頬に右の拳が入り込んでいてわずかに凹んでるけど、背筋がまっすぐに伸びた姿はそのままで、後ろにいた手下の方に目を向けると、そこにいた人がさっきの番号を復唱しながら歩き出す。それに対して、周囲の女子たちはすぐに距離を置く様にするけど、東雲がそっちを見る度に全員が足を止めて視線をそらしていた。
「なんだよ、あたしが相手じゃ不満か?」
「マウスに好きも嫌いもないであります」
そう言いながら東雲が取り出したのは、自らの手元にドローンで、それを見た瞬間私の手が出たと一緒に目と口が一緒に大きく開いたけど、そのアームを掴んで相手にぶつけようとする東雲に対して姉御の人は、グローブに込めた指の爪を立てるようにしながら広げると、自分に向けて叩きつけられそうになっている機械についている、激しく回転するプロペラの中へと掴みかかった。
当然、こんなことをして黙っているはずもなく姉御の人は言葉にならない声を上げながら手と一緒に目にも力を入れているようだが、そこは全部開いたままになっていた。そして、周囲にいる人たちもそっちに向けて声をかけ続ける。ただ、私は口を閉じたままその中身だけ小さく動かすみたいにしていて、四つん這いのままとても体が動きそうにないせいで、そっと視線をそらしながら口の動きを自分の意思でほぼ無理やりに止めた。
でも、大きな音と一緒にそれを超えるくらいの声が聞こえたと思ってそっちを見たら、手から血を出した姉御の人が東雲を繰り返し殴り続けていたが、それに対して彼女は全然違う左右に視線を動かしているだけだった。
「姉御! 後ろ!」
周囲からした声で姉御の人は即座に手を止めて東雲から滑るようにして距離を取るが、そっちにいたのはただのドローンであった。拡声器を付けたそれが、ゲーミングキーボードみたいな色の光を照らしながら同じ言葉を何度も照らしていて、それにその顔は強く噛み締められた歯を見せながら振り返ってた。
「東雲お前!」
「お前じゃトレーニングにもならない、余計な力は使いたくないであります」
私もそっちの方に視線を向けてたせいで気付いたら東雲の後ろには無数のドローンが召喚されていて、それが武器を構えるのを終わらせている。それは、無数のプロペラを回し続けていて、地面へと風を起こしているせいで東雲の周囲には砂煙が置き続けていて、そのままただただ姉御の人の方を見続けていた。それに対して、受けた側も血がにじみ出る握りこぶしを作りながらも目元は完全に肌が大きく広がるようにしわを完全になくしている。ただ、それでも大きく動き続けるその肩。それに目線もずっと東雲の方へと向けづ付けていた。
「姉御!」
「姉御、助けて、ください!」
その声は、さっきのドローンが放ったものとほとんど一緒で。周囲にいた人も声の方ではなく自分たちの姉御の方へと視線を送っていた。当の本人は、一度視線を下に向けて目尻を拡げながら喉から小さく音を鳴らすようにしているだけで、しかもその首が動いた際にはドローンたちがむきをわずかに変えてしまう。それに合わせてずっと見せていた歯を下側を押し込むように、動かしながら力を込めていた。
「任せろ」
一度小さくした自分の体を見るような姿勢で口を動かし始めてたから腰を深く落として拳と手に大きく力を入れるとまた強い突風を吹き荒らしはじめ、私の体もそれに合わせて吹き飛ばされそうになり足が引っ張られるように宙へと浮かんだ瞬間、それがすぐに戻ってしまった。
それから唇を合わせながらわずかに震わせると、目をちょっとだけ開きつつ顔を一回下に向けてからすぐに正面へと視線を戻すと、姉御の人が体中から血を流してその場に片膝立ちで肩をかばいながらいるのが見えて。私はその光景に一歩足を後ろに下げる。いつの間にか口をあけっぱなししながら無理やり部下に連れていかれる女子たちのうるんだ瞳と大きく開いた口と暴れようとする表情を眺めて動かない。でも、その動き全ても、その視線の正面にドローンが現れた瞬間、顔から赤い色がどんどんなくなっていくのを見ていると、すぐに私はトイレの方へと戻っていた。
デッキブラシで床を吹こうとそこに力を入れるも、それと同時に自分の方に持ち手を近づけるようにして瞼を小さく動かす。そうしてる間も外からは何かを指示するような声が聞こえてきたり、何度も姉御の事を呼ぶ声が聞こえて来ていた。それが近くに来るのと一緒に、私の体が喉を押しこむように動くけど、自分の棒を握りしめた手をもう一度見ると、目に力を強く入れてしわをたくさん作ってから息をゆっくりと吐いていく。
周囲にまいてあって今もホースから出続けている水を排水溝の方に流し込もうとしたけど、それと一緒に滑ってブラシごと遠くに行きそうになってしまうけど、慌てて近くの壁に寄り掛かって防ごうとする。そしたら、床に高い音を立てながら落っこちた持ち手が濡れてて、そっちに近づくと、私が履いてるサンダルも一緒になってた。その一方で、壁から離れると同じ瞬間にずれてたフードを元に戻すと、それと一緒に白い髪の毛も一緒に自分の顔の方にまで滑ってきて。一旦狭くなった瞳は瞬きしてもそのまま。
トイレの中ではまだホースから水が溢れてる音がしてて、そうじゃないのは、時たまその中に空気が入り込むような音くらい。地面に張り詰めてる水は同じ高さを保っている様に見えるけど、小さな泡たちも例外なく排水溝の真っ黒な中にどんどん吸い込まれていく。そして、私もそっちに近づけば近づくほどに肌が感じる気温が冷たくなっていく気がした。
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