36話 〜バカンス〜
遠くに入道雲が見えるあおあおとした空、太陽の光を反射して光り輝く海、それを横目に読書をする。横からはしゃぎ声が聞こえる。
これこそ真の休息だ。
「バロン様」
「ん? どうしたんだ?」
「実は以前からずっと……」
「ダメー‼︎」
◆◇◇◆
という意味のわからない夢を見たわけだが今俺たちは別荘へと向かっている。その別荘の近くにはビーチもあるからみんなでそこで遊ぶことになった。
一応、魔王だけど15歳だからな法律上では大人でも心は子供だ。ちなみに他の世界では18歳や20歳で成人らしいがこの世界では15歳で成人だ。
きっとあの夢は楽しみすぎて見てしまっただけだな。妙に生々しかったが。
「この世界の車ってこんなに速いんだな」
「シンたちの世界の車の速さは知らないがこの車は時速500kmは出るぞ」
ちなみにこの車は空中を飛んでいる。ちなみに浮遊魔法と移動魔法の魔力源は全て俺だ。
車と言っても機能しているのは2つの魔法が使える魔道具と車のハンドルだけだ。
運転しているのはスズで車の免許を持っているらしい。まだ俺だって取ってないのに。
「てか今思ってんだが時速500kmを難なく運転しているスズさんって結構すごいんじゃ……」
「スズ姉は一時期レースゲームにハマってたから」
「そういえばシンの姉さんにレースゲームで勝ったことなんて一度もないな」
とまあ男性陣(シンの中身は男らしい)が雑談をしている中でセア、アモネ、メイラ、ヘル、クアーラ、ティクの女性陣は集まって何かを話していた。真剣な顔になったかと思ったら少し騒いだりと仲が良さそうだ。
ちなみにカーシュとリンも来ているが運転席にいてリアは座席で横になって眠っている。ルクスはシンの手の紋章の中にいる。
この車はかなり長いリムジンでこの世界に3つしかない。まあ知っているのは俺だけだが。
「てかもう着くな」
この車で約30分で着く。ちなみに転移魔法を使えば1秒足らずだ。
車を使った理由は単純に旅行気分を味わいたかったから。
「ちょっとスズさんのところに行ってくるわ」
「おう」
2人同時にそう答えた。息ぴったりだなー。
そんなことを考えながら歩く。約30cmで扉を開けてすぐのところだが。
「スズさん速度を落としてくれ」
「わかったわ」
車のスピードが徐々に落ちる。
それに合わせて俺の魔力の消費が少なくなって行くことを感じる。
「あの木でできた家の前まで進んでください」
そこに着いたらあとは浮遊魔法を切る。ちなみにここは地面から1万メートルここから普通に落ちたら即死だがこの車は違う。
この車は自動でゆっくりと降りてくれる。
さすが世界で3台しかない車。
みんなこう思うかもしれない。そんな車より飛行機の方が速くない? と。
飛行機ってさ場所を馬鹿みたいに使うのよ。なら飛行機と同じ高さで飛べる車でよくない?
『たった今到着しました。ようこそ俺たちの別荘へ』
飛行機のアナウンス風にスピーカで呼びかける。
ちなみに城には母さんたちが留守番をしている。今度は一緒に来たいな。
「みんな降りたな。今から荷物取り出すから少し待ってくれ」
そう言ってトランクを開ける。
「ガウ!」
「なんでこんなとこにいるんだよ」
母さんたちに任せたガウが何故かそこにいた。ペット用のカゴに入った状態でだ。
そのカゴには鍵がかかっていない。
「まさか自分で持ってきて自分でこの中に入ったとか言わないよな」
「ガウ!」
まさかこの子天才⁈ しっかりとお気に入りのおもちゃまで持って来てやがる。
「まあ、いいか。ほらそこから出ような」
カゴを地面に置き、出るように促す。
あの間にマジックボックスに荷物を詰めていく。
ちなみに荷物をトランクに入れたのも旅行気分を味わいたかったからだ。
「なんでここにガウがいるの?」
ガウと一緒に戻ると全員が驚いていた。リアはクアーラに抱えられたまま寝ていたが。
「トランクになんかいた」
「ミマ様たちに連絡しなければいけませんね」
「その必要はないぞ。今、置き手紙を母さんの目の前に送ったから」
ガウを城に送ることができるがせっかく来たんだから送り返すのはやめておく。
「各自決めた部屋で一旦荷物確認だな」
「なんというか修学旅行ですね」
そう言ったのカーシュだ。修学旅行か、なんか恐れ多いとか言われて1人班だったな。
やべ、涙が出てきた。
「そんなことより1つ目の部屋は俺、ハル、カーシュだな」
3人分の荷物を置いて次の部屋へ向かう。
「2つ目はシン、ルクス、リア、リン、ティク、スズさんっと」
ぱぱっと荷物を置いてその横の部屋へ向かう。ちなみに部屋はくじで決めた。男性陣は確定だった。
「3つ目はセア、アモネ、メイラ、クアーラ、ヘルで終わりっと」
この家の造りは1階はロビーになっていて2階は部屋が4つある。1つは非常食や海を満喫するための道具がある物置部屋だ。俺は転移魔法が使えるから非常食は要らないと思うが万が一のために置いている。
この後は15分程度で持ち物を確認する。忘れ物があったら俺かアモネが取りに行くことになっている。
「この部屋すげえ広いな!」
「まあこの部屋の定員は7人だからな」
「この部屋にはベットが2つありますね」
「ああ、ここは昔遊びに来たときにアモネと一緒に寝た部屋だからな。まあ、片方のベットはほぼ使われてなかったけどな」
あの時のアモネはどこ行っても絶対に離してくれなかったなー。まあ、今も離してくれないけど。
アモネと初めて話してから3日しか経ってなかったから仕方ないか。今となっては懐かしい記憶なわけだ。
「どうしたんだボーっとして」
「ああ、すまない」
「そういえばこのベットってどうするんですか?」
「こうすればいい」
そう言ってベットをアイテムボックスへと入れる。
やべ、容量がいっぱいじゃん。
ちなみにそれぞれ布団を持ってきている。
「あとの2つは物置部屋のはうでいいか」
あとで回収しておこう。今入ったら怒られる気がするし。
それに時間が経つのは速い。こうしてるだけでもう10分以上経った。
「俺は準備が終わったから先にロビーの方に行ってるな」
「おう」
「わかりました」
「そうだカーシュ。ここではいつも通りタメでいいからな」
そういうと一瞬驚いたような顔をして「わかった」とニコッと笑った。
◆◇◇◆
ロビーには既にシンとスズがいた。
「いいじゃないの久しぶりに同じ布団で寝ましょうよ〜」
「いやだよ。スズ姉、俺のこと抱いて寝るじゃん」
「それはシーくんが可愛すぎるからよ」
「暑苦しいから抱きつかないで。てか可愛くないし」
ソファーに座っている2人は戯れついている。いやイチャついてる。
「ほらバロンがきたよ」
「え〜バロンくんも姉妹は仲がいい方がいいと思うよね?」
スズはそう言って俺を鋭く見つめる。なんというか絶対に敵に回してはいけないようなそんな気がする。
よし、友好関係を築いておこう。
「姉妹じゃないし姉弟だし」
「今は姉妹よ? ほらちゃんとこれがあるじゃない」
そう言ってスズはシンの胸部に抱きついた。
邪魔しない方がいいな。
「そーだ。あれしないとなー」
「バロン助けて! 助けろよー!」
俺は何も見てない聞いてない。
あれは姉妹以外見てはいけない……。
それはそうとベッドを回収しないとな。
そう思って階段を上るとメイラとクアーラがベットを物置部屋へと運んでいた。
「ここに運んではいけなかったか? シンたちのベットも運んでしまったのだ」
「いや、ここでいい。ありがとな」
「どういたしましてなのだ!」
この笑顔はつい撫でたくなる。理由は犬みたいな可愛さがあるからだ。
メイラは鼻歌を歌ってロビーへと向かった。
横にいるクアーラはもう紫衣開けなさそうな顔をしていた。
「本当に私がここに来て良かったんですか?」
「もちろんだ。毎日働いてくれてるしあの時手伝ってくれただろ?」
「でも先輩に悪くて……」
「入れ替わりの先輩たちはそれぞれ旅行券を渡したぞ?」
「そうなんですか!」
師匠は「老ぼれはここで待ってますぞ」と言われたので大量のお酒を渡した。あの人1日で一樽は軽々と飲み干すからな。
俺はは飲まないから師匠に自分で注文したもらったが。
クアーラの弟は友達の家に泊まるから心配しなくていいと言ったらしい。
「いいか俺はできるだけ恩返しをするつもりでいるんだ。だから受け取ってくれ」
「……わかりました」
「それに敬語じゃなくていいぞ? セアは謎のこだわりがあるしな」
「今はまだできません!」
今はまだか、仲良くできるようにより一層頑張るか。
「つまりもっと好感度みたいなのあげればいいんだよな。覚悟してろよ」
そう言い残してロビーへと引き返す。
「これ以上あげられたら私が困るよ〜」
小さく何かを言っていたがその言葉は俺の耳には届かなかった。
◆◇◇◆
忘れ物の確認をしたが誰も忘れ物をしていなかった。
時刻は昼過ぎ、天気も晴天と外で昼食を食べるにはぴったりだ。
全員水着に着替えてビーチに集合になった。
あとハルが覗き見してみようぜとか無謀なことをしようとしていたので全力で止めた。
いや多分速攻でバレた挙句に四方からの必殺技にそれは噂として町へ広がるだろう。物理的にも精神的にもかなりのダメージいや実質的な死だな。
ということで3日間、楽しむぞー!
って自分のテンションがおかしい気がするがまあいいか。




