34話 〜最終決着と別れ〜
到着と同時にお出迎えがあった。
いや、まじでこんなに早く来たのにバレてるんだが。
「リアのことをボコボコにしてくれたお礼は今ここで返すよ」
「あ〜、残念だがお前の相手をしてる暇はないんだ」
そう言うとシン、ハル、スズ、クアーラ、ルクスが前に出てくる。
「ふーん、捨て駒か。大切にしている人は守るんじゃなかったっけ?」
「ああ、守るぞ。それとお前と戦った時と考え方を変えたけどな」
「考え方を変えた?」
「大切な人は守る、がそれと同時に大切な人を頼ることにした。それじゃまたな」
さてと最深部へと向かうか。
◆◇◇◆
前回、少女と戦った場所、そこにある玉座を横にズラすと階段が出てくる。
この階段を降った先が本当の最深部だ。
「1人でくるかと思っていたがァ、そんな大人数でくるとはなァ」
「まさか、俺がどんなに足掻いたところでお前には勝てないだろうからな」
周りを見渡すがどこにもユウキは見当たらない。
「あの忌々しいやつなら俺をここに閉じ込めてどこかに逃げたぜェ」
もし俺が戦わなかったらユウキは一生ここで暮らすことになってたのか。自己犠牲がすぎるって人のこと言えねえな。
「ああ、それなら遠慮なく戦えるな」
全員それぞれ構える。
作戦はこうだ。俺、セア、メイラが至近距離で戦い、アモネ、ヘルが遠くから回復、支援、遠距離攻撃だ。
「なら始めにお前からだ」
男はセアを指差す。
「残念ながらそうはならないぜ」
男の前に飛び出し攻撃を受け止める。
「火炎斬!」
メイラが炎を纏った剣で攻撃する。
「怠惰」
セアは男に鎌の能力を使う。すると男は飛び退いた。
「まだだ! 暗黒斬!」
攻撃させる暇を渡さない。複数人だからできる技。
「爆殺!」
後ろからもタイミングよく攻撃が放たれる。
「死神の鎌」
「ッ‼︎」
今度はセアとは反対側に男は飛び退く。
「水の神竜の威厳!」
男がそれを受け止めると今度はメイラが攻撃を仕掛ける。
「至近距離破裂!」
男は嗚咽し、その場で丸まった。
「なア、お前はわかってんじゃないのかァ?」
「ああ、お前の正体は初めて見た時からなんとなくわかってたよ」
「ならァ、俺がこれを使っても不思議じゃないよなァ!」
男の周りを黒い霧が包み込む。そして中から出てきたのは体に黒い鎧を纏い、背中には黒い翼が生えた男、顔を覆っていたフードは脱げ顔が見えた。
その顔にこの場にいる俺以外の奴らは驚いていた。
「バロン様と同じ……」
「「顔……!」」
その顔は俺と瓜二つ、いや全く同じだ。
今使っている力も同じだろう。
「お前は俺から抜け落ちた感情だろ?」
「ああ、その通りだァ。その感情の正体までわかるかァ?」
「ああ、嫉妬と憎悪、期待だろ?」
「あア、その通りだァ」
当たってたか。気づきにくかったが嫉妬をしたことがない。人のことを憎んだり嫌ったりしたことがない。
よく考えてみれば俺は確信しないと人にやらせない。期待じゃなく信じる。俺は希望を抱くが期待はしない。
俺の期待という言葉にはなんの意味も宿ってないただのお飾りだ。
「俺はお前が憎イ、お前は俺と違って人に恵まれたァ。お前は俺と違って豊かな場所で育ったァ」
「ああ、俺は憎まれて当然だな。だが俺が望んだことじゃない」
この作戦はもう一人の俺とリアという少女を倒すのが目的ではない。
この2人を助ける。いや、元の姿に戻す。
「お前を殺せば俺はァ」
「俺と同じようになれるってか? 感情をほぼ失った状態で?」
つまりもう1人の俺を俺が殺せば一生3つの感情は戻ってこない。
「なあ、一つ提案があるんだが」
「俺がお前の提案を受け入れるとでも思うのかァ?」
「俺と一つになる。人格が消えずに感情だけ戻す方法があるんだよ」
「……俺もお前と同じように暮らせるのかァ?」
「ああ、少し時間がかかるが必ず暮らせるようにすると約束しよう」
もう一人の俺は少し間を開け返答をした。
「本当に俺を受け入れてもいいのかァ」
「ああ、もちろん」
そうして近づいた時だった。
「困りますねぇ、勝手にハッピーエンドにしないでいただきたい」
シルクハットの男性が入り口から現れる。
シンたちがやられてしまったのかと一瞬思ったが上からはまだ戦闘音が聞こえる。
「あなたがたのどちらかが死んでもらわないと……」
「なんだ貴様はァ」
もう1人の俺の言葉を無視し、何かしらの魔法を放つ。
「避けろ!」
その魔法からは嫌な感じがする。
あれに当たれば自分が自分じゃなくなるようなそんな感じがする。
「ほう、本当に勘が鋭いようですね」
そう言いながらもう1人の俺の前へ瞬時に移動する。
「あがッ」
「……‼︎」
「それではこれにて。もし、またご縁がありましたら」
そう言い残しその男性は消え去った。
「グアアア‼︎」
もう1人の俺は唸りながら俺のほうへ飛びかかる。
「ぐっ、しっかりしろ!」
そう言っても唸り、攻撃をしてくる。
少しでも遅れたら粉々だ。
「バロン様、私たちも!」
「そこで待……」
ここで頼らなかったら何も変わらないじゃない。
「全員で少し時間稼ぎを頼む。自分の命優先でな!」
今こそこれの出番だな。使い方がわからんが。
「ああ、名前を叫べばいいのか」
この名前はユウキの記憶にあった。どこかで聞いたことのあるとある天使の名前。
「手伝ってくれ、ティク」
宝石が光り輝き、黄色い光が当たりを照らす。
宝石の上には人影が浮かび上がる。
「久しぶりのティクちゃん降臨☆」
ティクはウインクをし右目付近にピースをしている。
「えっと、手伝ってくれるんだよな?」
「もちろん手伝うよ」
そういうと俺の背中に回り込み抱きついてきた。
ティクは白い羽に変わる。そこからどんどん力が湧いてくるのがわかる。
「大天使コード0=ティク」
その名前を言うと視界が紫と黄色になる。
なぜか服の色が黒と白になり目の前に純白の剣が現れた。
「ありがとな」
そう小さく呟き走り出す。
それと同時に周囲にとある魔法をかけておく。
「アモネ!」
「反射!」
アモネは小さく頷き、反射を使いもう1人の俺を俺のほうへと向かわせる。
「グガア」
「今助けてやる」
右手に漆黒の剣、左手に純白の剣を持つ。
2つの剣を同時に使うのは初めてだがなんとなく戦い方はわかる。
「身体強化!」
これで俺の全力と同等かそれ以上の力だ。
「傷喰らい!」
「ヘル、助かる」
全員が負っていた傷は全て消え去る。
「セア!」
「暴風の刃!」
もう1人の俺が無意識に放っている魔法を巻き上げ消し去る。
「メイラ、浄化を頼む」
「わかったのだ」
俺が使う魔法は2つ。
「浄化の剣!」
3つの剣に攻撃が当たらないように透過の魔法をかけ、俺が持っている剣に浄化をかける。
これでさっき使われた魔法だけが消されるはずだ。
その攻撃で起こった光は町一帯に広がっていく。
「グ……」
もう1人の俺は倒れ込む。どうやら成功したようだ。
「これで終わりだ」
もう1人の俺の手を握り目を閉じる。糸を針の穴に通すように俺の魔力と繋げる。
このまま放置すれば死んでしまうからできるだけ早くこうしなければいけなかった。
「成功だ」
目を開けるともう1人の俺はどこにもいなかった。
しかし自分の中にいるとなんとなくわかる。
「これで今回の僕の役目は終わりかな」
「いやもう1つ頼みたいことがある」
その前に階段を上りシンたちと合流した。
シンたちと戦っていた少女はさっき行った浄化で眠っている。
みんなには一旦待ってもらう。
俺が行くべきところはティクに浮遊魔法をかけてもらい俺が昨日壊した壁から出て上に向かう。
そこの屋根に座っている人影に話しかける。
「なあ、今回もいろいろありがとな」
「僕は感謝されるようなことはやってないよ」
「いや、ユウキがいなかったら死人が出てたかもしれない」
ユウキがもう1人の俺を閉じ込めたおかげで城まで攻めてこなかった。
ユウキがいなければ俺は死んでいた。
ユウキには助けられてばかりだ。
「だから俺は最初で最後の恩返しをしようと思う」
「どういうこと?」
「その呪いを解除してアキアさんのところへと送る」
「⁈」
ユウキは驚きを隠せていない。
「まあこれで精算できるかはわからないが」
「うん、それで今までのことは精算、いやそれ以上の借りになる」
「その借りはアキアさんに返してくれ。初代魔王様」
「その呼び方はやめてくれ」
俺の先祖であり、幼馴染であり、親友であり、相棒。
こんな知り合いがいる奴なんて俺ぐらいだろう。
「呪解」
かなり強力なこの呪い。効果は延々と転生を繰り返すという呪い。
神に1番近いティクの力だから解ける。
「……これは」
ユウキの体が徐々に透けていく。
これでお別れだ。
「バロン君、いやバロン」
「ん?」
「ありがとな」
「こんなの当たり前だ。相棒」
「相棒か……そうだな」
ユウキが拳を突き出す。
その拳に俺の拳を優しくだが力強く当てる。
「またな。相棒」
そこから見た朝日はいつもより輝いていた。
◆◇◇◆
みんなのところに戻り転移魔法で城の前まで転移した。
しかし転移した瞬間、意識を失ってしまった。




