33話 〜対決準備〜
体が自由に動かせない。
体が筋肉痛とか傷のせいで動けないってのもあるが腕と足が縛られているから動けない。
しっかり魔力まで封印してある。
「……」
首だけ動かして横を見てみるとアモネが眠っていた。
窓から見れるのは暗い空、時刻は深夜くらいか。
「とりあえず力技で、ってこれやったら余計に心配させちゃうか」
おそらくこんなに縛っているのは俺をあそこに行かせないためだろう。病人にする処置じゃないけどな。
「……お兄、ちゃん」
すうすうと寝息をたてて眠っている。
心配かけて悪かったな。
そう思いながら頭を優しく撫でているとセアが入ってきた。
「バロン様!」
「しー」
人差し指を唇に当ててアモネの方に視線を送る。
納得した顔をしたあと手に持っていたタオルと水が乗せてある四角いトレーをテーブルの上に置きこっちへ近づく。
「セア、今回は本当に悪かったな」
「今回ばかりはそう簡単に許せません」
そう言いそっぽを向いた。
「だよなー。実際俺、半分死んでたし」
「ほんとにあの人がいなかったらバロン様のことを一生恨みました」
「あの人、ユウキには本当に感謝してるよ。まさか相談してからずっと俺を生かすための魔法を考えてたんだからな」
今、ユウキがいない部屋のようになっている精神の一部のようなものは鍵がかかってなく自由に入ることができる。俺限定だが。
その部屋は書庫のようになっていて真ん中の机には回復魔法についての俺とユウキの記憶を集めた本、それをまとめたユウキが書いたレポートが乗っていた。
「なので今回に関しては見送るだけなんてできません。1人で行くと言うなら3人で全力で阻止します」
セアの瞳には確かな決意が宿っていた。
そしてもう一つ、行かせないということはユウキはあいつを倒していないのだろう。
「ああ、もう1人で戦おうとしないよ。今度はちゃんとみんなに頼る」
今度こそアキアさんが言った通り仲間を頼る。
セア、メイラ、アモネ、シン、ハル、クアーラ、カーシュ、リン。戦える仲間を頼ってあいつを……。
「……信用できませんね」
「じゃあ、どうしたら信じてくれるんだ?」
「そうですね、それじゃあ私と……」
その時、扉が勢いよく開きメイラが入ってきた。
「バロン起きたのか!」
その大きな声にセアの話はかき消せされアモネは起きてしまった。
「お兄ちゃん、起きたの?」
「メイラ様、部屋に入る時はあれほど静かに入ってくださいと……」
アモネは目を擦り、セアはメイラを叱っていた。
「なるほど、これが未練か」
少し騒がしくて居心地が良いこの空間、ここにずっと居たいという心残り。
ここが好きだから命を賭けた。でも死んでしまったらここに居られないじゃないか。
「?」
3人は首を傾げ俺を見る。
「さてそろそろ作戦会議をしよう。シンやクアーラたちを連れてきてくれ」
メイラは頷き部屋を出ていった。
「それとこの縄とかを解いてくれ」
さて、反撃準備だ。
◆◇◇◆
「バロン無事か!」
「ああ、見ての通り元気だ」
城の会議室、長机に椅子が13個ある部屋だ。
「全く私を使ってくれればこんなことにはならなかったのに」
「ああ、そうだな。後悔は全くしてないが」
頼らなかったことは後悔してもいいが剣として使うとしたら後悔は全くない。
ちなみに椅子に座っているのは議長席に近い席から言うとセア、メイラ、アモネ、シン、ハル、スズ、クアーラ、カーシュ、リン、ルクス、ヘル、俺の剣の師匠の剣神レオだ。
ちなみに議長席は俺だ。
「魔王殿、この老人より先に死なないようにお願いしますぞ」
「師匠は80歳なのにあと50年は生きてそうだけどな」
「そんなことはないですぞ」って言ってるけどまじで剣を一振りでSSランクの魔物を倒すんだぞ? 本当に80歳なのか疑うわ。
「それよりもやつ、仮名Bを倒す会議を始めるぞ」
「なんでBなんですか?」
クアーラがそこに疑問を抱いた。さすがだなっと思ったが全員首を傾げている。
「なんとなくだ」
「なんとなく、か。何か理由があって名付けただろうに」
カッカッカっとルクスが笑いボヤく。
「それはともかく役割はこうだ」
ホワイトボードを回転させて先に書いておいたものを見せる。
「師匠は引き続きこの城付近の警備、カーシュとリンも同じだ」
「「はい!」」
「わかりましたぞ」
この3人に任せれば問題ないだろう。
「次にシン、ハル、スズさん、クアーラ、ルクスは俺が倒しきれなかったリアという少女の相手をしてくれ」
「「おう」」
「わかったわ〜」
「わかりました!」
「やってやるのじゃ」
この5人なら十分に相手をできる。1日で俺みたいに全快なんてできないだろうかな。
「最後に俺、セア、メイラ、アモネ、ヘルは俺とBの相手だ。正直に言って勝てるかどうかわからないが一緒に戦ってくれるか?」
「もちろんです」
「断る理由がないのだ」
「お兄ちゃんのお願いならなんでもするよ」
「ええ、やるわマスター」
本当にいいやつばっかだな。
こいつらの期待に応えないとな。
「それじゃあ夜明けに作戦開始だ」
この場にいる全員が頷き、それぞれ準備に取り掛かった。
◆◇◇◆
俺は準備をするために自室へと戻っていた。
「さて、この剣どうするかな」
いつも使っている漆黒の剣、一応これも宝剣らしいんだがかなり刃こぼれしてしまった。
「ん? ベッドの上に剣を置いてどうしたの?」
横からアモネが声をかけてきた。俺が渡した腕輪とロケットペンダント、そしてマントを装着している。
「この剣どうするべきかと思ってな」
「すごい刃こぼれしてるじゃん」
アモネはそう言いながら剣の刃を触った。
すると水色に光った。
「今魔法使ってないよな?」
「もちろん使ってないよ!」
その剣は昔手に入れた状態と全く同じになっている。
「まあ、いいか。なんかわからないけどありがとな」
「私は触っただけだし何もしてないよ」
とりあえず武器はよしっと次はあれだな。
「確かこれだな」
魔神からの贈り物、雫の形をした白い宝石。ってこれペンダントなんだな。
「お兄ちゃん、太陽が見えてきたよ」
「それじゃ、行くか」
集合は城門前、転移を使うと無駄に魔力を使うことになるから歩いて向かう
3階から下は町の人が避難している。
人々からは「いつ家に帰れるんですか」や「私たちは大丈夫なんでしょうか」など心配をする声、「何負けてんだよ」という声は聞こえてくるが周りからは「じゃああんたが戦えよ」など声がする。
これは早めに決着した方がいいやつだな。
「全員集まったな。師匠、カーシュ、リン、ここにいる人たちをよろしく頼む」
「もちろんです」
3人は笑顔で頷き、カーシュとリンは敬礼をする。
城に背中を向け天空に浮かぶ城を見る。
後ろからは「頑張ってください」や「よろしくお願いします」と声が聞こえる。
誰だよ今から行くって言いふらしたやつは。
「じゃあ、行ってくる」
そう言い残し、転移魔法を使った。
さて、作戦通りに進めばいいんだがな。




