32話 〜決着、そして……〜
「……ッ!」
その女性は武器を変えながら戦っていた。
剣を使い、槍を使い、鎌も使う。
武器が変わるごとに戦い方が変わるから行動パターンを把握できない。
強すぎる。これの上なんてほんとに魔王とかしか勝てないじゃん。
「あら、もう終わりなの?」
攻撃をするも全て避けられる。けど、使う武器は把握した。使い方だけならセアさんやメイラさん、アモネさんの戦い方を見てなんとなく予測できる。
よく考えたらこの3人と対して仲良くないんだよな。
なんというかライバルみたいに扱われてる気がするというか。
そんなことはともかく今は勝つことに全力を出す。
「ルクス頼む」
「分かったのじゃ」
この戦いが始まってからルクスの様子がおかしい。なんというか躊躇してるような感じだ。
「幻惑」
女性の周りに霧が現れる。
「協奏曲」
霧に包まれている女性に攻撃しようとするとルクスが目の前に現れた。
「主様よ、攻撃をやめてくれんか」
「なんでだ?」
「あれは昔の妾の主なのじゃ」
主ということは初代魔王の奥さん……。
「の偽物だよ。本物は見守ってるんじゃない?」
女性はさっきよりも柔らかいそんな感じだ。
「全くまさかルクスがいるとは思わなかったな」
「妾もまさか主様がおるとは思わんかったよ」
柔らかい感じと言ったけど殺気は消えていない。まだ油断はできない。
「ほんとの目的も話しちゃっていいかな。本当の目的は……」
女性はその場に膝をつき、息を切らしていた。
「主様!」
「1回しか言わないからよく聞いてよ」
周りを見渡すが人影は見られない。
「私と彼の偽物は君たちを少しでも強くしようとしてたの。今の魔王君を助けるためにね」
女性の体が足から灰のようになっていく。
「時間ね。最後に偽物の私からの贈り物」
女性が手を広げると光が3つ現れる。
その光は俺、ハル、スズ姉と一体化して消えた。
「ルクス、本物からの伝言よ。みんなを守ってあげてね」
そう言い残し消えていった。
この戦いの勝者は女性だ。
◆◇◇◆
少女は浮遊魔法で空を飛び魔法を放つ。
「楽園!」
辺りが光に包まれ無数の銃弾が現れる。
「削除」
銃弾は全て消え去る。その様子に少女は動揺を隠せていない。
「武器生成、乱れ打ち」
「邪魔だ」
作り出された銃ごと消し去り少女へ近づく。
「終わりだ……!」
魔力を拳に集めて全力で拳を振る。
「ガッ……!」
腕で受け止められてしまったか、なら次で終わらせ……。
「バロン様!」
「お兄ちゃん!」
「バロン!」
思ったより早く来ちゃったか。あと少しだけ遅く来て欲しかったな。
「なんだよ、ボコボコになってるじゃねーかァ」
真横から男の声が聞こえる。その声はどこか聞き覚えがある、いや、毎日聴いている声だ。
その男は黒いフードを被り、顔が見えないようになっていた。
「まあいい、暗黒の爆裂弾」
かなり強い魔力が放たれる。その魔法が向かっている先は……あいつらのところだ。
「……ッ! 転移!」
3人の前に転移し、魔力を全て引き出して魔法を放つ。
「抹消」
ほぼその魔法で消し去ったが完全に消し去ることが出来ずに攻撃を受けてしまった。
「ッ‼︎」
魔力切れにより地面に落ちる。
「バロン!」
ハルが俺を受け止める。
お前らも早いんだよ。
「……」
俺以外の全員が空中にいる男を武器を構え、睨む。
「……虫唾が走るッ」
男は魔法を放とうとするが空気が凍てつき男の腕が凍る。
「絶対零度」
クアーラがこっちへ駆け寄ってくる。
「バロン様!」
息を切らし、心配そうな顔をする。
「この程度ならァどうってことねェ」
氷を振り払いもう一度暗黒の爆裂弾を放とうとする。
「暗黒の爆裂……」
「魔法解除」
幼い頃から聴いている声、その声の持ち主は魔法を放ち、男の魔法を打ち消す。
「ユウキ……?」
「うん、遅れてごめんね」
「いや、あとは頼んだ」
あいつはユウキがどうにかしてくれるだろう。これで心残りはない……。
◆◇◇◆
辺りが白い。というか何もない。
自分の体を見てみるが傷は一つもない。やっぱりここは死後の世界なのか?
「なんで君はあんなことをしちゃうのかな」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「教訓って言って教えてあげたじゃん」
「忘れちゃったんじゃ意味がないじゃないですか」
俺のご先祖さまのアキアさんだ。
「そういえば呼び方はどうすれば? アキアさん、アキアおばあちゃん?」
「おばあちゃん以外ならなんでもいいわよ」
「じゃあアキアおばちゃ、痛い痛い」
この人遠慮なく人の頭ぐりぐりしてきやがった。
「で、君はなんでそんなに浮かない顔をしてるの?」
「そんな顔は……」
「未練たらたらな顔してるけど?」
「……」
未練なんて俺には……。
「君ってこの数ヶ月で大きく変わったよね」
「そうですか?」
「うん、前までは娯楽を優先してたのに今はあの子たちのことを優先事項にしてるでしょ?」
「そんなのは当たり前で……」
「当たり前じゃないよ」
人の命を優先するのなんて当たり前のことじゃないのか?
「普通なら自分のことを優先するはずなの、君は自分の命よりもあの子たちのことを優先した」
「……」
「大切だから、それだけで人って自分の命を賭けようなんて思わないの」
確かにそうかもしれない。大切だから自分の命を犠牲にしようなんてしない。
「なんで君はあの子たちを守ろうとしたの」
「いや、俺は町の人たちを……」
「違うでしょ、あの子たちが住んでる町、仲良くしてる人がいるからでしょ」
……そうかもしれない。町の人たちよりもあいつらのことを考えていた。
「ねえ、バロン君。手合わせ願えるかな」
「はい、いいですけど」
「今はとりあえずこれ使ってね」
渡された剣はいつも使っている剣と同じ重さで体に馴染む。
アキアさんと少し距離をとって剣を構える。
「よし、じゃあ始め」
「……!」
アキアさんは気付けば目の間にいた。避けきれな……。
「はい、私の勝ちね」
ニコッと笑い剣をしまう。
俺は呆気にとられて少しの間動くことができなかった。
「うん? どうしたの?」
「いえ、なんでもありません」
強すぎる。勝てる気がしない。そう直感的に思った。
「いい、私が勝てない相手がいたんだよ? 1人で戦ったって限界があるの」
「……」
「そんな相手でもユーと一緒だと勝てた。だから言ったでしょ、『仲間を頼ること』って」
仲間を頼るか。あの中で頼れる仲間は……。
「ヘル」
「そう、君はヘルを頼るべきだった」
「……」
「じゃあ最後に仲間となら何倍もの力が出るんだよ。バロン君、君とは85年後くらいに会えることを願ってるよ」
「え?」
体が勝手に浮かぶ。そしてどんどん下へと降っていく。
アキアさんは笑顔で手を振っていた。
最後に思い出したように口を動かした。
ユーをよろしくね、か。よろしくされましたっと。




