31話 〜決着〜
ゴーレムをあっさりと3人で倒してセアさん達のところに向かおうとした時、上から女性が舞い降りてきた。
「あなたたちも早いわね。だけどちょっとだけ寝てて欲しいの」
気付くと目の前に女性が立っていた。
やばい。防げない!
「絶対防御!」
ハルと俺の場所が入れ替わる。
ハルは攻撃を受け止めるが苦しそうな声を上げた。
「舞踏の女王!」
バロンに教えてもらった剣舞を踊り女性に攻撃するが女性は避けた。
「このチャンス、逃がさないわよ」
横から鞭の攻撃が女性に向かって飛んでいく。
その攻撃を繰り出したのは姉のスズだ。本名は天馬鈴音。なぜこの世界にいるのかはいつか教えるつもりだ。
「残念だけど当たらないわよ?」
鞭の攻撃を軽々と避け、鞭の攻撃範囲外に出る。
「抵抗するんだったらちゃんと楽しませてよね」
俺、ハル、スズ姉さんと女性の戦いが始まった。
◆◇◇◆
「ここ、無駄に長過ぎだろ」
地味に罠もあったし、虫も魔物もいるし、綺麗な花はないしこんな風にしたやつセンス無さすぎだろ。
「ネオ・漆黒の槍」
どこかで教えてもらったのか見たことがある魔法を使ってみたけど案外上手くいくもんだな。
ちなみに壊したのはドアノブがどこにもない扉だ。
「全く、扉をノックすることができないのかい?」
扉の先には玉座に座っている少女がいた。
「悪いな。町を混乱に陥れたやつに敬意を払う気が起きないんだ」
こいつの目の前に来て確信した。俺よりも強い。全力を出してやっと同等レベルくらいだ。
「君なら分かってるでしょ? リアには勝てないって、逃げなくてもいいの?」
「ああ、俺に何もないんならそうするが守りたい人がいるんでな。ここは逃げられない」
「あはは! 守りたい人がいるからか……ならその守りたい人のとこに行った方がいいんじゃない?」
「その必要はないな。あの程度ならあいつらで倒せる」
「それはあの2人のことを知っての発言かな?」
「ああ」
まあ、なんとなくだが相手が誰か想像できる。所詮は偽物、本物よりも弱いからな。
「あと、今お前を倒さないといけない気もするんだよ」
「ふーん、感が鋭いね」
玉座から立ち上がり横に立てかけてある杖を手にした。
「じゃあ、少しだけ遊ぼうか」
一瞬のうちに少女は背中に移動していた。
「身体強化」
腰から上だけを動かして攻撃を受け止める。
杖で叩きつけようとしたのか剣には杖が当たっていた。
「まあ、これくらいなら反応するよね」
今度は目の前に移動していた。
「転移魔法か……俺の得意魔法をそんなに連発しちゃうのか」
「君の魔力の倍はあるからね」
言葉を交わしている間にも攻撃は続けられる。
「漆黒の槍」
そのまま放つのではなく手に持ってから投げる。
「ちょっと私を使いなさいよ!」
手の紋章が光り、ヘルビアが出てくる。
「すまないがそれはできないな」
「へえ〜七大罪の武具を使わずにリアと戦うって言うんだ」
「ッ‼︎」
少女の魔法が右足を掠る。ヘルビアが引っ張ってくれたおかげで避けることができた。
「私を使わないってどういうことよ」
「そりゃ、人を使って戦うなんて俺にはできないし」
「なんで彼女と同じことを」
「無駄話をしている暇なんて君にあるの?」
ヘルビアを抱えて壁沿いに転移する。少女との距離はあるが一瞬でその距離を埋められてしまう。
「72柱ーー1柱目……バエル」
自分の姿を消し、無数の自分の分身を相手の見せる。
「こんな小細工でリアの目を誤魔化せると思ってるの?」
杖を横に振ると魔法陣が浮かび上がる。細かい石が全て見えないはずの俺の方へ飛んできた。
「くっ」
できる限り捌いたが数発食らってしまう。思わず地面に座り込んでしまった。
「さて、そろそろこの遊びも終わらせようか」
歩いてこちらに近づいてくる。
「爆殺!」
「おっと」
ヘルビアが使った魔法を軽々と避け、ため息をついた。
「邪魔だから。君から消しておくか」
少女がそう言い放った瞬間、一つの光景が浮かび上がった。
『ならば天界に戻る前に貴様らだけでも屠ってやろう』
『ヘル! ヘル!』
不気味な男と泣き叫ぶ女性、それに動かず目を閉じているヘルビアの姿、そんな体験をしていないはずなのに実際に起きたことのように心が痛む。
「また……また死なせるわけにはいかない」
体を無理やり動かして立ち上がる。
「そんなボロボロになってまで彼女を助けたいの?」
「ああ、やっぱりバカだよな」
今、使える全ての魔力を体の内側に集める。
「ヘルはこの命を犠牲にしてでも守りたいやつの1人になっちまってるからな」
「その呼び方は……」
「じゃあ、何も守れずに死んでしまうんだね」
「それはどうかな」
準備が整った。みんな悪いな。
「72柱……全員召喚!」
辺りが黒い霧が湧き上がる。
体に黒い鎧を纏い、背中には黒い翼が現れる。
「それが君の全力か……まだ楽しめそう」
手に持っていた杖が変形し、猟銃へと変形する。
「乱れ打ち!」
銃からは実弾ではなく魔力を変換したエネルギー弾が撃たれた。
「削除」
その弾を全て消し去る。
「転移」
少女の目の前まで転移し、拳を振る。
「なっ」
少女は銃で受け止めるが体が宙へ浮かび、壁を突き破って外の空へ吹き飛ぶ。
「マスター!」
床を蹴り、外へ飛び出た瞬間、呼び止められた。
その内容はなんとなく分かった。
「あの子たちが悲しむわよ」そんな意味があったのだろう。
それでも俺は……。
◆◇◇◆
「避けてばかりでは勝てないぞ?」
数分ずっと回避に徹してた。今のところ見たことがある魔法しかあの人は使っていない。
立ち回り方も見たことがある。
「まずはお前だ」
「なんだ簡単じゃん」
予想通り私の真後ろに転移してきた。
「反射!」
「ぐッ」
あの人は苦しそうな声をあげて後ろに飛んで退がる。
「ここなのだ!」
着地の寸前にメイラさんが剣を振ってあの人に当てた。
顔を歪ませると転移魔法で逃げる。
「逃しません!」
セアさんがメイラさんを後ろに走り込み魔法を放った。
「暴風の刃」
その魔法はあの人に直撃してあの人は地面に倒れ込む。
「くっ……全てを破壊する炎!」
「神龍の聖水」
竜の形になった水が炎へ飛び込む。
炎を呑み込みあの人へと向かっていく。
「くくく、まさか負けるとは」
体を起こして噴水に腰掛ける。
「さて、偽物の俺は消滅するが今の魔王はやばいんじゃないか?」
「やはりあなたは……」
「偽物なんかに記憶を渡しやがってあの方は何を考えてるんだか」
そう言うと目を閉じ灰になって消えてしまった。
私たちと不気味な男性との戦いは私たちの勝利で幕を閉じた。




